[出典]"Single Live Cell Monitoring of Protein Turnover Reveals Intercellular Variability and Cell-Cycle Dependence of Degradation Rates" Alber AB, Paquet ER, Biserni M, Naef F, Suter DM. Mol Cell 2018 Aug 23.

[概要]
  • 正常な生細胞ではタンパク質の合成と分解とが同時進行しつつもプロテオームが然るべく制御されている。
  • 今回、スイスEPFLの研究チームはマウスES細胞において、40種類の内在タンパク質を対象として、その合成速度と分解速度をトランスクリプトミクスに依存することなく直接測定し、タンパク質の合成と分解がプロテオームを制御する分子機序を論じた。
[ツール]
  • 成熟時間が短い (<10分) sfGFPと成熟時間が長い (>4時間) mOrangeを融合することで哺乳類細胞に最適化した (mammalian-cell-optimized)タンデム蛍光タイマー (tandem fluorescent protein timers)(以下、MCFT)を作出し、コンピュータ・シミュレーションと実証実験に基づいて、合成速度と分解速度の同時測定を検証;内在タンパク質mRNAにMCFT mRNAを融合し、タンパク質を発現させ、速度を測定
  • SNAPタグとHaloタグの二重蛍光タグに基づくパルス-チェイス・タンパク質ラベリング(pulse-chase protein labeling)とタイムラプス・イメージングを利用したタンパク質分解速度測定も実施
[結果]
  • G1期とG2期の間でタンパク質合成速度が大きく変動する。細胞分裂時に多くのタンパク質の分解速度が低下し、~40%のタンパク質のレベルが安定する。
  • ES細胞においても線維芽細胞でも、細胞ごとにタンパク質分解速度が大きく変動するが、同一細胞内では異なるタンパク質の半減期が共変動する。
  • また、細胞ごとのタンパク質分解速度とタンパク質合成速度とが正に相関し、結果的に、細胞ごとのタンパク質発現レベルの変動が抑制される
  • タンパク質分解速度の細胞間の変動は、プロテアソームの因子であるプロテアソームユビキチン受容体ADRM1の発現レベルと相関し、遺伝子特異的なタンパク質分解速度とは独立である。