[出典] "Genetic Modulation of RNA Splicing with a CRISPR-Guided Cytidine Deaminase" Yuan J, Ma Y, Huang T [..] Ding Q, Song Y, Chang X. Mol Cell. 2018 Oct 4.

概要
  • 次世代シーケンシグ (NGS)解析から膨大なスプライシングアイソフォームが同定されたが、そのほとんどの機能が未同定である。この機能解析を促進するには、細胞内でスプライシングを制御しその作用の分析を可能とする技術が必要である。
  • 中国科学院上海生命科学研究院 (SIBS)、広州医科大学ならびにUCSDの研究チームは今回、nCas9とシチジンデアミナーゼに基づく一塩基編集技術TAMを開発し、スプライシング4種類の誘導と、デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者由来iPS細胞における読み枠修復を実現した。
TAM (Targeted-AID mediated mutagenesis)
  • TAMの構成はAIDx-nCas9-Ugi (ヒト活性化誘導シチジンデアミナーゼ - nCas9 - Uracil DNA glycosylase inhibitor)
  • スプライシングは、スプライソソームのU1 snRNPが5'-スプライス部位 (5'-SS)のGU配列を認識し、U2 snRNP補助因子の35Dサブユニットが3'-スプライス部位 (3'-SS)のジヌクレオチドAGに結合するところから始まる。したがって、GUそしてまたはAGにおける一塩基変異がスプライシングに大きく影響する。
  • TAMは、スプライス部位非コード鎖上のC-to-T変換を介して、スプライス部位のG-to-A変換を誘導し、エキソンスキッピングなどを誘導する。一方で、ポリピリミジン領域 (polypyrimidune tract, PPT)におけるC-to-T変換を介して、エクソン取り込みも誘導可能。
TAMによる実現したスプライシング
  • エクソンスキッピング:ヒトB細胞由来Raji細胞株のCD45細胞外ドメインのエクソン5のスキッピング)
  • 選択的スプライシングサイト (alternative splice sites, ASS)を介したスプライシングの活性化: STAT3のエクソン23のASSを介した選択的スプライシングによりSTAT3β/STAT3αの比が20倍に; STAT3βは細胞死に、STAT3αは前発癌性に、関与
  • 相互排他的な選択的エクソンのスイッチング:マウス横紋筋由来C2C12細胞におけるPkm1とPkm2のスイッチングとその筋形成への影響)
  • 標的イントロンの保持 (イントロンリテンション):ヒストン脱ユビキチン化酵素BAP1)の第2イントロンを保持する実験から、第2イントロンの存在がBAP1の翻訳を阻害することを見出した)
  • PPTを標的としたC-to-T変換を介したエクソン取り込み:HEK293細胞のOS9遺伝子において周防ライシング因子の結合親和性が弱いエクソン13のPPTのCを全てTに変換してその結合親和性を強めることでエクソン13を取り込むスプライシングを実現;THYN1遺伝子のエクソン6とRPS24遺伝子のエクソン5でも検証
  • PAM配列の上流12-bpから20-bp上流のウインドウ内でG-to-A変換を誘導することで、ヒトの全エクソンの80%以上に関するスプライシング制御が可能
患者由来iPS細胞におけるDMD遺伝子変異の修復
  • DMD遺伝子のエクソン51を含む15-kbを欠損しているX染色体を帯びたiPS細胞に、編集効率を上げるためSpCas9ではなくSaCas9を組み込んだTAMを送達
  • 心筋細胞へと分化後のDMD遺伝子において、エクソン50とエクソン51がスキップされ、100-kb程度遺伝子が短縮されたが、ジストロフィンタンパク質が発現・機能することを確認。
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