出典
  • "Targeted delivery of a PD-1-blocking scFv by CAR-T cells enhances anti-tumor efficacy in vivo&イタ&." Rafiq S, Yeku OO, Jackson HJ, Purdon TJ, van Leeuwen DG, Drakes DJ, Song M, Miele MM, Li Z, Wang P, Yan S, Xiang J, Ma X, Seshan VE, Hendrickson RC, Liu C, Brentjens RJ. Nat Biotechnol. 2018 Oct;36(9):847-856. Online 2018-08-13.
  • "EDITOR'S CHOICE: Special delivery by “armored” CAR-T" Jay SM. Science. 2018 Sep 5.
腫瘍免疫療法
  • FDAは、2011以来T細胞の抗腫瘍性を亢進する一連の免疫チェックポイント阻害剤 (immune checkpoint inhibitors、以下ICI)を承認し、2017年にCAR-T細胞療法 (以下、CAR-T)を承認した (2017-12-21 crisp_bio記事参照)。
  • 免疫チェックポイント阻害剤には、全身性自己免疫疾患様の副作用のリスクがあり、CAR-T細胞療法には、B細胞性急性リンパ性白血病患者に奏功するがそれ以外の疾患には著効を示さないという限界がある。そこで、免疫チェックポイント阻害とCAR-T細胞療法の相補的併用が模索されている。一方で、CAR (Chimeric Antigen Receptor/キメラ抗原受容体)を改変することで、腫瘍微小環境でのCAR-T細胞の活性を強化する手法も試みられている。
'armored' CAR-T
  • Memorial Sloan Kettering Cancer Center、Weill Cornell MedicineならびにEureka Therapeutics Inc.の共同研究チームは2012年以来、CD40Lのような免疫調節リガンドの発現や、IL-12またはIL-16といったサイトカインの分泌を可能にしたCAR-T('armored' CAR-T)細胞を作出し、腫瘍微小環境でのCAR-T細胞の機能向上を試みてきた。
  • 研究チームは今回、腫瘍細胞の免疫チェックポイントを阻害する単鎖抗体scFvの分泌を可能とした'armored' CAR-T細胞を作出し、その抗腫瘍性が向上することを示した。
  • 単鎖抗体scFvは、免疫グロブリンの軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域をペプチドリンカーで結合した単鎖可変領域フラグメント (single-chain variable fragments)を意味し、活性化T細胞表面に発現しているPD-1に腫瘍細胞が表面に発現するPD-1のリガンド分子PD-L1を結合することで、活性化T細胞を無力化する免疫チェックポイント機構を阻害する。
実証実験
  • PD-L1陽性の血液腫瘍あるいは固形腫瘍を帯びた同系および異系マウスにおいて、この'armored' CAR-T細胞が、オートクリンにもパラクラインにも作用し、CAR-T細胞とバイスタンダー腫瘍特異的T細胞の抗腫瘍性を亢進することを、同定した。
'armored' CAR-Tの特徴
  • 'armored' CAR-T細胞療法の抗腫瘍性は、相補的併用療法に勝るとも劣らない。また、'armored' CAR-T細胞療法では、'armored' CAR-T細胞が分泌するsvFvsが腫瘍に局在することから、CAR-T細胞の免疫チェックポイント回避を可能にしつつ、免疫チェックポイント阻害剤の副作用リスクが抑制されることを期待できる。
臨床応用までの課題
  • マウスでの実証実験から臨床実験に進むには、他のモデルでの検証が必要である。特にに、'armored' CAR-T細胞の送達が免疫チェックポイント阻害剤の体内分布に与える影響の定量化を介して、免疫チェックポイント阻害がもたらす副作用リスクを厳密に検証する必要がある。