[出典] "Induction of resistance to chimeric antigen receptor T cell therapy by transduction of a single leukemic B cell" Ruella M, Xu J, Barrett DM [..] Lacey SF, Melenhorst  JJ. Nat Med. 2018 Oct 1.

背景
  • FDAとEPはそれぞれ2017年と2018年に、キメラ抗原受容体 (CAR)を発現させたT細胞による療法であるCAR-T療法として、 CD19を標的とするノバルティス社のCTL019 (キリアム/Kymriah: tisagenlecleucel) とカイトファーマ社(ギリアド・サイエンシズ社)のYescarta (axicabtagene ciloleucel)  を承認している。その間、CAR-T療法の解説やレビューが数多く発表され、最近では、CAR-T療法の先駆者の一人であり、今回報告の共著者の一人でもあるペンシルベニア大学のCarl H. JuneはM. Sadelainと共著で2018年7月5日のNew England Journal of Medicineにレビュー"Chimeric Antigen Receptor Therapy"を発表している。
  • 小児性再発/難治B細胞急性リンパ芽球性白血病 (以下、B-ALL)を標的として承認されたCTL019は、B-ALLに著効を示すが、再発率が高く完全寛解率が低く、再発事例の多くで、白血病細胞にCD19が検出されない。Carl H. Juneを含むUniversity of Pennsylvania,  Children’s Hospital of Philadelphia (CHOP), Novartis Institutes for Biomedical Research, Children’s Hospital Coloradoの研究チームは今回、CTL019を受けたのち再発した20歳のB-ALL患者1名の事例を報告した。
経緯
  • この患者は、化学療法と臍帯血移植を受け、三回目の再発後に、CTL019の第1相試験を受けた。CTL019を処置後28日で完全寛解したが、261日目に再発と診断され、CARが形質導入されたB細胞白血病 (CAR-transduced B cell leukemia, CARB)細胞が検出された。
  • 救済療法として、ビンクリスチン、プレドニゾン、メルカプトプリンおよびメトトレキサート、続いて、抗CD22抗体モキセツモマブシュードトクス を9ラウンド、さらにCD22標的CAR-T療法を尽くしたが、CARB細胞の増殖が止むことはなく、進行性白血病に伴う合併症で患者を失うに至った。
  • 研究チームは、次世代免疫グロブリン重鎖シーケンシング (immunoglobin heavy-chain sequencing, IgH-seq)解析によりCARBの起源を遡及し、再発患者におけるCAR19陽性白血病細胞は、複製能を有するレンチウイルス (replication-competent lentivirus, RCL)を介してin vivoで発生したか、CTL019作製過程で発生したという仮説に達した。
  • しかし、CTL019注入後、3, 6, 9, 12および20ヶ月での患者末梢血には RCLが検出されなかった一方で、CTL019プロダクト由来CAR19陽性細胞集団の中に、IgH-seqにより、白血病性クローンを発見した。したがって、CARB細胞は、CTL019製造過程における形質導入時の副産物と判断し、さらに、CARB細胞の発生と増殖の過程を詳らかにする実験を重ねた。
結論
  • CTL019製造過程で、CD19標的CARレンチウイルスが導入された白血病細胞が一個発生することで、体内でCARBが増殖しつつCD19エピトープをCTL019からマスクすることで、致死的なCAR-T耐性を誘導するに十分であるという結論に達した。また、CD19が非検出になる原因として、CD19の変異、CD19の選択的スプライシング、B細胞受容体複合体の構造変化は否定した。
  • 論文出版時点で国際的にCAR-T療法369例が報告されているが、CARB有害事象はこの1例だけと稀な事象である。
  • しかし、CAR-T細胞の増殖・活性化と表裏一体でコンタミネーションした細胞の増殖と活性化を伴う可能性を帯びたCAR-T製造過程には、一細胞分解能での品質管理が必要である。