1. ヘテロクロマチンがCRISPR-Cas9ゲノム編集に与える影響:変異誘発を遅らせるがDNA修復結果には影響しない
[出典] "Heterochromatin delays CRISPR-Cas9 mutagenesis but does not influence the outcome of mutagenic DNA repair" Kallimasioti-Pazi Em [..] Wood AJ. PLoS Biol. 2018-12-12
  • クロマチン構造がゲノム編集効率に影響を与えると考えられているが、その影響の定量は困難であった。University of EdinburghとCNRS and University of Montpellierの研究チームは今回、CRISPR-Cas9が誘導する変異の頻度とプロファイルを、配列が同一で同じ核に存在する母性アレルと父性アレルの間でアレル特異的クロマチン修飾がCRISPR-Cas9編集に与える影響を定量可能とするインプリンティング遺伝子 (imprinted gene)を帯びたマウスES細胞の実験系(原論文Fig 1引用下図左参照)を開発し、表題の結果を得た。
Heterochromatin 1 Heterochromatin 2
  • ヘテロクロマチンは、Cas9活性が短時間の場合およびCas9細胞内発現レベルが低い場合に、変異誘発を7分の1へと抑制するが、一方で、Cas9によるDSBの修復結果には影響を与えない (原論文Fig. 5引用上図右参照)。
2. CRISPRaによるPTEN腫瘍抑制遺伝子の発現活性化と抗癌作用
[出典] "Activating PTEN tumor suppressor expression with the CRISPR/dCas9 system" Moses C [..] Blancafort P. Mol Ther Nucleic Acids. 2018-12-14.
  • 癌細胞で見られるPTEN発現不全は、変異、転写抑制および遺伝子サイレンシングなどに起因する。
  • オーストラリアHarry Perkins Institute of Medical Researchの研究者等は今回、PTEN近位プロモーターを標的とするdCas9-VP64-p65-Rta (VPR)-sgRNAにより、メラノーマ細胞株とトリプルネガティブ乳癌細胞株において、sgRNAの推定オフターゲット部位における転写に影響を与えることなく、PTEN発現の亢進を実現した。
  • その結果、下流の発癌パスウエイが抑制され、B-RafまたはおよびPI3K/mTORの阻害剤の存在下で、マラノーマ細胞株の遊走が抑制されコロニー形成が阻害された。
3. FTLD患者由来iPSCから誘導したニューロンとCRISPR/Cas9で変異を修復したニューロンの比較から、FTLDの病因となる微小管結合タンパク質タウ遺伝子変異の機能を解析 (#神経変性)
[出典] "Integrative system biology analyses of CRISPR-edited iPSC-derived neurons and human brains reveal deficiencies of presynaptic signaling in FTLD and PSP" Jiang S [..] Harari O, Cruchaga C, Karch CM. Transl Psychiatry. 2018-12-13.
  • 微小管結合タンパク質タウ (microtubule-associated protein tau, MAPT遺伝子の変異がタウを伴う前頭側頭葉変性 (FTLD-tau)の病因である。Washington University in St. Louisを中心とする優性遺伝性アルツハイマー・ネットワーク (Dominantly Inherited Alzheimer Network, DIAN)とInternational FTD-Genomics Consortium (IFGC)は、FTLD-tauにおいて不全となっている遺伝子とパスウエイの同定を試み、今回その成果をTranslational Psychiatry誌で報告した。
  • 原論文Fig. 1引用下図にあるように、FTLD and PSP
    MAPT p.R406Wキャリア患者由来iPSCから誘導したニューロンと、CRISPR/Cas9で遺伝子変異を修復したアイソジェニックなニューロンのトランスクリプトームの比較から、発現に有意差がある328遺伝子を同定した。
  • ニューロンの比較から同定した遺伝子の中で61遺伝子は、脳組織においてもニューロンの場合と同様な差異を示し、また、GABA受容体を含むパスウエイとシナプス前の機能にエンリッチされていた。
4. ファンコーニ貧血症の分子機構解析の基盤となるゼブラフィッシュ変異体の作出
[出典] "Multiplexed CRISPR/Cas9-mediated knockout of 19 Fanconi anemia pathway genes in zebrafish revealed their roles in growth, sexual development and fertility" Ramanagoudr-Bhojappa R, Carrington B [..] Chandrasekharappa C. PLoS Genet. 2018-12-12
  • ファンコーニ貧血に関与する19遺伝子をCRISPR/Cas9でノックアウトしたゼブラフィッシュ変異系統36種類を作出し、各遺伝子が成長、性決定および繁殖に果たす機能の解析に利用
5. CRISPR/Cas9による原発性高シュウ酸尿症I型 (PH1)疾患モデルラット作出
[出典] "Generation of a primary hyperoxaluria type 1 disease model via CRISPR/Cas9 system in rats" Zheng R, Fang X, He L, Shao Y, Guo N, Wang L, Liu M, Li D, Geng H. Curr Mol Med. 2018-12-11
  • ミトコンドリアに局在するアラニン:グリオキシレート アミノトランスフェラーゼ (alanine-glyoxylate aminotransferase, AGXT)遺伝子アイソフォームをCRISPR/Cas9でノックアウトすることでグリオキシル酸代謝を阻害
6. アーケアでは種間交雑を介したスペーサ獲得が広がることで、CRISPR/Casシステムが種間遺伝子伝播の阻害と種分化に貢献することが示唆された
[出典] "Pervasive acquisition of CRISPR memory driven by inter-species mating of archaea can limit gene transfer and influence speciation" Turgeman-Grott I [..] Gophna U. Nat Microbiol. 2019 Jan;4(1):177-186. Online 2018-11-26
  • アーケアは近縁種のハウスキーピング遺伝子を含む染色体遺伝子にマッチするスペーサを帯びており、環境中の同一サイトのアーケア各種はスペーサを共有し、Haloferax volcaniiHaloferax mediterraneiの交雑実験でも染色体全体にわたってスペーサが獲得される。
7. CRISPRノックアウトスクリーニングによりクラミジア・トラコマチスの侵入に必須な宿主因子コートマータンパク質 (COPI)を同定
[出典] "A FACS-based genome-wide CRISPR screen reveals a requirement for COPI in Chlamydia trachomatis invasion" Park JS, Helble JD, Lazarus JE, Yang G, Blondel CJ, Doench JG,
Starnbach MN, Waldor MK. iScience. 2018-12-10.
  • Cas9発現ヒト結腸腺癌由来H29細胞にプール型sgRNAsを導入し、mCherryを帯びたC. trachomatisの感染をFACSで判定し、既知の病原体受容体ヘパラン硫酸に加えて、コートマー複合体I (COPI)がC. trachomatisの宿主侵入に必須と同定
  • COPIは細胞表面への病原受容体提示を誘導するとともに、C. trachomatisのIII型分泌装置 (T3SS)を活性化する。