1. 癌遺伝子活性化誘導早期老化癌遺伝子活性化誘導早期老化を調節するエンハンサー同定
  • [出典]"Functional CRISPR screen identifies AP1-associated enhancer regulating FOXF1 to modulate oncogene-induced senescence" Han R, Li L [..] Elkon R, Agami R. Genome Biol. 2018 Aug 17.
  • 癌遺伝子と癌増殖シグナル伝達の異常な活性化に由来する癌ストレスは、癌遺伝子活性化誘導早期老化(Oncogene-induced senescence, OIS)を介して、癌の増殖を抑制する一面がある。オランダとイスラエルの研究チームは今回、CRISPR-Cas9スクリーンを介してOISを調節する転写因子とシグナル伝達経路(AP-1とFOXF1カスケード)を同定した。
2. crRNA 5'端の伸長によって、Cpf1の送達効率も編集効率も向上する
  • [出典]"Extension of the crRNA enhances Cpf1 gene editing in vitro and in vivo" Park HM, Liu H, Wu J, Chong A, Mackley V, Fellmann C, Rao A, Jiang F, Chu H, Murthy N, Lee K. Nat Commun. 2018 Aug 17;9(1):3313.
  • SpCas9については、sgRNAの改変による編集効率向上が精力的に試みられてきたが、GenEdit IncとUC Berkeleyの研究チームは今回、Cpf1について、crRNAの5'端を伸長することでその送達と編集の効率向上を実現した(原論文Fig.1 から引用した下図参照):crRNA 1
    Cpf1 RNPを細胞へエレクトロポレーションする場合、NHEJおよびHDRの双方の経路での編集効率向上;伸長した部分を化学修飾することで血清安定性向上;5'末端を59ヌクレオチド伸長することで、ポリマー・ナノ粒子を含むカチオニック性担体による送達効率が細胞でもin vivoでも向上
3. TEG-seq: オフターゲット編集検出法GUIDE-seqの性能向上
  • [出典]"TEG-seq: an ion torrent-adapted NGS workflow for in cellulo mapping of CRISPR specificity. Tang PZ, Ding B, Peng L, Mozhayskiy V, Potter J, Chesnut JD. BioTechniques 2018 Aug 17.
  • GUIDE-seqは、CRISPR/Cas9のオフターゲット編集検出に広く利用されているが、高レベルの非特異的増幅を伴っている。Thermo Fisher Scientific Incの研究チームは今回、標的に注目しイオントレント次世代シーケンシングで解析するtarget-enriched GUIDE-seq (TEG-seq)を開発し、GUIDE-seqの高感度化を実現し、Cas9/gRNAをRNPとして送達する方が、発現プラスミドで送達するよりも、オフターゲット編集が顕著に低頻度であることを確認
4. [レビュー]Cas9とCas12a/Cpf1の比較 
  • [出典]"REVIEW: Cas9 versus Cas12a/Cpf1: Structure–function comparisons and implications for genome editing" Swarts DC, Jinek M. Wiley Interdiscip Rev RNA. 2018 May 22.
  • 進化過程;ドメイン構造とコンフォメーション変化による活性化;ガイドRNA生合成;PAMの認識;標的DNAの認識と切断 (標的DNAの巻き戻し; シード配列への結合とRNA-DNA二重鎖形成; DNA切断);ゲノム編集への応用 (gRNAの設計; PAM依存標的選択; オンターゲットへの特異性; DNA修復結果);Cas12aによるゲノム編集 (バクテリア; 酵母; 植物; 昆虫; 非哺乳類脊椎動物; 哺乳類);その他の応用
5. p53活性化は精密ゲノム編集のチェックポイント
  • [出典]"Comment: p53 activation: a checkpoint for precision genome editing?" Conti A, Di Micco R. Genome Med. 2018 Aug 17.
  • 最近相次いで指摘された初代細胞におけるp53パスウエイの活性化が、細胞死または細胞周期停止を介して、CRISPR/Cas9のゲノム編集効率を損なうとした報告("Comment"Fig. 1を参照した下図参照)に対するコメントp53
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6.  [ミニレビュー]ゲノム編集技術はCAR-T細胞療法のポテンシャルを解き放つ

[出典]"Unleashing the Therapeutic Potential of CAR-T Cell Therapy Using Gene-Editing Technologies" Jung IY, Lee J. Mol Cells. 2018 Aug 14.

概要
  • CAR-T細胞療法は第1世代から第2世代(第3世代)へと進化し、CD19を標的とするCAR-Tは血液腫瘍(B-ALL, CLL, B-NHL)に対して顕著な効果を示し、FDAが認可するに至った。
  • 一方で、CAR-T療法には解決すべき課題が多々存在する。かねてより、「CAR-T細胞の標的である治療標的細胞上の抗原がCAR-T細胞にも存在し、CAR-T細胞自身を標的として攻撃するオフターゲット作用 (fratricide)、癌化したT細胞を排除した自家T細胞由来CAR-T作出に伴う技術的困難と巨額の経費;他家T細胞由来CAR-T細胞が致死的な移植片対宿主病 (GvHD)を誘発する危険性」が、指摘されていた("CRISPR_2018/03/13メモ 1.T細胞急性リンパ性白血病 (T-ALL)に対するCAR-T療法の課題を解決"参照)。
  • ToolGenの研究チームは今回、ゲノム編集技術を利用した前述課題解決の試みを概観し、ゲノム編集CAR-T細胞の安全性を議論
CAR(キメラ抗原受容体)
  • Int J Mol Sci (2018)掲載レビューから引用したCAR-T第2世代の模式図(左下図参照);第1世代CARは,腫瘍抗原に結合するモノクローナル抗体可変領域の軽鎖と重鎖を直列に結合させたsingle-chain Fvドメイン(scFv、左下図のCARにある水色部分)と、シグナルをT細胞内へ伝達するCD3 ζドメイン(赤色の棒)で構成;第2世代CARは、scFVとζドメインの間に共刺激分子(CD28または4-1BB、青色の棒)を挿入;CD28と4-1BB双方を挿入したCARは第3世代CARと呼ばれる。
CAR-T 1 CAR-T 2
  • Int J Mol Sci (2018) 掲載レビューから引用した上右図は、CAR-T療法に抗PD-1、抗PD-L1を組み合わせる療法の模式図
  • ゲノム編集技術を利用したCAR-T細胞療法の臨床試験例一覧(レビュー Table 1から引用)CAR-T 3
他家T細胞由来CAR-T細胞のユニバーサルCAR-T細胞化
  • ヒト白血球抗原(HLA)が適合しない患者のGvGDをTCR欠損で回避:TALENによるTCRα鎖とCD52遺伝子の編集によるユニバーサルCD19 CAR-T (UCART19 (Qasim W, 2017))作出 
  • 宿主対移植片反応(HvG)を、リンパ球枯渇(lymphodepletion)とそれに耐性を帯びたCAR-T作出(CD52発現、デオキシシチジンキナーゼ遺伝子KO)や、CAR-Tのアロ抗原発現抑制(β2-マイクログロブリン遺伝子KO)により回避
Fratricide回避による標的可能抗原の拡大
  • 効果的かつ安全なCAR-T細胞療法には、腫瘍細胞にあまねく発現し腫瘍細胞以外の細胞では発現しない抗原が必須であるが、悪性腫瘍に発現する抗原の殆どが正常なT細胞に見出される。例えば、CD4、CD5、CD7を標的とするCAR-Tは、それぞれを発現するCAR-T自身を攻撃し(fratricide)、CAR-T生産効率および治療公開を著しく損なう。
  • また、標的抗原との継続的相互作用の間に、CAR発現が低減やT細胞の疲弊(T-cell exhaustion)に依り抗腫瘍性が顕著に低下する。そこで、fratricide耐性CAR-Tの開発を目指したCRISPR/Cas9によるCD5とCD7のKOが試みられ、効果が示された。多発性骨髄腫のCS1抗原についても、TALENによるCS1 KOによるfratricide回避が効果を示した。
固形腫瘍への展開:CAR-T療法抗腫瘍活性の強化
  • 腫瘍抗原に対する活性化が繰り返されることによるT細胞の疲弊を、CRISPR/Cas9によってCAR遺伝子をTRAC遺伝子座へのノックインし、CAR発現を最適化することで回避 (Eyquem et al, 2017)。この手法はユニバーサルCAR-T開発にも資する。
  • 腫瘍微小環境におけるPD1, LAG3、DGKなどを介した免疫抑制機構の回避
  • 免疫チェックポイント阻害により回避可能であるが一方で、重篤な自己免疫反応を誘起する可能性がある免疫チェックポイント阻害剤の利用に替えて、CRISPR/Cas9によるPD-1 KOが試行され効果を示したが、長期的使用にはPD-1 KOはT細胞疲弊を介した抗腫瘍性低下の問題が残った
  • TCR阻害チェックポイント回避の観点から試行されたDGKをKOした抗-EGFRvIII CAR-T細胞は、グリオブラストーマの異種移植マウスモデルにて効果を示した (Jung et al, 2018)。
  • LAG-3のKOの効果は実証されていないが、3種類のsgRNAsを利用してTRAC, PD-1およびFASのKOがCAR-T細胞の活性化誘導細胞死(Activation Induced Cell Death, AICD)を低減し、CAR-T細胞の増殖を亢進することが報告されている(Ren et al, 2017)
安全性
  • CRISPR技術による遺伝子編集に伴うオフターゲット編集および多重遺伝子編集に伴う染色体転座がT細胞に及ぼす影響について引き続き留意と研究が必要であり、また、PD-1 KO CAR-Tのサイトカイン放出症候群のような重篤な過剰免疫応答にも留意と研究が必要である。
現行のT細胞遺伝子編集技術の限界
  • CRISPR/Cas9が、p53を介したDNA損傷タイプIインターフェロン応答によるCAR-T細胞の細胞死や増殖抑制をもたらす可能性 (本日の記事「p53活性化は精密ゲノム編集のチェックポイント」参照);増殖初期のT細胞の倍加時間は8-11時間を要し、CRISPRシステムのエレクトロポーレーション後1-2日の増殖阻害はCAR-T細胞収量の顕著な減少につながる。
まとめ (レビュー Fig.1 から引用した下図参照)CAR-T 4

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