1.トマトのゲノム編集効率向上
  • [出典] "Efficient Multiplex Genome Editing Induces Precise, and Self-Ligated Type Mutations in Tomato Plants" Hashimoto R, Ueta R, Abe C, Osakabe Y,  Osakabe K. Front Plant Sci 2018 Jul 3.
  • Cas9の発現に組織特異的プロモータを利用し、内在するtRNAプロセッシング機構を利用したgRNA発現システム*によって、トマト細胞ゲノムの多重編集を試みたところ、トマトの伸長因子(SlEF1α)遺伝子プロモータを利用することで変異導入効率が顕著に向上し、モザイク変異は低減することを見出した。
  • *多シストロン性tRNA-gRNAコンストラクトを利用した多重化関連crisp_bio記事:CRISPR関連文献メモ_2016/12/01 - 1. [論文] PTG(Polycistronic tRNA and CRISPR guide-RNA)を利用したヒト細胞の効率的多重遺伝子編集;CRISPR関連文献メモ_2016/10/26 - 5. [技術報告] 多シストロン性のtRNA-gRNAコンストラクトを利用したCRISPR/Cas9によって、コメの必須遺伝子の機能を解析
2.[レビュー] ゼブラフィッシュのCRISPR/Cas9ゲノム編集によって、より効率的な創薬パイプラインを。
  • [出典] "Combining Zebrafish and CRISPR/Cas9: Toward a More Efficient Drug Discovery Pipeline" Cornet C, Di Donato V, Terriente J. Front Pharmacol. 2018 Jul 3.
  • 小型、多産、短いライフサイクル、3R https://ja.wikipedia.org/wiki/動物実験#3R に合致という特徴を備え、ヒトと遺伝的かつ生理学的に高い相同性を示し、遺伝子操作が簡単であるため、ゼブラフィッシュの幼虫は、化学的、遺伝的、および表現型のハイスループット・スクリーニングのモデル生物として、哺乳類よりも適しているが、これまでは創薬パイプラインでほとんど利用されてこなかった。本レビューは、CRISPR/Cas9によるノックアウト、ノックイン、1塩基編集 (BE)、転写制御を利用したゼブラフィッシュ研究の最新動向を紹介し、生物医学研究および創薬への展開を提案する。
3.遠赤色光によるCRISPR-dCas9の活性化を介して遺伝子転写を誘導するFACE法を開発
  • [出典] "Synthetic far-red light-mediated CRISPR-dCas9 device for inducing functional neuronal differentiation" Shao J, Wang M, Yu G, Zhu S, Yu Y, Heng BC, Wu J, Ye H. Proc Natl Acad Sci U S A 2018 Jul 2.
  • FACEは、a far-red light (FRL)-activated CRISPR-dCas9 effectorに由来する呼称。FACEによって内因性遺伝子と外因性遺伝子発現の精密に時空間制御すること、および、エピゲノム修飾が可能になる。
  • FACEを利用して、単一の転写因子NEUROG2の発現を上方制御することで、iPS細胞から神経細胞への分化を亢進。
4.Cas9のエピトープを改変してヒト内在CD8陽性T細胞の免疫応答を回避する
  • [出典] "Multifunctional CRISPR/Cas9 with engineered immunosilenced human T cell epitopes" Ferdosi SR, Ewaisha R, Moghadam F, Krishna S, Park JG, Ebrahimkhani MR, Kiani S, Anderson KS. bioRxiv 2018 Jul 2.
  • 遺伝子編集と異なりエピゲノム編集では長期間 (数週間から数ヶ月) Cas9の活性を維持する必要があり、RNPとしてではなく、AAVでCas9を送達することになる。このため、ヒトに内在するCas9に対する免疫応答への対策を用意する必要がある。特に、AAVでCas9 mRNAを送達し細胞内で発現させる場合に問題になる。
  • 研究チームは始めに健常人のほとんどにSpCas9のMHCクラス Iエピトープに対するIgG抗体が内在していることを確認した。続いて、標的変異導入によって、Cas9の活性と特異性を維持したまたCas9から免疫優性のエピトープを除去することが可能であり、また、それによって、ヒトに内在するCD8陽性T細胞のCas9に対する免疫応答に由来する問題を解決可能なことを示した。
  • 関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/04/06- 1. ヒト細胞はSpCas9に対して特異的なエフェクターT細胞と制御性T細胞を生成する;CRISPRメモ_2018/01/07-2  2.「ヒトはSpCas9とSaCas9に対する抗体を帯びている」
5.合成sgRNAsを利用したCRISPR/Cas9ゲノム編集とHDR
  • [出典] "A total synthetic approach to CRISPR/Cas9 genome editing and homology directed repair" DiNapoli SE [..] Houvras Y. bioRxiv 2018 Jul 1.
  • ゼブラフィッシュのゲノム編集;化学修飾した合成sgRNAsがin vitroで転写するsgRNAsよりも活性が高いことを示し、100-kbを超える染色体領域欠損、蛍光色素分子の精密ノックインを実現。
  • 関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/03/04 1. In vitro転写gRNA (IVT gRNA)は、RIG-I パスウエイを介して自然免疫応答を引き起こす;CRISPRメモ_2018/02/23 1. RNAPs用にin vitro転写(IVT)で構築されるgRNAの5'末端に存在するトリホスフェイトが自然免疫応答を介して細胞死を誘導する。
6.CRISPR-Cas9ゲノムワイドノックアウトスクリーニングにおける偽陽性を排除するCRISPRcleanR 
  • [出典] "Unsupervised correction of gene-independent cell responses to CRISPR-Cas9 targeting" Iorio F [..] Garnett MJ. bioRxiv 2018 Jul 1. > BMC Genomics. 2018-08-13
  • CRISPR-Cas9技術によって、癌細胞の必須遺伝子の大規模スクリーニングが可能になった。しかし、コピー数が増幅している領域内では遺伝子のDSBが多数の部位で発生し、見かけ上細胞死が誘導され、スクリーニング結果に偽陽性を示す遺伝子が紛れ込む。そこで研究チームは、ゲノム上のコピー数の変動を考慮に入れることで、標的遺伝子に依存しない細胞応答を同定し修正するソフトエア'CRISPRcleanR'を開発した。
7.最適なプロモーターの選択などにより、CRISPR遺伝子ドライブを改良
  • [出典] "Improved CRISPR-based suppression gene drives mitigate resistance and impose a large reproductive load on laboratory-contained mosquito populations" Hammond AH, Kyrou K,  Gribble M, Karlsson X, Morianou I, Galizi R, Beaghton A, Crisanti A, Nolan T. bioRxiv 2018 Jul 1.
  • Cas9の活性を、生殖細胞系列に限定し、胚におけるDSB修復を抑制することが、改良に貢献;研究室内で90%を超える生殖抑制を実現し、遺伝子ドライブ耐性の発生も抑制
8.CRISPR/Csa9とTALENsによるゲノム編集研究の偏り
  • [出典] "The Global State of Genome Editing" Siwo GH. bioRxiv 2018 Jun 11.
  • 科学論文のマイニングの結果:ゲノム編集研究論文著者の米国と中国への偏り(2国で50%を示す);ゲノム編集研究の対象となった疾患は主として、癌、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、鎌状赤血球症およびマラリアに偏り