1. マウスin vivoにてdCas9-EGFPの遍在的発現を実現
[出典] "Live imaging and tracking of genome regions in CRISPR/dCas9 knock-in mice" Duan J, Lu G, Hong Y, Hu Q, Mai X, Guo J, Si X, Wang F, Zhang Y. Genome Biol. 2018-11-08.
  • 北京大学などの中国研究チームは今回、原論文Figure 1引用の上図Aにあるように、dCas9-EGFP
    CAGプロモーターの下流にdCas9 (D10A/H840A)に続いてNLSを介してEGFPを配置したカセットを帯びたベクターを尾静脈注射を介してRosa26遺伝子座の第一イントロンに挿入し、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺および脾臓とマウス個体、および、骨髄、脾臓および胸腺から分離した造血細胞、好中球、B細胞およびT細胞でのdCas9-EGFPの発現を実現・確認した。
  • このdCas9-EGFPノックイン・マウスをもとに、 CRISPRimaging-interference (CRISPRii) 法を開発し、ゲノムの動態解析ならびにゲノムの動態を調節する因子のin vivo機能解析を実現した。
  • 具体的には、テロメアのin vivo動態が細胞内とは大きく異なることを見出し、また、X染色体のメジャーサテライトリピートと単一遺伝子座の可視化も実現した。
2. ECCITE-seq:一細胞のトランスクリプトーム、免疫受容体のクロノタイプ、細胞表面マーカ、試料の同一性およびsgRMAsを同時測定可能とする手法を開発
[出典] "Expanding the CITE-seq tool-kit: Detection of proteins, transcriptomes, clonotypes and CRISPR perturbations with multiplexing, in a single assay" Mimitou E [..] Smibert P. bioRxiv. 2018-11-08.; 209-04-22 Nat Methods に"Multiplexed detection of proteins, transcriptomes, clonotypes and CRISPR perturbations in single cells"として掲載 (関連crisp_bio記事 2019-04-26 単一細胞のタンパク質・トランスクリプトーム・クロノタイプ多重解析ならびにCRISPRスクリーンとの融合を実現するECCITE-seq)。
  • 先行研究で、Cellular Indexing of Transcriptomes and Epitopes by sequencing (CITE-seq)  を開発したNew York Genome Centerなどとジャクソン研究所の共同研究チームは今回、CITE-seqにCRISPRスクリーンとCell "hashing"技術を組み合わせて、掲題にある一細胞5種類の同時測定を可能とするExpanded CRISPR-compatible CITE (ECCITE-seq) へと拡張し、不均一な細胞集団からの悪性リンパ腫細胞の選別と分子マーカ同定を実現した。
3. CRISPR-Cas9によりB細胞の抗原特異性をリプログラム
[出典] "Reprogramming the antigen specificity of B cells using genome-editing technologies.
CRSIPR-Cas9 HDR" Voss JE, Gonzalez-Martin A, Andrabi R [..] Burton DR. bioRxiv. 2018-10-29.
  • CRISPR-Cas9誘導HDRを介して、成熟B細胞の免疫グロビン重鎖 (heavy chain, HC)可変領域を、HIVに対する広域中和抗体(bnAbs)であるPG9のそれと置換し、改変遺伝子座から発現するPG9 HCがB細胞の軽鎖と結合し、細胞表面にHIV特異的B細胞受容体 (B cell receptors, BCRs)の発現をもたらすことを確認した (原論文Figure 1引用下図参照)。MAb PG9
  • 改変細胞においては、活性化誘導シチジンデアミナーゼ (AID)によるIgクラススイッチを介して、抗HIV中和活性が強化された。
4. ドーパミン受容体D1遺伝子座 (Drd1a)とアデノシン受容体2a遺伝子座 (Adora2a)にCreリコンビナーゼをノックインしたラット系統を樹立
[出典] "Knock-in rat lines with Cre recombinase at the dopamine D1 and adenosine 2a receptor loci" Pettibone JR [..] Berke JD. bioRxiv. 2018-10-29.
  • 神経科学ではこれまでBACトランスジェニックマウスモデルが活用されてきたが、UCSFの研究チームは今回、サイズが大きいことで、その行動を阻害することなく電気生理学的測定装置を含むより複雑な頭蓋内移植が可能な掲題トランスジェニックラットモデルを、CRISPR-Cas技術を利用したiCre (the codon-improved Cre recombinase) ノックインにより作出した。
  • このラットモデルの歩行活動や学習機能と動機付けは正常であり、Creノックインの影響は見られず、線条体の特定の領域て選択的にCreを発現させることが可能であり、ひいては、直接路 (Direct pathway neurons, dMSNs)と間接路 (Indirect pathway neurons, iMSNs)を高精度で選択的に調節することを可能にした。
5. シロイヌナズナをモデルとして、各種CRISPR-Casヌクレアーゼの植物における遺伝子編集の効率と精度を評価 (再掲:参考図を追加)
[出典] "Comparison of efficiency and specificity of CRISPR-associated (Cas) nucleases in plants: An expanded toolkit for precision genome engineering" Raitskin O,  Schudoma C, West A,  Patron NJ. bioRxiv. 2018 Sep 21. Nov 7改訂
  • 比較対象:SaCas9, SpCas9, Lb Cas12a, As Cas12a;SpCas9-h (ヒトコドン最適化), xCas9 3.7, eCas9 10, eCas9 1.1
  • 効率は、コドンとsgRNA構造の最適化にはほとんど依存せず、スペーサのGC含量と相関
  • SaCas9が最も効率的;'high fidelity' Cas9はオフターゲット編集減少の効用あり
  • 下図左右は原論文Figure 1とFigure 3の引用
plant 1 plant 3