1. [特許]Cas9ゲノム編集と転写調節
[出典] "Cas9 Genome Editing and Transcriptional Regulation" US20180230450. 公開日 08/16/2018. 発明者 Chavez A, Tuttle M. 権利者 President and Fellows of Harvard College.
  • dCas9ではなく、gRNAの長さによってCas9の活性を調節し、同一Cas9による切断と転写調節を実現
  • 関連論文 "Cas9 gRNA engineering for genome editing, activation and repression" Kiani S, Chavez A, Tuttle M [..] Weiss R, Church G. Nat Methods. 2015 Nov;12(11):1051-4. Online 2018-03-19.
2. CRISPR/Cas9による免疫工学:樹状細胞のリンパ節走とシグナル伝達を解析する
[出典] "CRISPR/Cas9 Immunoengineering of Hoxb8-Immortalized Progenitor Cells for Revealing CCR7-Mediated Dendritic Cell Signaling and Migration Mechanisms in vivo" Hammerschmidt SI, Werth K [..] Bošnjak B, Förster R. Front Immunol. 2018 Aug 28.

Cas9-Hoxb8細胞の作出、維持、遺伝子改変および分化
(原論文Figure 12引用下図参照)Immunoengineering
  • Cas9トランスジェニックマウスの骨髄由来の細胞系マーカを発現していない (lineage-negative)細胞に、ドキシサイクリン(Dox)で発現を調節可能な転写因子Hoxb8とピューロマイシン(Puro)選択用カセットをレンチウイルスに形質転換し、mSCF, huIL-11, huFlt3L, mIL-3, Dox, およびPuroを添加した培養条件で非分化状態で数週間維持する。この長期間の培養期間を活かして、遺伝子の過剰発現やCISPR/Cas9によるノックアウトを複数回加えることが可能である。
  • 遺伝子編集の結果から、遺伝子改変が誘導された細胞をFACSで選別する。その上で、mSCF, huIL-11, huFlt3L, mIL-3, Dox, およびPuroをマクロファージコロニー刺激因子 (M-CSF)または顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子 (GM-CSF)に置換することで、それぞれ、in vitroでマクロファージまたは樹状細胞(以下, Cas9-Hoxb8 DC)へと分化させる。
Cas9-Hoxb8 DC
  • Cas9-Hoxb8 DCは、T細胞の増殖を誘導し、CCR7依存のリンパ節への遊走性を示した。
  • カルシウムセンサータンパク質GCaMP6を発現するCas9-Hoxb8 DCを利用することで、ケモカインに誘導されるカルシウムイオンのシグナル伝達の二光子顕微鏡によるin vivoリアルタイム可視化を実現。
3. トキソプラズマT. gondii RH系統の濃縮顆粒(dense granule)タンパク質の機能解析
[出典] "Functional Characterization of Dense Granule Proteins in Toxoplasma gondii RH Strain Using CRISPR-Cas9 System" Bai MJ, Wang JL, Elsheikha HM, Liang QL, Chen K, Nie LB, Zhu XQ. Front Cell Infect Microbiol. 2018 Aug 28.
  • トキソプラズマの侵入・増殖に、濃縮顆粒と呼ばれる小器官から放出されるタンパク質(dense granule proteins, GRAs)が必須とされている。今回、CRISPR-Cas9でGRA遺伝子17種類 (GRA11, GRA12 bis, GRA13, GRA14, GRA20, GRA21, GRA28-31, GRA33-38, ならびにGRA40)をノックアウトし(原論文Figure 1から引用した下図参照)、Toxoplasma gondii
    変異型と野生型の表現型と遺伝子発現プロファイルを比較した。
  • 個々の遺伝子のノックアウトがT. gondiiの病原性に与える影響は、in vitroでもBALB/cマウスin vivoでも、見られなかった。したがって、T. gondiiの病原性は他の GRA遺伝子またはGRA遺伝子間の協働によることが示唆された。遺伝子発現プロファイルは、T. gondiiの細胞周期とジェノタイプに依存することも見出した。
4. クローニング不要の簡便で効率的な遺伝子発現誘導CRISPRaの検証
[出典] "A simple cloning-free method to efficiently induce gene expression using CRISPR/Cas9" Fang L, Hung SSC, Yek J, Nguyen T, Khan S, Hewitt AW, Wong RCB. bioRxiv 2018 Aug 17. > Mol Ther Nucleic Acids. 2019-03-01.
  • フローリング不要: U6プロモーター, sgRNAおよびsgRNAのスキャフォールドからなるsgRNA発現カセットを化学合成し、dCas9+転写活性化因子のプラスミドを共に標的細胞へ導入
  • エンドヌクレアーゼ活性を欠損させたCas9(dCas9)に転写活性化因子を結合するdCas9 activation system(*)としてdSpCas9 VPRとdSaCas9 VPRを利用し、ヒト胎児腎由来HEK293A細胞とラットのミュラーグリア由来rMC1細胞において遺伝子活性化を検証。
  • HEK293A細胞において、OTX2, RAX, RORB, CRXおよび、ASCL1そしてまたはNEUROD1遺伝子発現の効率的活性化を実現
  • rMC1細胞において、Ascl1, Neurod1およびNrl遺伝子の発現も、HEK293A細胞より効率が低くかつ変動するが活性化された。
  • (*) 関連crisp_bio記事:2017-05-10 CRISPRiとCRISPRaは、ヒト細胞における遺伝子発現の抑制と活性化を、ゲノムワイドで調節可能にする:設計と実証
5. CRISPR-Cas9ゲノム編集技術とCre-LoxP部位特異的組換えを組合わせて、哺乳類細胞における条件付き遺伝子ノックアウトを実現
[出典] "A Simple Combined Use of CRISPR-Cas9 and Cre-LoxP Technologies for Generating Conditional Gene Knockouts in Mammalian Cells" Noiman T, Kahana C. The CRISPR Journal. 2018 Aug 1.
  • 誘導可能なCreリコンビナーゼを帯びた細胞においてCas9-sgRNAによりFLAG標識した必須遺伝子をノックアウト、標的遺伝子にサイレンス変異を導入してsgRNAの標的にはならないfloxedアレルを組み込んでおくことで、ノックアウト遺伝子を相補し、後にCreの活性化によりサイレンス変異体を欠失させることで、必須遺伝子の機能を解析可能とする手法
6. CRISPR-Cas9遺伝子編集療法によって生じるHIV-1のサブタイプに特異的なオフターゲット編集の予測
[出典] "Prediction of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Subtype-Specific Off-Target Effects Arising from CRISPR-Cas9 Gene Editing Therapy" Link RW, Nonnemacher MR, Wigdahl B, Dampier W. The CRISPR Journal. 2018 Aug 1.
  • HIV-1の5'末端long terminal repeat (LTR)を標的とするCRISPR-Cas9がもたらすオフターゲット編集をCRISPRseekでin silico解析;サブタイプA, B, C, D, F, GおよびOの5'LTR配列35種類をテンプレートとする11,959gRNAのオフターゲット編集を評価し、その96.40%はオフターゲット編集が発生しないと判定
7. Sox遺伝子の遠位(1~Mb)に位置する組織特異的エンハンサー複合体をCRISPR/Cas9技術などで同定
[出典] "Combinatorial CRISPR/Cas9 Approach to Elucidate a Far-Upstream Enhancer Complex for Tissue-Specific Sox9 Expression" Mochizuki Y, Chiba T, Kataoka K, Yamashita S, Sato T, Kato T, Takahashi K, Miyamoto T, Kitazawa M, Hatta T, Natsume T, Takai S, Asahara H. Dev Cell. 2018 Aug 23.
  • SPY-box 9 (SOX)は軟骨形成を調節するマスタ転写因子であり、屈曲肢異形成症(acampomelic campomelic dysplasia, ACD)患者において、SOX9の上流~1-Mbに位置するブレイクポイントに起因するハプロ不全が報告されている。医科歯科大、日本医科大、慶応大ならびに産総研の研究チームは今回、SOX9の上流~1-Mbに位置し、転写因子Stat3で制御されるマウスの肋軟骨部位に特異的なエンハンサー(Rib Cage Specific Enhancer, RCSE) を同定した。
  • CRISPR/Casシステムを初代肋軟骨細胞に送達し、クロマチン免疫沈降とNGS (ChIP-seq)によりRCSE候補を同定し、抑制型クロマチン構造を形成する複合体Sin3AとdCas9を融合したエピジェネティック抑制と3C法によってRCSEを特定した。
  • CRISPR/Cas9でRCSEを欠失させたマウスはACD様表現型を呈した。
  • CRISPR/dCas9-ChIp-質量分析により、STAT3がSox9エンハンサーをトランス活性化する因子であると特定した。
  • また、RCSEが肋軟骨特異的であることもX-gal染色体法により確認した。