[出典] (NEWS) "Gene-silencing technology gets first drug approval after 20-year wait" Ledford H. Nature. 2018 Aug 10.;(NEWS)  FDA approves first-of-its kind targeted RNA-based therapy to treat a rare disease" FDA News Release 2018 Aug 10.
  • RNAiの発見(Nature 1998) から20年、2018年8月10日に、Alnylam社のsiRNA(small interfering ribonucleic acid)治療薬patisiran (Onpattro)が、希少疾患であるトランスサイレチン型家族性(hATTR)アミロイドーシスに起因する末梢神経疾患の治療薬として、FDAに認可された。FDAとして、hATTRによる多発性ニューロパチー治療薬として初であり、また、siRNA治療薬としても初の認可である。
  • Alylam社は2002年にpatisiranの開発に着手し、RNAi研究(A. Z. FireとCraig C. Mello)は、2006年ノーベル生理・医学賞を受賞したが、siRNA創薬の道は険しかった。
  • RNAの機能性を失わずに標的に送達することが、siRNA創薬において解決すべき課題であった。すなわち、血中でのRNAの分解を回避し、腎臓での濾過排出を回避し、そして、血中から標的器官に拡散させる手段の模索が続いた。2010年までに、大手製薬企業はRNAi創薬への関心を徐々に失い、2016年にAlnylam社がhATTRアミロイドーシスを標的とするsiRNA薬revusiranの臨床試験において、プラセボよりも死亡率が高かったことからrevusiranの開発を中止したことで、投資家も関心を失った。
  • 一方で、いくつかのRNAi技術関連企業はRNA送達手法の研究開発を継続していた。Alnylam社も脂質ナノ粒子内に収容することでRNAを保護する手法や、化学修飾によってRNAを保護する手法の研究開発を継続していた。これらの手法で血中に注入されたRNAが腎臓と肝臓に蓄積されることから、Alnylam社は主として肝臓で生産されるトランスサイレチンに注目した。脂質ナノ粒子でshRNAを送達するpatisiranが、神経障害を伴う遺伝性のトランスサイレチン型家族性(hATTR)アミロイドーシスを標的とする225人の臨床試験で、効果を示した。例えば、プラセボ投与集団では徐々に遅くなっていく歩行速度が、patisiran投与集団では歩行速度が回復することが示された。
  • 今後、patisiran (Onpattro)の適用範囲が広げられることを期待したい。また、肝臓以外の腎臓、眼、脳、脊髄を標的とするsiRNA創薬あるいは、嚢胞性線維症を標的とするsiRNA創薬が、Quark PharmaceuticalsあるいはArrowhead Pharmaceuticalsで進められていることにも注目したい。
  • 関連記事 (2018-09-09追記) "[TRADE SECRESTS]Alnylam launches era of RNAi drugs." Nat Biotechnol 2018 Aug 21 20:01 BST.