[出典] "In vivo CRISPR editing with no detectable genome-wide off-target mutations" Akcakaya P, Bobbin ML [..] Maresca M, Joung JK. Nature. 2018 Sep 12. (bioRxiv. 2018-02-27);bio-Rxiv投稿紹介crisp_bio記事:CRISPRメモ_2018/02/28 18. In vivoでのオフターゲット作用を同定可能とするVIVO法

背景
  • 期待が高まるCRISPR-Cas9ゲノム編集の臨床展開には、望ましくないオフターゲット変異の同定が必須である。しかし、in vivoにおけるオフターゲットを高精度で同定可能とすることが十分検証された手法が存在しないため、オフターゲット変異誘発の有無や頻度が未だ判然としない。
  • Massachusetts General Hospital/Harvard Medical Schoolの J. Keith Joungと AstraZeneca  IMED Biotech UnitのMarcello Marescaらの研究グループは今回、in vivoでのCRISPR-Casヌクレアーゼのオフターゲット編集をゲノムワイドで同定可能とする高感度な手法 ‘verification of in vivo off-targets’ (VIVO)を開発した。
概要
  • VIVOに標的選択性を意図的に弱めた ('promiscuous')設計のgRNAsを組み合わせた実験では、CRISPR-Casヌクレアーゼがマウス肝臓in vivoでかなりのオフターゲット変異を誘導することを見出した。一方で、適切に設計したgRNAsを組み合わせた実験では、マウス肝臓in vivoにてオフターゲット変異が検出限界未満に止まる効率的なゲノム編集が実現された。
  • VIVOは、個体全体における遺伝子編集ヌクレアーゼのオフターゲット編集の同定と定量化に利用可能であり、in vivo遺伝子編集の治療戦略の開発の技術基盤となる。
詳細
  • VIVOは、CIRCLE-seqを利用して、in vitroで真のオフターゲットサイトを全て含むオフターゲットサイトの集合(スーパーセット)を'発見する'ステップと、Casヌクレアーゼで処理した標的組織において、CIRCLE-seqで同定したサイトにおけるindel変異を'確認する'ステップの二段階の手法である。VIVOの検証は、マウスの肝臓における遺伝子編集により行った。
  • VIVOを、野生型C57BL/6Nマウスと、Rosa26遺伝子座にヒトPCSK9 ORFをノックインした同腹仔  (以下、ノックイン型)の遺伝子編集実験で検証した。Streptococcus pyogenes Cas9と、Pcsk9遺伝子を標的とする'promiscuous' gRNAs (以下、gP)をアデノウイルスでマウス肝臓へ送達した。gP-Cas9は野生型でもノックイン型でも、Pcsk9 サイトに安定かつ高効率で変異を導入し、血漿内Pcsk9タンパク質レベルを低減した。
  • 肝臓ゲノムDNAに対するgP-Cas9の作用をCIRCLE-seqで解析し、野生型とノックイン型でそれぞれ3,107カ所と2,663カ所のオフターゲットサイトのスーパーセットを同定し、オフターゲット編集結果の特徴を分析し、CIRCLE-seqのリード数に応じて、class I (1-3ミスマッチ配列を含む), class II (2-4ミスマッチ配列を含む)、class III (1-6ミスマッチ配列を含む)と層別化した。
  • 続いて、安楽死させたマウス由来のゲノム上の、オンターゲットサイト (Pcsk9)と、class I, II, IIIのオフターゲット候補サイトをアンプリコン・シーケンシングで解析し、gPによりオフターゲット変異が誘導されることを確認した(変異頻度 0.13%までを検出)。
  • g-Pに変えて、マウスPcsk9を標的とつつ比較的類似配列が少ないgRNA (以下、gM)と、ヒトPCSK9 ORFに対して1ミスマッチまで許すgMHによる編集を実行し、VIVOでオンターゲットとオフターゲットへの変異導入を分析した。CIRCLE-seqの結果、gMとgMHのオフターゲット候補サイト数はいずれもgPの場合よりも大きく減少した。続くVIVO第2ステップの解析で、gMがオンターゲット活性を示し (ndels誘導率12.5%-18.5%)、オフターゲット編集は非検出であること、および、gMHがオンターゲットと1ミスマッチサイトに対してそれぞれ27.4-43.6%と20.4-21.7%のindels誘導率を示し、オフターゲット編集は非検出であることを確認した。
  • VIVOは、他のCRISPR-Casヌクレアーゼの評価に展開可能
  • VIVOの検出限界は、次世代シーケンシングのエラー率 (〜0.1%)に依存する。今回、染色体の大規模な再編成を解析対象としなかったが、そうした変異が誘発されるとしても、indels変異よりも頻度が低いとした。
CRISPR-Cas9によるゲノム大規模変異関連crisp_bio記事