2016年08月10日
CRISPRニュース:CRISPR/Cas9を超えるもの
Nature オンライン版(2016年8月6日)ニュース欄にて“Beyond CRISPR”と題する記事と、CRISPR越え候補とされたNgAgoの再現性をめぐる疑義を取り上げた記事が掲載された。
  1. “Beyond CRISPR”
    • SpCas9はベクターで送達するには大きすぎる件:小型のStaphylococcus aureus由来SaCas9で乗り越える。
    • SpCas9特有のPAM縛りの件:SpCas9とは異なるPAMを認識しかつ小型なCpf1で乗り越える。また、C2c2によってRNAも標的可能に。
    • 相同組換え修復(HDR)による遺伝子置換の低効率とランダムなindel混入の件:dCas9と活性化誘導シチジンデアミナーゼによる精緻な1塩基置換技術Target-AIDの展開で乗り越える。
    • 新たな酵素の可能性を探る:George ChurchとFeng Zhangの研究チームはいずれもインテグラーゼリコンビナーゼrecomninases)によるゲノム編集の可能性を探っている。
  2. アルゴノート(NgAgo)ってどうよ?(3)
    • 河北科技大学のHan Chunyu(韩春雨)らが2016年5月2日にNature Biotechnology オンライン版で発表した高度好塩菌由来アルゴノート(NgAgo)はCRISPR/Casを超えるものとして注目を集めたが、科学者告発で知られるFang Shimin (方是民)がWebサイト“新語録(New Threads)”に掲載した“河北科技大学韩春雨“诺贝尔奖级”实验的重复性问题”以来、国際的にもその再現性に対する疑義が表面化してきた。
      • Gaetan Burgio (Australian National University)、再現に失敗した実験の詳細をブログに掲載し、一気に閲覧回数5,000回を越した
      • Lluís Montoliu(Spanish National Centre for Biotechnology)がInternational Society for Transgenic Technologieの同僚に送った「NgAgoに関わるな」という趣旨のメールが“新語録”でリークされた(“国际转基因技术协会原主席Montoliu博士建议不要再试图重复韩春雨实验结果”)。
      • Pooran Dewari (MRC Centre for Regenerative Medicine)のオンライン・アンケートでは、9名が再現、97名が再現できなったという回答。
      • Debojyoti Chakraborty (CSIR­Institute of Genomics and Integrative Biology in New Delhi)は、再現の報告を後に撤回
      • John Van der Oost (Wageningen University): NgAgoが失望に終わっても、他の生物種のアルゴノートに可能性が残されている。
      • Han Chunyuは、8月8日に詳細なプロトコルをAddgeneに提供
      • Nature Biotechnology は、Nature ニュース・チームに対し「再現できなかったとする報告が寄せられており、調査を開始する予定」とコメント。
“アルゴノート(NgAgo)ってどうよ?(3)”NEWS→David Cyranoski. “Replications, ridicule and a recluse: the controversy overNgAgo gene­ editing intensifies.” Nature. 2016 August 11;536:136-137. Published online 2016 August 8.