1. ナノ磁石を介してin vivo CRISPR-Cas9ゲノム編集の空間的制御を実現
[出典] "Spatial control of in vivo CRISPR–Cas9 genome editing via nanomagnets" Zhu H, Zhang L, Tong S, Lee CM, Deshmukh H, Bao G (Rice U). Nat Biomed Eng. 2018-11-12:News & Views "Local magnetic activation of CRISPR" Hsu MN, Hu YC. Nat Biomed Eng. 2019-02-07.
  • 磁性ナノ粒子(magnetic nanoparticle)と積荷容量の大きな (>38 kbp)組換えバキュロウイルス(recombinant baculoviral vectors, BVs)を組み合わせた系(MNP-BVs)を開発し、外部磁石により局所的に磁場を加えることで、MNP-BVsの細胞侵入を亢進し、かつBVsの局所的不活性化を回避する。BVsは補体システムにより不活性化されるため、結果的に、標的組織に限定したCas9の一時的発現実現。
2. ゲノムワイドCRISPRスクリーンにより、一炭素単位代謝パスウエイを担うミトコンドリア・セリン輸送体を同定
[出典]"SFXN1 is a mitochondrial serine transporter required for one-carbon metabolism" Kory N [..] Sabatini DM. Science. 2018-11-16.
  • 一炭素単位代謝(One-carbon metabolism)パスウエイは、塩基、アミノ酸および脂質を含む多様な代謝物合成に必要な一炭素単位(以下、1C)を生成する代謝系であり、葉酸-メチオニン代謝系とも呼ばれる。このパスウエイには細胞質経路とミトコンドリア経路が存在する。また、哺乳類細胞分裂の際には、ミトコンドリアにおけるセリンの異化が生合成に必要な1Cのほとんどを供給し、癌細胞の増殖がセリン由来1Cに依存し、癌細胞において、ミトコンドリアにおけるセリン異化酵素が上方制御されている。しかし、1Cパスウエイの鍵となるミトコンドリアへのセリン輸送の分子機構は不明であり、セリンのミトコンドリアへの輸送体も同定されていなかった。
  • ホワイトヘッド研究所などの研究チームは今回、1Cパスウエイの主要な細胞質内酵素セリンヒドロキシメチルトランスフェラーゼ-1 (SHMT1)と合成致死の関係にある同定を目的して、SHMT1ノックアウトJurkat細胞とK562細胞におけるゲノムワイドCRISPR-Cas9スクリーンを行い、セリン輸送体SFXN1同定に成功した。
3. ゲノムワイドCRISPRスクリーンによりヒト初代T細胞の免疫応答を制御する主要因子を同定
[出典]"Genome-wide CRISPR Screens in Primary Human T Cells Reveal Key Regulators of Immune Function" Shifrut E, Carnevale J [..] Ashworth A, Marson A. Cell. 2018-11-15. (bioRxiv. 2018-08-03*)

4. 複合免疫不全症の新規病因変異を同定 - CRISPR/Cas9で作出したモデルマウスも利用
[出典] "IKBKB遺伝子の機能獲得型変異による新たな複合免疫不全症を発見" 東京医科歯科大学・オーストラリア国立大学プレス通知資料. 2018-10-22. ; 論文 "Gain-of-function IKBKB mutation causes human combined immune deficiency" Cardinez C [..] Kanegane H, Cook MC. J Exp Med. 2018-11-05. Online 2018-10-18.
  • 日本人とオーストラリア人の互いに独立なコホートの全エクソームシーケンシングから、NF-κBシグナル伝達を活性化するIKKβ 活性型キナーゼ (IKK2)をコードするIKBKBのヘテロ型ミススセンス変異 (c.607G>A)/IKK2(V203I)が、機能獲得型病因変異であることを同定;CRISPR/Cas9によりIkbkb遺伝子にオーソログ変異を導入した精密モデルマウスの表現型で裏付け。
5. CD34陽性造血幹細胞におけるHBB変異のCas9 mRNAとssODNを介した修復の試み
[出典]"Gene correction of HBB mutations in CD34+ hematopoietic stem cells using Cas9 mRNA and ssODN donors" Antony JS, Latifi N, Haque AKMA et al (U. Tuebingen). Mol Cell Pediatr. 2018-11-14.
  • HEK293細胞でZFNs, TALENsおよびCRISPR/sgRNAによるβサラセミアに共通なスプライシング変異HBB IVS1–110 (rs35004220)編集効率を評価した結果CRISPR/sgRNAを選択し、骨髄細胞由来CD34陽性造血幹細胞において遺伝子修復率8%を得、さらなる最適化が必要とした。
6. [レビュー]CRISPR遺伝子編集技術による睡眠研究における細胞型特異的な機能ゲノミクス
[出典] Review "In vivo cell type-specific CRISPR gene editing for sleep research" Yamaguchi H, de Lecea L (Stanford U). J Neurosci Methods. 2018-11-12

7. C. elegans Gene Knockout Facilityの要求を満たす効率的CRISPR/Cas9ノックアウト技術を確立
[出典]"CRISPR/Cas9 methodology for the generation of knockout deletions in C. elegans" Au V, Li-Leger E [..] Moerman DG. G3 (Bethesda). 2018-11-12.
  • C. elegans Gene Knockout Consortiumは>20,000のORFsのヌル変異体ライブラリーを目標としていたが、~15,000ORFsの推定ヌル変異体まで到達した。この努力を加速するために、U. British Columbiaのファシリティーでは、線虫ゲノム編集に最適なsgRNAs選択ツールを開発・提供 (http://genome.sfu.ca/crispr)し、先行研究で明らかにしたRNP送達、最適な相同アーム長の選択、二重マーカ選択ベクターと組み合わせて、安定かつ効率的なラーブラリー構築用プロトコルを確立;全ゲノムシーケンシング解析でオフターゲット編集は非検出;一方で、オンターゲットでの複雑な組換え変異を検出し、その品質管理検証プロトコルを開発