[出典] "Synthetic Oligonucleotides Inhibit CRISPR-Cpf1-Mediated Genome Editing" Li B, Zeng C, Li W [..] Zhao W, Zhang C, Dong Y. Cell Rep. 2018-12-18.
  • CRISPR-Casシステムによるゲノム編集を、低分子、温度あるいは光による制御する試みに加えて、最近、抗CRISPR(Acr)タンパク質(*)による制御の試みも始まった。
  • Ohio State Universityの研究チームは今回、Cas12a (旧 Cpf1)システムにおけるcrRNAに相補的な合成DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドによるCpf1-crRNAの標的DNA切断活性調節を試みた。
  • 研究チームは、DNA、ホスホロチオエート(Phosphorothioate, PS)修飾DNA、RNA、さらに2′-fluoro、2′-O-methylまたはPSで修飾したRNAと、crRNAとの二重鎖 (crDuplex)について、293T細胞にてNDMT1を標的とするAcidaminococcus sp由来Cpf1 (AsCpf1)ゲノム編集効率を評価した。
  • AsCpf1のゲノム編集効率は、化学修飾の種類、DNAまたはRNAオリゴヌクレオチドの長さ、crRNAとハイブリダイゼーションする部位に依存したが、2′-fluoro RNAとPSで修飾したDNAによって明確に抑制された。この後、合成がより容易なPS修飾DNAについてcrRNAとのcrDuplexで実験を続けた。
  • 43-ntの長さのDNAオリゴヌクレオチドをPSで修飾したps42DNAをAsCpf1と同時に細胞に送達することで、AsCpf1の編集活性が阻止されることを見出した。この阻止能は、AsCpf1投与から時間を経過するほど低下し、用量に応じて上昇した。この傾向は、遺伝子、細胞、およびCpf1を変えても (AAVS1またはFANCF遺伝子;肝癌由来Hep3B細胞;Lachnospiraceae bacterium由来Cpf1)変わらなかった。
  • このps42DNAのCpf1活性阻害性は、オリゴヌクレオチドに依存しない。ps42DNA-AAVS1とps42DNA-FANCFが、NDMT1を標的とするCpf1の活性を阻害し、ランダム化したps42DNA (RAMpsDNA)も3種類の遺伝子に対するCpf1の活性を阻害する。すなわち、ps42DNAのCpf1活性阻害は、オリゴヌクレオチドの配列に依存しないことが示された。
  • DNAオリゴヌクレオチドの長さについては、30-nt (ps29DNA)と100-ntのDNAヌクレオチド (ps99DNA)もCpf1の活性を阻害することを見出した。また、RAMpsDNAはCpf1 RNPの活性を阻害することも見出した。さらに、SpCas9のsgRNAと相補的なps99DNAが、SpCas9の活性を抑制あるいは阻害することも見出した。
  • ゲルシフトアッセイなどの解析の結果、PS修飾DNAオリゴヌクレオチドがCpf1と相互作用しCpf1-crRNAと三者複合体を形成することで、Cpf10crRNA-標的DNAの三者複合体形成を阻害する機構が示唆された。一方で、非修飾DNAオリゴヌクレオチドはCpf1の標的DNA認識にはほとんど影響を与えないが、これは、Cpf1独特の無差別にssDNAを切断する活性によって、非修飾DNAオリゴヌクレオチド分解されることによること考えられた。
  • (*) 関連crisp_bio記事:2018-09-08 抗CRISPR (Acr)タンパク質:3種類のCas12a阻害タンパク質を発見