2016年11月24日
CRISPRニュース:アルゴノート(NgAgo)ってどうよ?(4)ネットで火がついた疑義が査読済み投稿へと展開
- 2016年5月2日に河北科技大学のChunyu Han等のNgAgoによるヒト293T細胞のゲノム編集論文がNature Biotechnology オンライン版で刊行されると、時を置かずして、再現性が無いというクレームがネット上に相次いでいた。
- 2016年11月11日にゼブラフィッシュの遺伝子転写阻害によって遺伝子ノックダウンが起きたとする投稿がCell Reports (編集オフィスは上海生命科学研究院内)から刊行された(すなわち、ゲノム配列は改変されていなかった)。
- “NgAgo-based fabp11a gene knockdown causes eye developmental defects in zebrafish.”
Jialing Qi, Zhangji Dong, Yunwei Shi, Xin Wang, Yinyin Qin, Yongming Wang and Dong Liu (南通大学/復旦大学). Cell Research. Advance online publication 2016 November 11.
- “Questions about NgAgo.”
Shawn Burgess, Linzhao Cheng, Feng Gu, Junjiu Huang, Zhiwei Huang, Shuo Lin, Jinsong Li, Wei Li, Wei Qin, Yujie Sun, Zhou Songyang, Wensheng Wei, Qiang Wu, Haoyi Wang, Xiaoqun Wang, Jing-Wei Xiong, Jianzhong Xi, Hui Yang, Bin Zhou, and Bo Zhang. Protein & Cell. First Online 2016 November 15.
- “NgAgo-based fabp11a gene knockdown causes eye developmental defects in zebrafish.”
- Cell Research の投稿は、結果的にChunyu Han論文でいうところのゲノム編集を再現できなかったことになるが、ゼブラフィッシュに現れた表現型の変異はNgAgoの作用では無いとする指摘もされている。
- Protein & Cellの研究グループのメンバーは、Han研究室のサイトビジットも試みたが協力を得られなかったこともあり、詳細な実験情報の即時開示を求めており、また、著者の一人北京大学のWensheng Weiは「NgAgoに見切りをつけた」と述べた。また、Protein & Cell のZhang Xiaoxue編集長はNature に対して「中国では科学的議論にとどまらず、倫理的かつ政治的問題になっている」と述べた。
- Chunyu HanはNature に対して、「再現実験が失敗に終わる原因をつきとめる検証実験を進めており、そのデータとプロトコルを報告する」と述べた。なお、河北科技大学は2016年8月にゲノム編集センター建設計画(地方政府の予算〜3,200万ドル)を発表している。
- Han論文を掲載したNature Biotechnology はNature に対して「ジャーナルに寄せられたクレームとオリジナル論文の調査を継続中」と述べた。
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