[出典] "Fast reversibly photoswitching red fluorescent proteins for live-cell RESOLFT nanoscopy" Pennacchietti F, Serebrovskaya EO, Faro AR, Shemyakina II [..] Mishin AS, Testa I. Nat Methods. 2018 Aug;15(8):601-604

背景
  • 光照射により可逆的にオン・オフ可能な蛍光タンパク質 (reversibly photoswitchable fluorescent proteins, rsFPs)は、超解像蛍光顕微鏡法 RESOLFT (reversible switchable/saturable optical fluorescent transition)の鍵を握る要素技術の一つである。オン・オフを調節することで低光量の光での可視化が可能なためである (RESOLFT; Wikipediaから引用の下図参照)。RESOLFT
  • 一連の緑色rsFPsは、その耐久性 (1,000回を超えるオン・オフ可能)と高速スイッチング性により、生細胞および生体組織のRESOLFTイメージングを実現した。しかし、緑色rsFPsはスイッチングに、光毒性のリスクを伴い多色化を限定するバイオレット・青色の光を必要とする問題を抱えている。
  • 赤色rsFPsとしては、クロモフォアのシス-トランス異性体由来のKFP1を始めとしてrsCherryとrsTagRFPが開発され、変異型のasFP975rsCherryRev1.4が、RESOLFTイメージングに利用された。しかし、四量体asFP975には低光安定性、rsCherryにはスイッチング速度に、問題を抱えており、生細胞の超解像蛍光顕微鏡(以下、光ナノスコピー)解析には不十分である。
概要
  • ロシア、スエーデンならびに米国の共同研究グループは今回、疲労特性に優れ、スイッチングが高速で、安定であり、可視光の緑・オレンジ光でオン・オフが可能な赤色蛍光タンパク質を開発した。
詳細
  • 蛍光タンパク質として特性が優れた赤色蛍光タンパク質FugionRedをテンプレートとし、クロモフォアの光誘起異性化の鍵を握るアミノ酸(148, 165ならびに203の残基)を標的とする部位特異的飽和変異、続いて、ランダム突然変異誘発を加え、また、FusionRedのクロモフォアの状態に影響を与えるLys残基に注目しつつ、バクテリアコロニーにおける低容量の光に対する輝度とスイッチング効率の評価に基づいて、3種類の変異体rsFusionRed1(S148T), rsFusionRed2 (R69K/S148H)および rsFusionRed3 (R69K/S148H/C179A)について解析を進めた。
  • rsFusionRedsの蛍光の量子収率は高く、また、可視光のバイオレット(405 nm)、青色 (488 nm)および緑色 (510 nm)に応答してオン状態になった。一方で、オレンジ (590 nm)でOFF (暗状態)へと変化した。
  • rsFusionRed1/2/3のオフ・スイッチング速度はrsTagRFP (487 ± 2 ms)のそれぞれ8倍、21倍、および30倍に達し、1,000回を超えるオン・オフに耐える疲労特性を示した。注目すべきことに、rsFusionRedは、3色のうち緑色光照射の場合が最も良い疲労特性を示した。さらに、rsFusionRed2とrsFusionRed3のオレンジ光によるオフは極めて高効率であり熱安定性が高く (半減期 > 20-40 min)、rsFusionRedが光ナノスコピーに最適なrsFPであることを示した。
  • スエーデンのチームが開発したMoNaLISA (molecular nanoscale live imaging with sectioning ability; Nat Commun. 2018-08-16) システムにより、U2OS細胞内広域にわたるアクチンとビメンチンの可視化 (80-nmを超える空間分解能)とライムラプス観察を実現し、また、オフスイッチ速度が2.5-10 ms (照射光依存)の高速であることを確認した。
 光毒性関連論説:[Editorial]Phototoxicity revisited. Nat Methods 2018 October 1.
 MoNaLISA紹介In Brief: Gentler super-resolution microscopy. Strack R. Nat Methods. 2018 Oct 1.