[出典] "Minimal PAM specificity of a highly similar SpCas9 ortholog" Chatterjee P, Jakimo N, Jacobson JM. Sci Adv. 2018 Oct 24. (bioRxiv 2018-02-02*)

要約
  • MITの研究チームは2018年2月2日にbioRxivに5'-NNGT-3' PAMを認識するStreptococcus canis由来Cas9 (ScCas9) を投稿*していたが、今回2018年10月24日Science Advances誌にてScCas9が5'-NNG-3' PAMを認識することを報告した (2018-10-25 23:20 crisp_bio注:ScCas9とその変異体の記述の混乱を整理)。
  • *) CRISPRメモ_2018/02/04 2. Streptococcus canis由来Cas9 (ScCas9)で標的可能領域を広げる。
MIT研究チームの関連報告
Streptococcus Cas9オーソログの中でのScCas9の選択
  • UniProtからStreptococcus Cas9全配列をダウンロードし、BLOSUM62アミノ酸類似度行列に基づいて大域ペアワイズアライメント (global pairwise alignments)を行い、SpCas9と高い配列相同性 (89.2%)を帯び、かつ、保存性が高いREC3ドメイン (367-376残基)に正電荷を帯びた10アミノ酸が挿入されているScCas9に注目した。
  • ScCas9のアミノ酸配列をSpCas9三者複合体構造(PDB 4OO8)にマップし、この挿入アミノ酸鎖がループ (以下、Loop)構造をとり、PAM近傍の標的DNAに近づいていることを同定し、加えて、PAM結合に必須な2個のアルギニンの上流に近接して2アミノ酸(以下、KQ)も挿入されていることを同定し、この2種類の挿入がScCas9にSpCas9と異なるPAM配列認識をもたらしていると想定した。
ScCas9のPAM同定
  • はじめに、S. canisゲノム上のスペーサをウイルスとプラスドの配列にマップ・アラインメントし、5′-NNGTT-3′ PAMを推定した (原論文Fig. 1引用下図参照)。ScCas9 1
  • 次に、 PAM-SCANRの手法を利用して、in silicoでの推定を実験検証し、ScCas9が5′-NNGTT-3′ PAMより短くSpCas9の 5′-NGG-3′とも異なる5′-NNG-3′ PAMに結合することを同定した。
  • また、ScCas9からSpCas9に対して挿入されている配列の削除の仕方で、5′-NGG-3′ PAMに結合することも同定した:ScCas9 ΔLoop -> 5′-NAG-3′;ScCas9 ΔKQ -> 5′-NGG-3′–like PAM (Aへの特異性が低下);ScCas9 -> ΔLoop ΔKQ 5'-NGG-3' (なお、SpCas9にScCas9特異的配列を挿入する実験も行なっている)
ヒト細胞におけるScCas9 PAMの特異性
  • SpCas9、ScCas9およびScCas9 ΔLoop ΔKQの編集活性を、HEK293T細胞におけるVEGFA遺伝子座を標的とするsgRNAsにて評価し、ScCas9が、5′-NGG-3′に加えて5′-NNGN-3′PAMを帯びた標的配列に対して編集活性を示すことを同定した。さらに、synthetic traffic light reporterを利用して、一塩基編集ABE (7.10)においてもScCas9がSpCas9よりも広く5′-NNGN-3′PAMを帯びた配列に対して活性を示すことを同定した。
ScCas9のオフターゲット編集
  • VEGFA site 3、DNMT1 site 4およびFANCF siteにて、ScCas9がSpCas9と同等のオンターゲット編集活性を示し、前二者ではオフターゲット編集は無視可能であり、FANCF siteではオフターゲット編集とオンターゲット編集の比が1.5分の1へと低減した。
ScCas9編集の遺伝子座依存性
  • HEK293T細胞の9遺伝子座を標的とする実験で、標的配列編集活性のPAMそしてまたは遺伝子座への依存性を検証し、ScCas9を介した遺伝子編集の標的を選択する必要があることを指摘
ScCas9-ABE (7.10)の編集活性
  • Base Editing Evaluation Program (BEEP)を開発し評価;ScCas9は、SpCas9が標的としないPAMを帯びた配列に対してもC-to-T変換とA-to-G変換を実現するが、5'-NGG-3' PAMを帯びた配列に対する一塩基編集効率はSpCas9に劣る。
Streptococcus genusにおいて新奇PAMを認識するCas9を探索するプログラム
  • Streptococcus由来の既知のスペーサの配列と、Streptococcusに属するバクテリアに感染するファージ配列との比較対象に基づくSearch for PAMs by ALignment Of Targets (SPAMALOT)を開発・公開 https://github.com/mitmedialab/SPAMALOT (解析結果例原論文Fig. 6引用下図参照) ScCas9 2