[出典] "Discovery of widespread Type I and Type V CRISPR-Cas inhibitors" Marino ND, Zhang JY, Borges AL [..]  Bondy-Denomy J. Science 2018 Sep 6. (accepted 2018 Aug 25)

背景と経緯
  • バクテリアのCRISPR-Casシステムは、宿主をバクテリオファージその他の可動遺伝因子 (MGEs)から保護する。MGEsは、多様な抗-CRISPR (anti-CRISPR, Acr)タンパク質をエンコードしCRISPR-Casの免疫機能を阻害する。
  • CRISPRシステムはクラス1と2に6種類のタイプ (I-VI)が分類・位置付けされているが、これまでに対抗するAcrタンパク質が発見されたタイプは、タイプI  (サブタイプI-D, I-Eならびに I-F;Cas3、Cascade)およびタイプ II  (サブタイプII-AとII-C; Cas9)に限られていた。
  • UCSFのJoseph Bondy-DenomyらとMGH/HarvardのJ. Keith Joungらの共同研究チームは、CRISPRシステムの広がりと多様性から他のタイプのCRISPRシステムに対するAcrsが発見を待っていると想定し、解析を開始した。
  • Acrタンパク質は、比較的小さいサイズであることは共通しているが、構造の保存性およびacr遺伝子配列の保存性は低い。一方で、acr遺伝子はしばしば他のacr遺伝子とクラスタを形成するか、"acr遺伝子座"のanti-CRISPR associated genes (aca遺伝子;Pawluk A et al., 2016 (Nature Microboology) Figure 1参照)に隣接している。研究チームは、これまでに同定されたacrまたはaca遺伝子を手掛かりにした。
  • 関連crisp_bio記事 2018-09-08 抗CRISPR (Acr)タンパク質:Cas12a阻害タンパク質 3種類を発見
acaを手掛かりに新規acrを探索
  • Acrタンパク質は初め、Pseudomonas aeruginosaにおいてサブタイプI-EとI-Fを阻害する因子として発見された。P. aeruginosaにはサブタイプI-Cも存在するが、それに対するAcrは未発見である。研究チームは今回、P. aeruginosaタイプI-E株(SMC4386)とタイプI-F株 (PA14)と共に、ファージJBD30 (Pseudomonas phage JBD30)を標的とするスペーサを組入れたCRISPRサブタイプI-Cシステムを再構成したP. aeruginosa株も対象とした解析から始めた。
  • NCBI微生物ゲノムデータベースを利用して、Pseudomonasゲノムにおいてaca1のホモログを探索し、これまで検証されていなかった遺伝子ファミリー7種類をaca1の上流領域に発見しその抗CRISPR性を判定:I-Eに抗する3遺伝子 (acrIE5-7)、I-Fに抗する1遺伝子 (acrIF11)、I-EとI-F双方を阻害する1遺伝子 (ドメイン解析からacrIE4acrIF7のキメラ)を発見;残る2遺伝子(orf1, orf2)には抗CRISPR性無;サブタイプ I-Cに対するacrは7遺伝子ファミリーの中には存在せず;すなわち、I-EとI-Fに抗するAcrタンパク質5種類を発見した。
セルフ・ターゲッティングとacrIF11を手掛かりに、サブタイプI-CとV-Aに抗するAcrICとAcrVAタンパク質を探索
  • タイプI-CとタイプV-A CRISPR-Cas12a (Cpf1)に対するAcrICとAcrVAタンパク質を同定するために、初めに、同一ゲノム内のプロトスペーサと一致するCRISPRスペーサをエンコードしているゲノムを探索した。すなわち、セルフ・ターゲッティング・スペーサを帯びているゲノムを探索した。セルフ・ターゲッティングを帯びているにもかかわらず生存している菌株には、CRISPRシステムを阻害する何らかの因子または機構が内在していることが示唆される。
  • acrIF11関連情報を手掛かりとする理由:P. aeruginosaモバイロームと50種類以上のプロテオバクテリアに広範に見出され、また、研究チームがaca4-7と命名したDNA結合モチーフをコードする遺伝子と共存する微生物種が多数見出された。
  • この手法により、手始めに、PseudomonasサブタイプI-F CRISPRに抗するacrIF12を同定した。
  • 続いて、Cas12aを帯びているグラム陰性ウシ病原菌Moraxella bovoculiの7ゲノムの内1ゲノムにサブタイプI-Cセルフ・ターゲッティングを、4ゲノムにサブタイプV-Aセルフ・ターゲッティングを、同定した。M. bovoculiの近縁種におけるacrIF11関連情報を組み合わせて、 サブタイプI-CおよびI-Fに抗するacrIC1およびacrIF13acrIF14を同定した。サブタイプV-Aについては、Moraxella sp.の遺伝子操作ツールが限られていたため、P. aeruginosaに、MbCas12aとファージJBD30を標的とするcrRNAとを組入れ解析を進め、acrVA1-VA3とそのホモログを同定した。
  • 以上、I-C、I-FおよびVAに抗するacrIC1acrIF12-I4およびacrVA1-VA3の7種類のAcrタンパク質を発見した。
ヒトU2-OS-EGFP細胞株におけるAcrVAタンパク質の検証
  • MbCas12a、EGFPを標的とするcrRNAおよびヒトのコドンに最適化したacrVA1-3.1のシステムで、EGFPの切断活性を測定し、AcrVA1がEGFPをほぼ完全に破壊したのに対し、他のAcrVAの切断活性は50-70%の範囲であることを見出した。
  • AcrVA1は、SpyCas9を阻害しない一方で、MbCas12aの他の Cas12aオーソログ(Mb3Cas12a、AsCas12aおよびLbCas12a)も阻害し、今後の応用展開を期待できる。
  • crisp_bio注:原論文に、ArcVA1は、抗CRISPR (Acr)タンパク質:Cas12a阻害タンパク質 3種類を発見紹介論文と整合するとの記述あり)
抗CRISPR関連レビュー例