[出典] "Dual Inhibition of the Lactate Transporters MCT1 and MCT4 Is Synthetic Lethal with Metformin due to NAD+ Depletion in Cancer Cells" Benjamin D, Robay D [..] Lane HA, Hall MN. Cell Rep. 2018 Dec 11;25(11):3047-3058.e4.

概要
  • 2型糖尿病治療薬として最もよく使われているメトフォルミンは抗腫瘍性を帯びているが、糖尿病治療に認められている用量では、癌療法には不十分である。バーゼル大学のM. N. Hallらは、血圧降下薬として知られているシロシンゴピン (syrosingopine)がメトフォルミンの抗腫瘍性を高めることを見出していたが、今回、Basilea Pharmaceutica Internationalの研究チームと共同で、シロシンゴピンとメトフォルミンの併用が癌細胞を合成致死に至らしめる分子機構を明らかにした。
背景
  • 癌細胞の多くはグルコースを乳酸へと分解する解糖系に強く依存する。解糖系では、エネルギー通貨とも呼ばれるATPがミトコンドリア電子伝達系のNADHデヒドロゲナーゼ (呼吸鎖複合体I)と乳酸デヒドロゲナーゼ (LDH)を介してNADHから再生される。
詳細
  • メトフォルミンは呼吸鎖複合体Iを阻害することが知られている。
  • シロシンゴピンについて研究チームは今回、癌細胞が解糖系の最終産物である乳酸とH+を排出し細胞内酸性化を回避する手段としているモノカルボン酸輸送体のMCT1とMCT4の双方を強力に阻害することを見出した。MCT1とMCT4の阻害は、細胞内乳酸レベルの上昇ひいてはLDHの阻害をもたらし、癌細胞のNAD+レベル低下に至る。
  • NAD+またはNAD+前駆体のニコチンアミドモノヌクレオチド (NMN)を細胞外から供給すると、ATPレベルが回復し細胞死を遅らせた。
  • 以上、メトフォルミンとシロシンゴピンがそれぞれ異なる酵素を阻害を介してNAD+産生を阻害することが合成致死の分子機構であることが示唆された。
展望
  • シロシンゴピンを併用することで、癌療法においてメトフォルミンの用量を抑制することが可能である。
  • MCT1とMCT4の双方を阻害する分子は現時点ではシロシンゴピンに限られているが、メトフォルミンとMCT1/MCT4阻害剤の併用療法が新たな癌療法として有望である。
日本での関連特許承認
合成致死関連crisp_bio記事 (以下に2例、その他記事タグ[合成致死]から逆引き可能)