1. 多重化CRISPR/Cas9によりモデル動物ゼブラフィッシュにて網膜の再生・変性を調節する遺伝子を同定
  • [出典]"Multiplexed CRISPR/Cas9 Targeting of Genes Implicated in Retinal Regeneration and Degeneration" Unal Eroglu A, Mulligan TS, Zhang L [..] Mumm JS. Front Cell Dev Biol. 2018 Aug 21.
  • 網膜の再生に関与する遺伝子と変異が多数示唆されているが、成体網膜幹細胞であり網膜色素変性症 (retinitis pigmentosa, RP)の治療可能性を秘めているミュラーグリア細胞 (Müller glia, MG)の再生の調節に関わることが同定された遺伝子はごく少数である。また、ヒト網膜疾患に関連する300近い遺伝子座の殆どがモデル動物で検証されていない。
  • 米国JHUとNHGRIの研究チームは今回、ゼブラフィッシュにおいて、CRISPR/Cas9技術による多重遺伝子編集を基盤にした大規模逆遺伝学により、フェノタイプスクリーニングを経て、桿体視細胞(rod photoreceptor)再生に必要な遺伝子の同定を試みた。また、RP関連遺伝子群の単一または多重破壊を経て、網膜変性症の新たなモデルの作出も試みた。
  • 標的を絞ったCRISPR/Cas9によるゲノム破壊戦略は、網膜疾患の病因や、MGの再生能の活性化をもたらす遺伝子群やシグナル伝達パスウエイの解析に有用である。
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2. CRISPR/Cas9, TALエフェクターおよびホーミングエンドヌクレアーゼによるゲノム工学に有用なヒト染色体のセーフ・ハーバー部位 (SHS)を新たに同定
  • [出典]"New human chromosomal safe harbor sites for genome engineering with #CRISPR/Cas9, TAL effector and homing endonucleases" Pellenz S, Phelps MP, Tang W, Hovde BT, Sinit R, Fu W, Li H, Chen E, Monnat Jr R. bioRxiv. 2018 Aug 20
  • SHS(Safe Horbor Sites)は、隣接する内在遺伝子の発現または調節を侵害することなく外部から遺伝子や遺伝因子を挿入可能なゲノム上の部位である。ワシントン大学の研究チームは今回、X染色体を含む16染色体上に、35種類のSHSを新たに推定 (原論文Figure 1を引用した下図左参照)。
SHS 1 SHS 2
  • これまで広く利用されてきたAAVS1, CCR5およびhROSA26の3種類のSHSと共に、安全性に重きをおいた9種類の基準(原論文Table 1を引用した上図右参照)で評価し、実験検証した。
  • 高評価であったSHSの一つであるSHS231にCas9をノックイン、一対のsgRNAsを介してヒト横紋筋肉腫細胞株Rh30 RMSにて融合型癌遺伝子PAX3/FOXO1の17,188bp削除を実現し、また、SHS231へのdCas9-VPRとCas9-VPRのノックインとプロモーター領域を標的とするsgRRNAによってMYF5遺伝子の活性化を実現(下図参照)SHS 3
3. [ビデオプロトコル]CRISPRシステムの組換えAAV(rAAV)送達によるマウス心筋特異的遺伝子のin vivo編集
  • [出典]"Adeno-Associated Virus-Mediated Delivery of CRISPR for Cardiac Gene Editing in Mice" Xu L, Gao Y, Lau YS, Han R. J Vis Exp. 2018 Aug 2.
  • デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおけるジストロフィー心筋症治療に有用であり、また、出生後の心筋特異的遺伝子ノックアウトにも適用可能
4. Cas9にヒトAPOBEC3Aを融合しメチル化領域における効率的塩基編集(BE)を実現
  • [出典]"Efficient base editing in methylated regions with a human APOBEC3A-Cas9 fusion" Wang X, Li J, Wang Y, Yang B, Wei J, Wu J, Wang R, Huang X, Chen J, Yang L. Nat Biotechnol. 2018 Aug 20.
  • ラット由来APOBEC1に依存する塩基編集法BE3は、メチル化された領域やGpCジヌクレオチドに位置するシトシンの置換効率が比較的低い。上海科技大学など上海の研究チームは今回、一連のAPOBECと活性化誘導シチジン(AID)デアミナーゼをスクリーニングし、rAPOBEC1に替えてヒトAPOBEC3A(以下、hA3A)を組み込んだhA3A-BE3、さらには、塩基編集の対象となるウインドウを狭める改変を加えることで(hA3A-eBE-Y130F;hA3A-eBE-Y132D)、課題であった領域におけるC-to-T置換効率を高めた。
  • 関連crisp_bio記事:CRISRP_2018/07/31 2.バイスタンダー活性とオフィターゲット活性を最小限にとどめたAPOBEC3A-Cas9による1塩基編集(BE)
5. RNAを標的とするタイプVI-A CRISPRにおいて自己ターゲッティングを回避するルールは?

[出典]"RNA Guide Complementarity Prevents Self-Targeting in Type VI CRISPR Systems" Meeske SJ, Marraffini LA. Mol Cell. August 16, 2018.

 CRISPR-Casシステムの標識認識切断機構
  • 微生物の獲得免疫機構であるCRISPR-Casシステムは、侵入したバクテリオファージやプラスミドのDNA断片(プロトスペーサと呼称)を、自身のCRISPR遺伝子座の30 nt程度の短いセグメントのリピート配列の列(以下、CRISPRアレイ)の間に免疫記憶として取り込む。CRISPRアレイは、長いCRISPR RNA前駆体(pre-crRNA)へと転写され、リピート配列ごとに分解されてCRISPR RNAs(crRNAs)が生成される。CrRNAsは、スペーサ配列と、crRNA tagと呼ばれるリピート配列からの短い領域で構成される。CrRNAsは、Casエフェクター・ヌクレアーゼとリボ核タンパク質(RNP)複合体を構成し、Casを侵入核酸中のスペーサに相補的なプロトスペーサへとガイドする。
  • これまでに発見された6タイプのCRISPR-Casシステムは全て、プロトスペーサに隣接する配列に基づいて、標的を認識し、CRISPRアレイ中のスペーサ配列の分解(自己ターゲッティング)を回避する:DNAを標的とするタイプI、IIおよびV CRISPR-Casシステムでは、プロトスペーサー隣接モチーフ(protospacer adjacent motif, PAM)に基づいて標的を認識・切断するが、CRISPRアレイに取り込まれたスペーサーに隣接するリピート配列にはPAMsが存在しないことから、自己ターゲッティングが回避される;タイプIIIシステムは、標的転写物を感知しDNAとRNAの双方を切断するが、crRNAとの相補性がcrRNAタグの領域まで成立している標的の場合は、そのエフェクターCas10よる切断を免れる。このターゲッティング・ルールによって、CRISPR遺伝子座の自己切断が回避されるとされている。
 タイプ VI-Aシステム
  • タイプ VI-Aシステムでは、crRNAにガイドされて標的RNAに結合したCas13エフェクーが、コンフォメーションの変化を介して、そのHEPNドメインを介して、非選択的trans-RNA切断活性を発揮する。これまでに、Escherichia coliで過剰発現させたLeptotrichia shahiiタイプVI-Aシステムの解析から、Cas13が、プロトスペーサーに隣接する単一ヌクレオチド・モチーフ(PFSと命名)を認識するルールと、PFSルールは存在しないとする報告とがなされている。
  • ロックフェラー大学の研究チームは、Listeria seeligeriの天然宿主細胞におけるターゲッティング・ルールを探り、in vivoにおていもin vitroにおいても、タイプVI-AシステムもタイプIIIと同様なターゲッティング・ルールを取っていることを明らかにした。すなわち、CRISPRアレイから転写されたcrRNA tagとプロトスペーサに隣接する配列(anti-tagと命名)の間の少なくとも7-ntの長さの相補性によって、Cas13の活性が阻害そしてRNA切断が阻害され、ひいては自己ターゲッティングが回避されることを明らかにした。また、同様のターゲッティング・ルールがL. buccalis Cas13でも見られた。
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