[出典] "Engineered anti-CRISPR proteins for optogenetic control of CRISPR–Cas9" Bubeck F, Hoffmann MD [..]  Eils  R, Niopek D. Nat Methods. 2018 Oct 30.

要約
  • 微生物由来のAcrタンパク質がCRISPR-Casエフェクター阻害活性を酵母*やヒト細胞でも**示すことから、Acrタンパク質によってCasエフェクターの活性を調節することが考えられる。
  • ハイデルベルク大学とスイスEPFLの共同研究チームは今回、青色光によるAcrタンパク質の活性調節を実現し、ひいては、Casエフェクターによるゲノム編集とエピゲノム編集の時空間制御を可能とするCASANOVA (CRISPR–Cas9 activity switching via a novel optogenetic variant of AcrIIA4)スイッチを開発した。
  • *) CRISPRメモ_2018/03/09 - 1. SpCas9活性と遺伝子ドライブを抗-CRISPRタンパク質 (AcrIIA2; AcrIIA4)によって調節する:酵母での実証
  • **) CRISPR関連文献メモ_2017/07/13 - 3. 抗CRISPR蛋白質AcrIIA4によるCRISPR-Cas9阻害の機構と利用 
SpCas9を標的とするAcr
  • Cas9-sgRNA複合体にサブナノモルの親和性を有するListeria monocytogenesプロファージ由来AcrIIA4を採用
光センサー
  • エンバク (Avena sativa)由来のフォトトロピンの光感受性ドメイン(LOV2)を、酵素の表面に露出しているループに挿入することで、酵素活性を調節可能なことが知られている 。これは、LOV2のN末端とC末端が暗状態では近接しているが、青色光を受けて末端のヘリックスが解け、このLOV2のコンフォメーション変化が酵素の活性部位およぼすアロステリック作用を利用している(Science, 2016)。
  • AcrIIA4-Cas9-sgRNA複合体構造 (PDB 5VW1 )情報をもとにAcrIIA4の溶媒露出, Cas9結合セグメントおよびAcrIIA4構造内の残基コンタクトを考慮し、LOV2挿入に最適なループL5を同定した。次いで、ループL5内の挿入可能部位全てについてLOV2を挿入し、Cas9阻害能をHEK293T細胞において評価し、さらに、AcrIIA4(∆N64/∆Q65/∆E66)を選別しCASANOVAと称した。
Acr-LOV2の最適化
  • 一時的なトランスフェクションまたはAAVを介してCASANOVAをCas9およびsgRNAsをHEK293T細胞で共発現し、Cas9の活性が光に強く依存することを確認したが、トランスフェクションした場合は暗状態でもCas9による標的DNAへの有意な変異誘発が見られた。このため、CASANOVAのLOV2ドメインに両者のドッキングを強めることが知られている変異を導入した。さらに、Cas9への結合親和性を高める変異をAcrIIA4に導入した。こうしたCASANOVAは、xCas9***の活性制御に対しても有効であった。
  • ***) 2018-03-02 xCas9:PAMの拡張とオフターゲット抑制を両立
CASANOVAを介したdCas9-p300によるエピゲノム編集 (Nat Biotechnol. 2015)
  • HEK293T細胞においてインターロイキン-1レセプターアンタゴニスト (IL1RN )プロモーターをモデルとして、光によるエピゲノム編集制御を実証
細胞内分子動態の可視化
  • CASANOVAにdCas9-3xRFPとテロメアを標的とするgRNAを組み合わせ、U2OS細胞において、488-nmのレーザビーム照射後20−40分で最初の蛍光ドットが現れ、時間とともに急速に増加し、dCas9-3xRFPのテロメアへのリクルートメントが進行することが示唆された。