1. Cas9が誘導するDSBの修復過程で生成される変異は、周囲の配列から予測可能
[出典] [bioRxiv版] "Mutations generated by repair of Cas9-induced double strand breaks are predictable from surrounding sequence" Allen F, Crepaldi L [..] Parts L. bioRxiv. 2018 Aug 25;[Nature Biotechnology版] "Predicting the mutations generated by repair of Cas9-induced double-strand breaks" Allen F, Crepaldi L [..] Parts L. Nat Biotechnol. 2018 Nov 27

概要
  • サンガー研、ケンブリッジ大ならびにタルトゥ大(エストニア)の研究チームは今回、4万種類を超えるgRNAsについてCas9がもたらす変異プロファイルを明らかにし、Cas9によるゲノム編集結果を理論上の上限に近い精度で予測することを可能にした。
ハイスループットCRISPR/Cas9変異プロファイル解析
  • ヒトU6プロモーターを帯びたベクターに、gRNAと、gRNAの標的配列を79-ntの可変なゲノムコンテクストに埋め込んだ配列をセットにしたコンストラクトをクローニングしたggRNA-標的のペアを41,362組、Cas9を発現させた細胞へ導入し、20日間培養後、編集結果をディープショートリードシーケンシングで解析 (原論文 Figure 1: Mutational profiles generated by CRISPR–Cas9 and a method for their high-throughput measurement 参照)
  • ヒト慢性骨髄性白血病由来K562を始めとする種々の細胞株とCas9とその変異体を組み合わせて解析:K562-eCas9, K562-Cas9-TREX2, K562-Cas9-2A-TREX2およびE14TG2a-Cas9
1,000,000,000を超える変異プロファイルを解析
  • カルバック・ライブラー情報量に基づき変異プロファイルの類似性を判定
  • 先行研究(van Overbeek et al. 2016)からのヒトゲノム223ヶ所に対する96種類のgRNAsの変異プロファイル結果と共通な86 gRNAsの変異プロファイルを比較し、94%一致することを確認(不一致は長い欠失に起因すると思われる)
  • 繰り返し実験において変異プロファイル再現
  • 変異のほとんどは、一塩基挿入、短い欠失、または、マイクロホモロジーを介した欠失
  • 変異プロファイルは標的部位近傍の配列、細胞株およびCas9の種類に依存
高精度な変異予測器を開発・提供
  • 遺伝子座ごとに変異プロファイルを決定づける局所配列の特徴を同定し、高精度な変異予測器FORECasT (Favoured Outcomes of Repair Events at Cas9 Targets)を開発・提供:Webサイトはこちら(https://partslab.sanger.ac.uk/FORECasT)
  • 今回の手法は、31塩基対を超える欠失は対象外
2. CRISPR-Cas9編集によりシロイヌナズナにゲノム重複と染色体転位を生成
[出典]"Translocation and duplication from CRISPR-Cas9 editing in Arabidopsis thaliana" Lynagh PG, Inagaki S, Amundson KR, Marimithu MPA, Pike BR, Henry IM, Tan EH, Comai L. bioRxiv. 2018 Aug 26.
  • シロイヌナズナの初期胚と分裂組織に、RPS5AプロモーターでCas9活性をドライブするproRPS5A-Cas9(RC9)による効率の良い(>85%)シロイヌナズナゲノム編集法を適用
  • 同一染色体上2.3-kbまたは8.5-kbの間隔をとった2ヶ所を標的とするCRISPR-Cas9により、中間のDNA 2.3-kbの重複を誘導
  • CRISPR-Cas9により非相同な染色体に2ヶ所以上のDSBを入れることで、染色体腕転位と整合する切断箇所間の連結を誘導