1. [News & Views] 一塩基編集 (BE)療法に向けて
[出典] "Towards therapeutic base editing" Seo H, Kim JS. Nat Med. 2018 Oct 8.
     BEの特徴
    • BEは顕微授精の際に、一細胞胚または卵母細胞にデリバー可能であり、編集を受けた細胞と編集が起こらなかった細胞が混在するモザイク現象を回避可能
    • BEは出生前の胎児にデリバー可能
    • BEは適切なベクターでデリバーすることで、新生児または成人in vivoでの遺伝子編集に利用可能
     BE3によるモデルマウスの遺伝子治療2報をハイライト
    2. ゲノムワイドCRISPRaスクリーンにより、ニューロンの運命決定とリプログラミングをドライブする因子の網羅的探索を可能に
    [出典] "CRISPR Activation Screens Systematically Identify Factors that Drive Neuronal Fate and Reprogramming" Li Y, Yu C, Daley TP [..] Wong WH, Wernig M, Qi LS. Cell Stem Cell. 2018 Oct 11.
    • 細胞のアイデンティティーは、コア転写因子 (TFs)その他の調節因子の活性に依存する。このため、個々の因子とそれらの相互作用の細胞運命決定への寄与を網羅的に解析することが、細胞運命決定の分子機構の解明、ならびに、臨床応用に有用な細胞の合理的設計・作出を促進する。
    • 遺伝子群と細胞運命の関係のプロファイリングはこれまで、遺伝子発現をゲノムワイドで細胞間で比較解析する手法や、cDNAライブラリーを利用した異所性過剰発現実験で試行錯誤を続ける手法が利用されてきた。前者は細胞運命関連因子の網羅的評価が可能であるが、遺伝型と表現型の間の因果関係の手がかりは得られない。後者は、その因果関係の手がかりを提供するが、ゲノムワイドへ拡張することは実際には不可能である。
    • Lei S. Qiグループは、ゲノムワイドCRISPRaスクリーンを利用して、ニューロン運命決定に関わる調節因子 (TFsとその他のDNA結合因子)を偏りなく網羅的に同定し、因子と運命決定の因果関係の手がかりも得られることを示した。
    • CRISPRaにより調節因子の全てのペアを活性化することにより、ニューロン分化に関わる遺伝子間相互作用マップを構築し、ニューロン運命決定の真正な誘導因子であるトップヒットの因子および因子ペアを同定し、Ezh/とMecomといった新奇ペアを発見した。
    • いくつかのペアが線維芽細胞をニューロンへと直接リプログラム*することを見出した。さらに、全ゲノムRNA-seqを実施し、分化し直接リプログラムされたニューロンと内在ニューロンがよく似た転写プロファイルを共有することを見出した。
    • *) "CRISPR technology turns skin cells into brain cells with high efficiency." Armitage H. SCOPE (Stanford Medicine) 2018 Oct 11.
    3. 大規模なゲノムデータセットから高速かつ網羅的に周期的反復配列を検出するSPADE (Search for Patterned DNA Elements)を開発
    [出典] "Fast and global detection of periodic sequence repeats in large genomic resources" Mori  H,  Evans-Yamamoto  D,  Ishiguro S,  Tomita M,   Yachie N. Nucleic Acids Res. 2018 Oct 10. (bioRxiv 2018-04-28)
    • 周期的に繰り返すDNA配列やアミノ酸配列は、ゲノム進化、遺伝子調節、タンパク質複合体形成、免疫など重要な生物学的事象に関与している。また、ZFNs, TALENsおよびCRISPRsといったゲノム編集システムは周期的反復配列に由来している。そこで、東京大学と慶應大学の研究チームは今回SPADEを開発し、GenBankからダウンロードした7,006種類の原核生物完全ゲノムと、NCBI RefSeqデータベースからダウンロードしたヒト参照ゲノムGRCh38.p10で、検証した (ソフトウエアの比較評価について原論文Table 1引用下図左参照;CRISPR検出について原論文Figure 1引用下図右参照)。
    SPADE 1 SPADE 2