1. マウス胚のゲノム編集において、手法の最適化によりオフターゲット編集は抑制可能であるが、望ましくないオンターゲット編集は制御困難である
[出典] "Off- and on-target effects of genome editing in mouse embryos" Ayabe S, Nakashima K, Yoshiki A. J Reprod Dev. 2018-12-06.
  • 理化学研究所BRCの研究チームは、CaS9 mRNA、Casタンパク質およびCas9ニッカーゼmRANのエレクトロポレーションまたはマイクロインジェクションにより発生したオフターゲット編集、Cas9 mRNAの細胞質へのマイクロインジェクションの場合に限りindels1例見られたにすぎないが、Cas9 D10Aニッカーゼと16-bpの間隔のゲノム部位を標的とする一対のgRNAsによるゲノム編集で1-kbの欠損を含む16種類の欠損パターンをオンターゲットを含む領域同定
 オンターゲット変異に関するcrisp_bio記事

2. CRISPRによる非ヒストン染色体タンパク質HMG-14 (HMGN1)のノックアウトの効果を質量分析で解析
[出典] "Rapid Proteomic Screen of CRISPR Experiment Outcome by Data Independent Acquisition Mass Spectrometry: A Case Study for HMGN1" Mehnert M, Li W, Wu C, Salovska B,  Liu Y. bioRxiv. 2018-12-09.
  • イェール大学など米国・チェコ・スイスの研究グループは、データ非依存型(data-independent acquisition, DIA) 質量分析により、CRISPR技術によるHMGN1のノックアウトを確認するととに、HMGN1ノックアウトに伴いその発現が顕著に変化するタンパク質147種類を同定した。
  • HMGN1の機能に関する手がかりを得るとともに、DIA-MSがCRISPRゲノム編集結果の評価に有用なことを示した。
3. CRISPRシステムのスペーサ獲得プロセスを利用することで微生物間の遺伝子水平移動 (HGT)をリアルタイムで捉えた
[出典] "Real-time capture of horizontal gene transfers from gut microbiota by engineered CRISPR-Cas acquisition" Munck C, Sheth RU, Freedberg DE, Wang HH. bioRxiv. 2018-12-10.
  • 微生物間のHGTは高頻度に発生するとされているが、水平移動した遺伝子が宿主側に固定されるプロセスは不明であり、また、HGT過程で獲得された遺伝子の30%はその機能が不明とされている。
  • コロンビア大学の研究チームは今回、CRISPRシステムのinterference (外来遺伝子切断)活性を備えていないE. coli BL21株のCRISPRアレイのスペーサとして外来HGTエレメントを記録することで、HGT事象をリアルタイムかつ核酸レベルの分解能で観察可能なことを示した (著者らはこの菌株をEcRecと呼称)
  • 単一のドナーでEcRecをしたのち、複数のドナー微生物からEcRepへのHGT、および、臨床分離糞便試料におけるEcRepへのHGTを、解析した。
4. [レビュー] 作物品種改良へのゲノム編集の応用とその将来性
[出典]  Review "Applications and potential of genome editing in crop improvement" Zhang Y, Massel K, Godwin ID, Gao C. Genome Biol. 2018-11-30
  • 現在10億人が栄養不良状態にある一方で、生物多様性が失われ気候変動の不確実性が増し、農業システムは劣化している。さらに、2050年に世界人口が90億人に達すると見込まれている今、作物の収量増大、品質改良および肥料低減を急がねばならない。こうした品種改良は技術的には遺伝子組み換えによって比較的短期間で実現可能であるが、遺伝子組み換え生物 (GMO)の社会的受容性が低く、ヒトと環境に対する安全性の証明が実用化の律速になっている。ZFN, TALENおよびCRISPR-Casによるゲノム編集は、従来の遺伝子組み換えよりも精密な遺伝子編集が可能であり、また、導入変異と天然変異を識別することは不可能である。
  • 表1 ゲノム編集により改良された作物と形質の47事例一覧
  • 図2 (下図に引用)  a) 遺伝子改変のタイプ、エフェクターおよび機能の相関図 b) ゲノム編集のワークフローCROP