出典
  • [ニュース] "Better mouse model built to enable precision-medicine research for Alzheimer’s - NIH-funded team shows that introducing genetic diversity improves translatability" NIH News 2018-12-27.
  • [論文] Neuner SM, Heuer SE, Huentelman MJ, O’Connell KMS, Kaczorowski CC. "Harnessing Genetic Complexity to Enhance Translatability of Alzheimer’s Disease Mouse Models: A Path toward Precision Medicine"  Neuron. 2018-12-27. (bioRxiv 2017-11-27 "Systems genetics identifies modifiers of Alzheimer’s disease risk and resilience")
背景
  • ADのハイリスク遺伝子あるいはバイオマーカを帯びているにもかかわらず認知症を発症しない個人が多々存在することが象徴するように、ADの発症や病態は遺伝的背景 (genetic makeup)に依存する。しかし、この知見が前臨床試験に反映されることはこれまでなかった。適切なADモデルマウスが存在しなかったことが一因である。
  • Jackson LaboratoryをはじめとするUniversity of Tennessee Health Science Center、Tufts UniversityおよびTranslational Genomics Research Instituteの研究チームは今回、遺伝的多様性を組み入れることで精密なADモデルマウスを作出することが可能であるという仮説を検証し、実証した。本研究は、米国NIHのアルツハイマー病研究プロジェクトのサブテーマ"Aging Resilience - AD program"*の一環として行われた。 
AD-BXDパネルの開発と期待
  • すでに確立されていた家族性アルツハイマー病 (FAD)のトランスジェニックモデルマウス5XFAD  と、C57BL/6 (B6)×DBA/2の交雑から生じたリコンビナント近交系マウス (BXD)パネルとの交配から得られたF1ハイブリッドのマウスパネルを開発
  • 5XFADは、ヒトAD遺伝子を除いてB6近交系の遺伝的構成を帯び、アミロイド-β42の蓄積、認知障害、および神経細胞の脱落といったヒトADの病理・病態を示す。BXDパネルは、ADのリクス因子として知られている遺伝子の変異を含む480万種類を超える配列の多様性を帯びている。
  • AD-BXDパネルの各個体は、ヒトAPPイタとPSEN1イタ遺伝子のハイリスクFAD変異を共有しつつ、その他の遺伝子構成は多様である。
  • AD-BXDパネルを同一の条件で飼育しまた同一の薬剤に暴露することで、ADに対する感受性またはレジリエンスをもたらす遺伝的変異やパスウエイを系統的に同定することが可能になることを期待できる。
  • 親系統がいずれも完全な近交系であるAD-BXDパネルは、再現性の高い前臨床試験をもたらすことを期待できる。
AD-BXDパネルの評価
  • AD-BXDパネルは、発症と重症度、晩発性AD (late-onset AD, LOAD)のハイリスク遺伝子における変異に対する感受性などを含むヒトADの病理と病態を忠実に再現し、また、その遺伝子発現プロファイルもヒトADと整合した。
  • AD-BXDパネルを評価する過程で、C57BL/6Jに由来するADに対する一連のレジリエンス遺伝子とパスウエイを発見した。
  • AD-BXDパネルには異常にリン酸化されたタウが反映されていないことが完全なヒトADモデルとしては課題を残しているが、遺伝的多様性の観点からタウ、アミロイドおよび認知機能の相関を見ていくには有用である。
  • 近年、AD治療薬の前臨床試験での好成績が創薬に繋がらないことから、ADモデルマウスの有用性に疑義が呈されてきた。多様な遺伝的背景を取り込んだAD-BXDパネルは、ヒトFADおよび孤発性LOADの複雑な因果関係の解明、および、ADリスクとレジリエンスと相関するパスウエイの同定の発見に有用な、次世代ADモデルマウス資源である。
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