[出典] 論文 "Treatment of a metabolic liver disease by in vivo genome base editing in adult mice" Villiger L [..] Schwank G. Nat Med. 2018 Oct 8. ;News & Views "Towards therapeutic base editing / 一塩基編集 (BE) 療法" Seo H、Kim JS. Nat Med. 2018 Oct 8.

フェニルケトン尿症の病因変異
  • ヒト常染色体劣性肝疾患フェニルケトン尿症 (PKU)のモデルマウスPahenu2は、Pah遺伝子の第7エクソンに、点変異 (c.835 T > C; p.F263S)を帯び、フェニルアラニンヒドロキシラーゼ (PAH)の失活、ひいては、血中L-フェニルアラニン (L-Phe)レベルの異常上昇 (>1,500 µmol/l)を呈する。したがって、Pahenu2の血中L-Pheレベルの定量から、遺伝子変異修復の効果を判定可能である。これまでに、エピソーマルcDNAテンプレートからの活性酵素発現によるPahenu2の修復がなされている。
BEによる編集
  • ETH Zürichをはじめとするスイスの研究チームは今回、一塩基編集(BE)による内在遺伝子座修復を試みた。
  • 点変異周辺のPAMサイトを探索し、Staphylococcus aureus SaCas9(KKH) (NNNRRT) とLachnospiraceae bacterium LbCpf1(RR) (TYCV)を編集に利用可能なことを見出した。前者に基づくBEは先行研究で開発済みであった (nSaKKH-BE3)。研究チームは今回、後者に基づくBEを2種類 (dLbRR-BEとdLbRR-minBE) 作出し、nSaKKH-BE3と共に、Pahenu2アレルのエクソン7を組み込んだHEK293T細胞で評価し結局nSaKKH-BE3を選択した。Pahenu2マウスから樹立した肝臓オルガノイドにおいてもnSaKKH-BE3は変異修復を実現した。
  • In vivo編集には免疫原性が低いAAVベクターによるデリバリーが望ましいが、単一のAAVベクターでのデリバーにはnSaKKH-BE3のサイズが大きすぎる。そこで研究チームは、スプリットインテインを利用してnSaKKH-BE3をp.N-int-BE3とp.C-int-BE3.sgRNA二分割し、デュアルAAVベクターによりデリバーする手法を開発した。
  • 二分割nSaKKH-BE3を、CMVプロモーターに替えた肝臓特異的合成プロモーターP3と共にAAV2血清型8 (以下、AAV8)にて、モデルマウスに尾静脈注射した。その6週間後には血中L-Pheレベルが120 µmol/l以下の正常な生理状態 (注射前の~20分の1)にまで減少し、それが26週まで維持された。
  • Pah遺伝子の修復率は、注射後4, 8, 14および26週でそれぞれ、9.7%, 18.6%, 22.1%および25.1%であったが、Pah-mRNAでの修復率はそれぞれ、16.7%, 34.4%, 38.5%, 43.6%と遺伝子修復率を上回った。また、用量を増やすことで、mRNAでの修復率63%を達成した。遺伝子修復率とmRNA修復率の差異は、P3プロモーターの活性とAAV8の形質導入効率が肝細胞の30-40%を占める非実質細胞において大きく減衰することに起因する。
  • nSaKKH-BE3により酵素活性と表現型が回復し、オフターゲット編集はバックグラウンドを超えず、DNA損傷も細胞増殖不全も発生しなかった。