1. CRISPR-Cas9が誘導する鎖置換増幅による超高感度DNA検出法
[出典]"A CRISPR–Cas9-triggered strand displacement amplification method for ultrasensitive DNA detection" Zhou W, Hu L, Ying L, Zhao Z, Chu PK, Yu XF. Nat Commun. 2018-11-27.
  • DNAの高感度検出に必要なDNA増幅に最もよく利用されているPCRに対して、熱サイクルを必要としないDNAの等温増幅法は、ポイント・オブ・ケアなどオン・サイト診断に有用である。
  • 中国科学院深圳先进技术研究院を中心とする研究グループは今回、CRISPR-Cas9でDNA鎖の2箇所にニックを入れ、鎖置換増幅(strand displacement amplification, SDA)を誘導し、全過程において一定の温度で進行する"真の"等温増幅を実現し、このDNA増幅法をCRISDA (CRISPR–Cas9-triggered nicking endonuclease-mediated Strand Displacement Amplification method)と命名した。
  • CRISDAは、CRISPRエフェクターの高感度かつ特異的な標的DNA認識とその際に進行するCRISPRエフェクターのコンフォメーション変化を利用して、これまでの等温増幅法と異なりssDNAを露出させる前処理を不要としたDNA増幅過程 (原論文Fig. 1引用下図左Step1-Step4)に、ペプチド核酸 https://ja.wikipedia.org/wiki/ペプチド核酸 (PNA) プローブとする過程 (下図左 Step5)を続けることで、アトモル濃度の感度と、1塩基の特異性とを実現した。
CRISDA 1 CRISDA 2
  • さらに、 ビオチンで標識したdCas9を利用して標的DNAをエンリッチメントする前処理を加えることで、サブアトモア濃度の超高感度検出を実現した (原論文Fig. 6引用上図右参照)。
  • ヒト9番染色体由来の877 bp DNA断片およびヒトゲノムにおける169 bpと203bpの領域増幅・検出と、大量の野生型ダイズのなかにおける少量の遺伝子組み換え作物 (GMO)ダイズの検出で検証・実証
2. 
CRISPR/Cas9を介した二本鎖切断からの修復結果の大規模並列プロファイリングと予測モデル構築
[出典]"Massively parallel profiling and predictive modeling of the outcomes of CRISPR/Cas9-mediated double-strand break repair" Chen W, McKenna A, Schreiber J, Yin Y, Agarwal V, Noble WS, Shendure J. bioRxiv. 2018-11-28.
  • 米国U. Washingtonの研究チームは今回、ヒト細胞にレンチウイルスベクターで導入した6,872種類の合成標的配列を対象として、CRISPR/Cas9による切断に続くNHEJを介したDSB修復に誘導された~116万例の変異プロファイルを測定した。
  • その結果、挿入は主として切断部位のすぐ上流由来の1-bp挿入、また、欠失は主としてマイクロホモロジー由来であり、変異型は可変であるがその発生数と相対的頻度には再現性があることを見出した。
  • プロファイリングの結果に基づいて、局所的な配列のコンテクストに基づくCRISPR/Cas9編集結果を予測する機械学習モデルを構築した:プログラム入手先 GitHub CRISPR_NHEJ_prediction 
  • さらに、DSBサイトの近傍の特定の位置にマイクロホモロジーを導入することで、欠失パターンをプログラム可能なことを示した。
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3. BAXを介したアポトーシスはVDAC2に依存する
[出典]"VDAC2 enables BAX to mediate apoptosis and limit tumor development" Chin HS, Li MX [..] van Delf MF, Dewson G. Nat Commun. 2018-11-26.
  • アポトーシスは腫瘍形成の抑制に直結し、多くの抗腫瘍剤で利用されている過程である。このアポトーシスの必須因子として知られているBAXとBAKは、互いに似た分子機序で調節され冗長な関係にあると考えられている。オーストラリアの研究グループは今回、BAXとBAKの作用機序に大きな違いがあることを見出した。
  • ゲノムワイドCRISPR/Cas9スクリーン (原論文 Fig 1.引用下図参照)により、電位依存性アニオンチャネル2 (VDAC2)が、BAXが機能するに重要であるが、BAKの機能には関与しないことを見出した。VDAC2
  • VDAX2イタの欠損は、BAXならびにBAKとVDAC1、VDAC2およびVDAC3を含むミトコンドリア外膜に存在するチェネル複合体との相関関係を失わせるが、アポトーシス活性についてはBAXの活性阻害だけをもたらす。
  • VDAX2イタの欠損はまた、抗腫瘍剤の腫瘍細胞死滅機能と腫瘍形成抑制能を無力化した。