• 出典:"Population genomics shows no distinction between pathogenic Candida krusei and environmental Pichia kudriavzevii: One species, four names" Douglass AP, Offei B, Braun-Galleani S, Coughlan AY, Martos AAR, Ortiz-Merino RA, Byrne KP, Wolfe KH (University College Dublin). PLoS Pathog. 2018 Jul 19.
  • University College Dublinの研究チームは、病原性酵母と産業に利用されている酵母のゲノム多様性を、命名の基準となった標準株に臨床分離株と環境分離株も交えて、解析した。
  • 酵母の分類学上、Candida kruseiPichia kudriavzeviiアナモルフ(Anamorph/無性世代)とされているが、命名の基準となった標準株はそれぞれに存在し、本論文では、C. kruseiの標準株としてCBS573を、P. kudriavzevii (旧名 Issatchenkia orientali)の標準株とされているCBS5147が解析された(crisp_bio注: 学名とCBS....といった微生物系統保存機関における菌株番号については記事末尾*参照)。
  • C. kruseiの臨床分離株のほとんどは抗菌剤フルコナゾールに耐性を帯びている。P. kudriavzeviiはグリセロールとコハク酸の生産や発酵食品の生産に利用されている
  • CBS573株を対象とするPacBioのロングリードとIlluminaのショートリード解析から、5本の染色体からなる10.8 Mbのゲノムアッセンブリーを再構成し、S. cerevisiaeゲノムを参照することで5,140種類のタンパク質コーディング配列を同定した。 BUSCO 法による評価ではこれまでで最も完成度が高いC. kruseiゲノムである。CBS5147株ゲノムはPacBioで解析した。 
  • C. kruseiP. kudriavzeviiのゲノム配列は塩基レベルで99.6%一致し、Mdn1タンパク質配列に基づく進化系統解析でもブートストラップ値100%でクラスターを形成し (下図左の樹状図参照)、双方とも、C. albicansを始めとするその他の病原性カンジダ菌からは遠縁であった。
Yeast 1 Yeast 2
  • 分離株については、20種類の臨床分離株 ("C. Kruisei")と10種類の環境分離株 ("P. kudriavzevii")を解析したが、ゲノム配列上の差異は見られず、SNPsに基づいた進化系統樹のクレード上でも、臨床分離株と環境分離株が完全には分離されなかった(上図右における赤字の表記と青字の表記の分散に注目)。また、4種類の抗菌剤のいずれかに耐性を帯びた環境分離株も存在した(上図右における青字表記の株におけるマゼンタ色の丸に注目)
 *) 学名と菌株番号の関係
  • 日本微生物資源学会 (Japan Society for Microbial Resources and Systamatics, JSMRS)Webサイトで公開されているJSMRS総合カタログ  をPichia kudriavzeviiで検索した結果から抜粋 (2018/07/23)
JCM
 カンジダ菌分類参考資料