概要
  • UC DavisとIowa State Universityの米国研究者とUniversité Paris-SaclayのRaphael Mercierのグループ、ならびに、中国科学院および中国農業科学院とRaphael Mercierとのグループは、ハイブリッド・イネの無性生殖をそれぞれNature(*1)bioRxiv(*2)にて発表した。
背景
  • 農作物の生産性と収量の向上に雑種強勢 (hybrid vigor/heterosis)が利用されているが、イネのような有性生殖作物の場合は、雑種強勢で得られたF1ハイブリッド種子が備えた望ましい形質は、遺伝的分離の機構により次世代からは多くの場合失われてしまう。ひいては、高品質の作物栽培のために農家は種苗会社からF1ハイブリッド種子を毎年購入し続けることになる。
  • 一方で、イネと同じ被子植物に属するタンポポやブラックベリーなどは減数分裂と受精を伴わなず卵細胞から直接種子を生成する無融合種子形成/アポミクシス (apomixis: asexual seed formation)と呼ばれる無性生殖で繁殖する。この場合、形成された種子は、卵母細胞由来のクローンであり、遺伝型ひいては表現型を継承する。
出典 (*1):"A male-expressed rice embryogenic trigger redirected for asexual propagation through seeds" Khanday I, Skinner D, Yang B, Mercier R, Sundaresan V. Nature. 2018-12-12.
  • 研究チームは、精細胞で発現しているBABY BOOM1 (BBM1)が卵細胞受精後の種子胚形成のスイッチを入れること、さらに、BBM1を卵細胞で異所発現させることで単為生殖を誘導可能なことを同定した。
  • ジャポニカ種キタアケとインディカ種IR50のハイブリッドイネを対象として、BBM1の卵細胞での発現と、Raphael Mercierらが先行研究で開発した減数分裂を有糸分裂に置き換える (MiMe: Mitosis instead of Meiosis)手法により半数体種子を得、これをS-Apo (Synthetic-Apomictic)と命名した。
  • MiMeは今回、REC8, PAIR1および OSD1の3遺伝子をCRISPR/Cas9によりノックアウトすることで実現した。
出典 (*2):"Clonal seeds in hybrid rice using CRISPR/Cas9" Wang C, Liu Q, Shen Y, Hua Y, Wang J, Lin J, Wu M, Sun T, Cheng Z, Mercier R, Wang K. bioRxiv. 2018-12-13.
  • ハイブリッド・イネ系統Chunyou84 (CY84)を出典*1と同様な手法でMiMe化し、クローン性の二倍体配偶子と四倍体種子を得た。
  • ここで、トウモロコシにおいて精細胞特異的ホスホリパーゼであり半数体を誘導することが同定されたMATRILINEAL (MTL) の相同遺伝子をCRISPR/Cas9で編集することで、半数体種子を作出した。
[参考] CRISPR/Cas9によるマウス単為生殖