[出典] Research Highlight "SIRT6 at the beginning" Neff EP. Lab Animal. 2018 Oct 23.;NEWS AND VIEWS "Role for the longevity protein SIRT6 in primate development" Nature. 2018 Aug;560(7720):559-560.;論文 "SIRT6 deficiency results in developmental retardation in cynomolgus monkeys" Zhang W, Wan H, Feng G, Qu J [..] Li W, Liu GH, Hu B. Nature. 2018 Aug;560(7720):661-665. Online 2018-08-22
  • 中国科学院の研究チームは今回、カニクイザルにおいて、マウスでは見出されていなかったSIRT6タンパク質の機能を同定した。
  • マウスでは、SIRT6がゲノムの安定性、炎症および代謝を含む多様な因子を調節する老化遺伝子として研究が行われており、マウスのオスでは、SIRT6の過剰発現が寿命を伸ばし、SIRT6 欠損マウスは生後数週間で死亡するという報告もなされている。
  • 最近、ヒトES細胞でSIRT6を過剰発現させると、脳の発生異常が起こり、胚致死に至ることが報告された。中国科学院の研究チームは今回、カニクイザルをモデルとして、CRISPR-Cas9技術によって受精卵においてSIRT6をノックアウトし、発生に至ったオス胎仔は懐胎期間中に死亡し、メスは生後数時間で死亡することを見出した (SIRT6欠損したヒトは誕生に至らない)。
  • 野生型カニクイザルは懐胎6ヶ月で出生し、SIRT6タンパク質によって長鎖ノンコーディングRNAの一種であるH19遺伝子の発現が抑制されていた。SIRT6を欠損したメス・カニクイザルは脳の発生不全を含む発育不全が起こし、サイズが2-4ヶ月の野生型胎仔相当であり、脳を始めとする全ての組織でH19遺伝子の発現が極めて亢進していた。
  • 続いて、SIRT6欠損ヒト神経前駆細胞の分化が野生型よりも遅れ、H19 RNAレベルが高いことを見出した。また、H19の発現抑制により、神経細胞分化の不全が修復されることを示した。
  • SIRT6タンパク質はさまざまな組織で数千遺伝子の発現を調節することが知られており、また、H19の発現が上昇していることにより発症するSilver–Russell症候群の患者の寿命は健常人と変わらない事例などから、H19遺伝子の欠損だけが今回観察された不全の原因とは考えられない。
  • マウスからカニクイザルそしてヒトへの進化に伴って、SIRT6の欠損の重篤化と、脳の複雑性の増加が、並行していることは興味深い。
  • 老化との関連に戻ると、SIRT6遺伝子の標的遺伝子が膨大であり、また、GWAS解析からSIRT6遺伝子とヒト長寿化の相関が同定され、SIRT6タンパク質がアルツハイマー病などの老化に関連する神経変性から脳の保護に関与することも知られていることなどから、SIRT6タンパク質の発現が、ヒトの発生と長寿化の双方に関与すると見て良いだろう。
  • カニクイザル実験関連crisp_bio記事:2018-01-25 クローン羊(Dolly)から20年余りを経て、クローンサル(Zhong ZhongとHua Hua)誕生CRISPRメモ_2018/01/17 3. CRISPR/Cas9によるカニクイザルへのノックイン 2報 (論文へのリンクのみ)