1. 新たな転写活性化法dCasEV2.1 (EDLL-dCas9-MS2:VPR)
[出典] "Strong gene activation with genome-wide specificity using a new orthogonal CRISPR/Cas9-based Programmable Transcriptional Activator" Selma S [..] Orzaez D. bioRxiv. 2018-12-04.
  • 合成生物学 (SynBio)は、互いに直交する調節回路を組み合わせて植物の代謝プログラムと発生プログラムの書き換えを目指している。SynBioの有望なツールとして近年、自律的活性化ドメイン (ADs)をdCas9に融合することで転写活性化を実現するプログラム可能な転写活性化因子 (Programmable Transcriptional Activators (PTAs)/CRISPRa)の開発が進んできた。
  • Universidad Politécnica de Valenciaの研究チームは今回、活性化を画期的に向上させるdCas9-PTA, dCasEV2.1, を開発した。
  • ADs7種類についてSunTag方式、scaffold RNA (scRNA)方式 (gRNA2.0またはgRNA2.1)およびscRNA方式の4種類のdCas9との組み合わせ方を評価し、EDLLとVPRの2種類のADsをscRNA (gRNA2.1)方式でdCas9に融合するdCasEV2.1に到達した。
  • ベンサミアナタバコにおいて実証実験:dCasEV2.1の転写活性化率は標的プロモーターの本来の活性に依存するが、天然では活性が低いジヒドロケンペロール-4-レダクターゼ(DFR)の活性を10,000倍まで向上した;トランスクリプトミクスから、標的選択性がゲノムワイドで十分高いことを確認した。
 転写活性化関連crisp_bio記事
2. SgRNAの化学修飾によるCas9編集の効率向上
[出典] "Extensive CRISPR RNA modification reveals chemical compatibility and structure-activity relationships for Cas9 biochemical activity" O’Reilly D, Kartje ZJ [..] Damha MJ,  Gagnon KT. Nucleic Acids Res. 2018-12-04.
  • CrRNAの一部をDNAに置換えたキメラ・ガイドがCas9の生化学的活性を亢進することを報告した (CRISPRメモ_2018/05/16 - 2の第3項参照) Southern Illinois UにMcGill Uが加わった研究グループは今回、SpCas9 CRISPR RNA (crRNA)の糖‐リン酸主鎖に広範な化学修飾を加える(原論文Figure 1引用下図参照)実験を行った。chemical modifications
  • その結果、Cas9の活性化の観点からは、crRNAガイドの'seed'領域はA型の螺旋構造に適合する化学修飾を好むが、tracrRNAと結合する領域は、DNA, 2′F-ANAおよび2′,5′-RNAを含むより広範な化学修飾を許容するなど、CRISPR-Cas9活性との化学的適合性と構造活性相関の法則が見えてきた。
3. タイプI-A CRISPRシステムにおいて、Cas4がスペーサ獲得と標的切断に関わる
[出典] "Cas4 nucleases can effect specific integration of CRISPR spacers" Zhang Z, Pan S, Liu T, Li Y, Peng N. bioRxiv. 2018-12-08.
  • 華中農業大学の研究チームはこれまでに Sulfolobus islandicus I-A CRISPR-Casシステムの分子機構解明に取り組み、Csa3aタンパク質がCCN PAM依存でCRISPRスペーサ獲得を誘起することを明らかにしたが、プロトスペーサ選択やスペーサのCRISPRアレイへの挿入の機序は不明であった (文献*,**:(*) Figure 7を引用した下図左と(**) Figure 6を引用した下図右参照:
Type I-A CRISPR–Cas 1 Type I-A CRISPR–Cas 2
  • (*) "Transcriptional regulator-mediated activation of adaptation genes triggers CRISPR de novo spacer acquisition" Nucleic Acids Res. 2015 Jan;43(2):1044-55. Online 2015-01-07.;(**) "Coupling transcriptional activation of CRISPR–Cas system and DNA repair genes by Csa3a in Sulfolobus islandicus" Liu T, Liu Z, Ye Q, Pan S, Wang X, Li Y, Peng W, Liang Y, She Q, Peng N. Nucleic Acids Res. 2017 Sep 6;45(15):8978-8992.
  • 研究チームは今回、Cas4ファミリーのCas4とCsa1が、プロトスペーサの5' PAMと3'ヌクレオチド・モチーフならびにスペーサの長さと方向決めに、決定的な役割を果たすことを明らかにし、さらに、Cas4タンパク質の中でこの機能の鍵となるアミノ酸を同定した。
  • Cas4とCsa1の過剰発現と、Cas4タンパク質がコードされているSulfolobusファージとが、アダプテーション (スペーサ獲得・組込)の効率を顕著に低減し、前者が、PAMに依存する非定型的スペーサ組込またはPAMに依存しないスペーサ組込を高頻度で誘導し、後者がスペーサ獲得を阻害することを同定した。また、プラスミド感染実験において、侵入DNAが、Cas4の過剰発現を介したスペーサ獲得・組込の不全により、CRISPR-Cas干渉 (免疫応答)を逃れることが示唆された。
4. 子ブタのブタ伝染性下痢ウイルス (PEDV)への感受性低減 - CMP-N-N‐グリコリルノイラミン酸水酸化酵素遺伝子 (CMAH)を標的とするCRISPR/Cas9により、N‐グリコリルノイラミン酸の発現を阻害
[出典] "Lessening of porcine epidemic diarrhoea virus susceptibility in piglets after editing of the CMP-N-glycolylneuraminic acid hydroxylase gene with CRISPR/Cas9 to nullify N-glycolylneuraminic acid expression" Tu CF, Chuang CK, Hsiao KH, Chen CH et al. bioRxiv. 2018-12-05.
  • 受精卵にCMAHを標的とする一対のsgRNAsとCas9 mRNAをマイクロインジェクションし、CMAHの両アレルノックアウト・ファウンダーを作出;CMAHのKOはPEDV対する免疫をもたらさないが、PEDVの発症を遅らせ症状を軽減する
5. [論説] ナノ磁石によるCRISPR-Cas9ゲノム編集の局所的制御法*:実用にはオフサイトの編集や磁場の加え方や組織内への浸透性など解決すべき課題が多々ある
[出典] ”Magnets make target cells more attractive to CRISPR” Nance EA. Sci Transl Med. 2018-12-05.
(*) CRISPRメモ_2018/11/19-1 1. ナノ磁石を介してin vivo CRISPR-Cas9ゲノム編集の空間的制御を実現