[crisp_bio注] 2018/10/15 タイトルを'_2018/10/14'から'_2018/10/13'に修正し、項目順を入れ替えました。
1. [News & View] 発生生物学に使えるバーコーディング
[出典] "Barcodes galore for developmental biology" Elsner M. Nat Biotechnol. 2018 Oct 11
  • R. Kalhorら (Science, 2018)はCas9を利用してゲノムに'瘢痕を残していく (scarring)'ことでマウスの全細胞系譜の追跡を実現した。2017年のGESTALT法も始まるCas9による細胞系譜追跡法はいずれも、Cas9が生成する二本鎖DNA切断(DSB)のerror-proneな修復が残す短いindelsをバーコードとして利用する。
  • R. Kalhorらは、ホーミングガイドRNAs (hgRNAs)を設計・生成し、発生過程で連続的に多様化していくバーコーディングを実現することで、複雑な発生過程を辿る多細胞動物マウスの全細胞の発生過程追跡を可能にした。
 バーコーディング関連crisp_bio記事
2. 植物の効率的'C-to-T'塩基編集 (BE)をnCas9とヒトAPOBEC3Aの融合で実現
[出典] "Efficient C-to-T base editing in plants using a fusion of nCas9 and human APOBEC3A" Zong Y, Song Q, Li C, Jin S, Zhang D, Wang Y, Qiu JL3, Gao C. Nat Biotechnol. 2018 Oct 1.
  • ラット由来のAPOBEC1を利用したBE3の標的範囲が5-nt幅のウインドウに限定されているところ、ヒトAPOBEC3AをnCas9に組み合わせて (A3A-PBE)、コムギ、イネおよびジャガイモのゲノムにおける編集対象ウインドウ幅が17-ntへと拡大された。
  • PAM配列としてNGA, NGCG, NNGRRTおよびNNNRRTを認識するSpCas9とSaCas9およびその変異体とヒトAPOBEC3Aと組合わせることで、イネゲノムの90%でC-to-T置換が可能になる。
3. 小胞体Ca2+センサーSTIM1のCRISPR-Cas9ノックアウト細胞はアルツハイマー病 (AD)のin vitroモデル足り得る
[出典] "STIM1 deficiency is linked to Alzheimer’s disease and triggers cell death in SH-SY5Y cells by upregulation of L-type voltage-operated Ca2+ entry" Pascual-Caro C [..] Martin-Romero FJ. J Mol Med. 2018 Aug 7.
  • U Extremaduraの研究チームは、孤発性アルツハイマー病患者の中前頭回組織でSTIM1のレベルが著しく低下していることを見出した。さらにCRISPR-Cas9によりSTIM1をノックアウトしたSTIM1-KO SH-SY5Y神経芽腫細胞が、AD患者由来の脳組織とよく似た表現形質を示すことを見出した。例えば、STIM1-KO細胞は、Cav1.2チャネルを介したCa2+の流入亢進により、細胞死に至る。
4.  CRISPR-Cas9によるオレンジの皮からエタノールを生産するSaccharomyces cerevisiaeを作出
[出典] "CRISPR-Cas9 Approach Constructing Cellulase sestc-Engineered Saccharomyces cerevisiae for the Production of Orange Peel Ethanol" Yang P, Wu Y, Zheng Z, Cao L, Zhu X, Mu D,  Jiang S. Front Microbiol. 10 October 2018.
  • CRISPR-Cas9技術により、S. cerevisiaeのヘキソキナーゼ2遺伝子を削除し、Agaricus biporusのグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ (NADP+) (gpd)プロモーターを帯びたsestcセルラーゼ遺伝子の発現カセットを挿入することで、S. cerevisiaeでの安全で安定したsestc発現を実現した。
  • この酵母変異株での48時間発酵により、オレンジの皮の粉末から、変換効率0.151 g/gで、野生型の37.7倍にあたる濃度7.53 g/Lのエタノール生産を実現した。
5. [レビュー] 免疫、感染症、発生生物学の研究に有用なニワトリへの遺伝子編集技術の展開ひろがる
[出典] "Applications of Gene Editing in Chickens: A New Era Is on the Horizon" Sid H,  Schusser B. Front Genet. 09 October 2018.
6. CRISPR-Cas12aによるEscherichia coliの多重ゲノム編集
[出典] "A Multiplex Genome Editing Method for Escherichia coli Based on CRISPR-Cas12a" Ao X, Yao Y, Li T, Yang T-T, Dong X, Zheng Z-T, Chen G-Q, Wu Q and Guo Y. Front Microbiol. 09 October 2018.
  • E. coliゲノムの複数サイトにそれぞれサイズの異なる遺伝子を同時に短期間で挿入することを初めて実現 (原論文FIGURE 1引用下図参照); E. coli multi-edit
  • 3種類の異種遺伝子の挿入を1ラウンドの組換えと選別で8日で実現;5-アミノレブリン酸 (5-aminolevulinic acid, 5-ALA)の生産を実現;今回開発したヘルパーとドナーの2-プラスミドシステムよるHalomonas bluephagenesisゲノム編集も実現