1.[News]米国FDA、鎌状赤血球症のCRISPR遺伝子治療の臨床試験を保留に
  • [出典]"CRISPR gene therapy trial on hold" Nat Biotechnol 2018 Jul 6.
  • 赤血球における胎児型ヘモグロビン (HbF)の高レベル発現による治療を目指しているVertexとCRISPR TherapeuticsのCTX001 の臨床試験が、この5月に保留に (2018/09/03 crisp_bio 追記:Clinical Trial.govによるとドイツでPahse1/2の臨床試験参加者の募集を開始)。
  • ペンシルバニア大学は2018年2月から、多発性骨髄腫、メラノーマおよびサルコーマを対象とするCRISPR技術に基づいた免疫療法の臨床試験参加者の募集を開始し、中国でもCRISPR技術を利用した細胞療法臨床試験の参加者募集中
2.BE (Base Editors)をさらに強化
  • [出典]"Optimized base editors enable efficient editing in cells, organoids and mice" Zafra MP, Schatoff EM [..]Dow LE. Nat Biotechnol 2018 Jul 3;An optimized toolkit for precision base editing. bioRxiv 2018 Apr 17.
  • CRISPR Base Editing (BE)は、Cas9による二本鎖DNA切断 (DBS)を回避しつつ標的とする1塩基を精密に変換する優れた技術である。しかし、これまでのBEは多くの細胞種における変換効率が極めて低かった。
  • Weill Cornell MedicineやDKFZなどの米独の研究グループは今回、BEを構成するCas9nのコドンの最適化と、レンチウイルスで送達するコンストラクトにおいて、APOBEC-Cas9nのC'末端に加えてN'末端にも核移行配列 (NLS)を結合することで、BE3、BE4-GamおよびCas9に替えてxCas9に基づくBE3 (xBE3)よる変換効率が大きく向上することを示した。
  • 広範なマウス細胞株、ヒト癌細胞株、ヒト腸オルガノイド、マウスES細胞、加えて、マウス肝細胞in vivoの高い変換効率を確認
  • BE改良関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/05/30-3 1.塩基エディターBE4とABEを、BE4max/AncBE4max/ABEmaxへと強化 (原論文はNature Biotechnology 2018年5月29日刊行)
3.gRNAを徹底的な化学修飾によってSpyCas9によるゲノム編集の効率向上
  • [出典]"Heavily and fully modified RNAs guide efficient SpyCas9-mediated genome editing" Mir A [..] Khvorova A, Watts JK, Sontheimer EJ. Nat Commun 2018 Jul 6bioRxiv 2018 Mar 28.
  • これまでに、化学修飾によってgRNA (crRNAとtracrRNA、原論文 Fig.1-a/bを引用した下右図の下半分を参照)のin vivoおよびex vivoでの安定性とCRISPR-Casシステムの編集効率 (場合によっては編集の選択性も)向上することが報告されてきた。しかし、化学修飾の効果が化学修飾の位置と組み合わせや分子内および分子間の修飾された他のヌクレオチドとの相互作用に依存するが、gRNA全域にわたる化学修飾は試みられていなかった。
  • UMMSの研究チームは、徹底的な化学修飾と代謝の安定化が核酸医薬 (siRNAとアンチセンスオリゴヌクレオチド (ASO))の臨床応用に寄与した知見から今回、crRNAとtracrRNAの全領域にわたる化学修飾を評価し、化学修飾を施さなかったgRNAに対して編集効率を顕著に向上させるcrRNAの化学修飾とtracrRNAの化学修飾の組み合わせを特定した (C20とT2の組合せ、次いで、C21-T8の組合せ;原論文のTable 1と2を引用した下図左と右参照)。
Chemical Mod T2Chemical Mod T1
4.HOLMESv2:CRISPR-Cas12bによる核酸検出プラットフォーム
  • [出典]"CRISPR-Cas12b-assisted nucleic acid detection platform" Li L, Li S, Wang J. bioRxiv 2018 Jul 6.
  • 2018年に入ってCas12aまたはCas13aに基づく核酸検出プラットフォーム*が相次いで発表された。その中で、Cas12aに基づくプラットフォームHOLMESをCell Discovery誌に投稿した上海SIBS http://english.sibs.cas.cn/のJin Wangらは今回、Cas12aに替えてCas12bを基にしたHOLMESv2をbioRxivに投稿した。HOLMESv2では、Cas12bのssRNAトランス切断とLAMP (Loop-Mediated Isothermal Amplification)による遺伝子増幅を定温で稼働する1ステップシステムに組み上げ、RNA検出過程をRNA依存性DNAポリメラーゼを利用することで簡素化した。
  • *) 関連crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/04/29- 5.CRISPR-Cas12aによる核酸検出と診断応用にHOLMES;2018-04-27 CRISPR技術による次世代診断ツール開発:「展望」とMammoth Biosciencesの登場;2018-02-23 CRISPRによる核酸検出・診断(DETECTRとSERLOCK)
5.CRISPRスクリーニングにより、ゲノム中のリボヌクレオチドが原因となって、PARP阻害剤によりPARPがDNA損傷部位にトラップされることを同定
  • [出典]"CRISPR screens identify genomic ribonucleotides as a source of PARP-trapping lesions" Zimmermann M, Murina O [..] Jackson AP, Durocher D. Nature 2018 Jul 4.
  • BRCA1/BRCA2欠損細胞がPARP阻害に感受性を示すことから、相同組換え機構の欠損を標的とする阻害剤を利用する癌療法の開発に拍車が掛かっている。PARP阻害剤の細胞毒性は、PARP阻害剤が結合したPARP1がDNA損傷部位にトラップされ結果的にDNAの複製を阻害する事によるとされているが、その分子機序は詳らかにされていない。
  • 加・米・英の研究チームは今回、3種類の細胞株 (HeLa、RPE1-hTERT、SUM149PT)において、FDA承認PARP阻害薬オラパリブに対するCRISPRドロップアウト・スクリーニングを行い、その変異によってPARP阻害剤に対する感受性が亢進する遺伝子73種類を同定した。この遺伝子セットには想定通り相同組換えに関連する遺伝子がエンリッチされており、さらに、リボヌクレアーゼH2をコードする3遺伝子全てについて、その変異がPARP阻害に対する感受性を亢進することを見出した。
  • リボヌクレアーゼH2が障害された細胞ではリボヌクレオチド除去修復が不全となり、RNAの構成成分であるリボヌクレオチドがゲノムDNAに取り込まれてしまうことが、PARPトラップを介して、DNA複製を阻害しゲノムを不安定にする。
  • 関連crisp_bio記事:2017-10-18 ゲノムワイドかつ高密度のCRISPR-Cas9スクリーンにより、PARP阻害剤耐性を誘起するPARP1の点変異を同定
6.遺伝子ドライブによるマウス・アルビノ集団作出の試み
  • [出典]"Super-Mendelian inheritance mediated by CRISPR/Cas9 in the female mouse germline" Grunwald HA, Gantz VM, Poplawski G, Xu XS, Bier E, Cooper KL. bioRxiv 2018 Jul 4.;[News]"Controversial CRISPR ‘gene drives’ tested in mammals for the first time" Callaway E. Nature 2018 Jul 6.
  • Gantzらが命名したCopyCatエレメント*を、マウスのチロシナーゼ遺伝子に埋め込み、Cas9による胚および生殖細胞系列における遺伝型の変換を分析した。Cas9は、初期胚において二本鎖DNA切断 (DSB)を誘導し突然変異誘発性が高いこと示したが、この切断は相同組換えでは修復されなかった。一方で、Cas9 'イタリック'の発現をメスの生殖細胞の発生時に限定すると、DSBが相同組換えによって修復され、したがって、CopyCatアレルが、ドナーとなる染色体から染色体へとコピーされ遺伝子ドライブが進行することを見出した。
  • 関連crisp_bio記事:*) CRISPRメモ_2017/12/29 - 1.CRISPR/Cas9遺伝子編集と遺伝子ドライブによる逆遺伝学 - ショウジョウバエでの実証
7.CRISPR/Cas9により八倍体植物であるイチゴ (Fragaria ×ananassa)の機能ゲノミクスを実現
  • [出典]"Functional Analysis of TM6 MADS box gene in the Octoploid Strawberry by CRISPR/Cas9 directed mutagenesis" Martín-Pizarro C, Triviño JC, Posé D. bioRxiv 2018 Jun 20.
  • イチゴのMADS-box転写制御因子の遺伝子FaAP3FaTM6を同定し、FaTM6遺伝子を標的とするCRISPR/Cas9により生成した変異体の表現型の分析から、FaTM6が花弁形成、特に葯形成、に重要な役割を担っていることが明らかになった。