(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160407)
  • Corresponding authors: Michael G. RossmannRichard J. Kuhn (Purdue U.)
  • 中南米を中心として感染が拡大しているジカウイルス (Zika virus, ZIKV)については、先天性小頭症、ギラン・バレー症候群、脳組織損傷との関連が明らかにされてきたが、治療薬が存在せずその感染から発症までの分子機序を明らかにすることが急がれている。今回、クライオ電顕単粒子再構成法によってジカウイルスの構造が高分解能で明らかにされた。
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  • ジカウイルスは、デング熱、ウエストナイル熱、日本脳炎、黄熱ならびにダニ媒介脳炎のウイルスと同じフラビウイルス科に分類されている。フラビウイルスはエンベロープ(E)を有するウイルスであり、RNAゲノム(〜11,000塩基)がカプシドで囲まれ、さらに、E糖タンパク質(〜500アミノ酸)と〜75アミノ酸の膜タンパク質(M)または〜165アミノ酸の前駆膜タンパク質(prM)の180コピーで構成される正二十面体シェルで囲まれた構造をとっている。
  • ZIKVとデングウイルス(DENV)の全体構造についてのCα原子間のRMSDはわずかに1.8Åであったが(挿入図参照)、グリコシル化サイト(ZIKVではAsn154;DENVではAsn153)周囲では6Åまでの大きな差が存在した。また、ZIKVのグリコシル化サイトはEタンパク質のAsn154の1サイトであるが、DENVのEタンパク質にはAsn67とAsn153の2サイト存在していた。
  • DENVのEタンパク質上のAsn67のグリコシル化が細胞への吸着に関与し、ウエストナイルウイルス(WNV)のEタンパク質上Asn154のグリコシル化は神経系への浸潤に関与していることは、グリコシル化が細胞吸着において重要な役割を担っていることを示唆している。