(創薬等PF・構造生命科学ニュースウオッチ 20160416)
  • Corresponding authors: 野中洋介(リボミック);濡木 理(東京大学)
  • ATX(ENPP2)の発現亢進は、神経因性疼痛、乳がん、神経膠芽腫などの多様な疾患の病因とされ、また、最近、肺線維症の病因でもあることが明らかにされた。ATXは分泌型リゾホスホリパーゼD (lysophospholipase D, LysoPLD)であり、リゾホスファチジルコリン(lysophosphatidylcholine, LPC)を加水分解してリゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid、LPA)を産生する。肺線維症は、LPAがLPA受容体の一種LPA1を活性化し線維芽細胞を遊走させるとことによって発症する。
  • ATX-LPA1軸を標的として第Ⅱ相試験まで進んでいる低分子化合物は存在し、ATX阻害抗体の研究開発も行われているが研究チームは今回、in vitro においてもin vivo においてもAXNを特異的かつ強力に阻害する核酸医薬抗ATX DBAアプタマーを開発した。
  • SELEX法で選別した候補からATX阻害に最小限必要なDNAアプタマーのステム領域を特定し、体内のヌクレアーゼから保護する修飾を加えたDNAアプタマー候補の中で、ヒトとマウスのATXに対して生理条件下で特異性と親和性が高かったRB011についてATXとの複合体構造の解析へと進み、RB011とATX結合の構造基盤を明らかにし、それに基づいて、RB011の構造を改変し、RB011より強力にLysoPLD活性を阻害するRB012とRB013を作出した(IC50 1.8nMと0.85nM)。また、マウスモデルにおいてATXを効果的に阻害するRB012からの誘導体RB014を得た。
36680001
  • ATXが多様なシグナル伝達に関与することからATX阻害剤にはオフターゲット作用の問題が存在する。DNAアプタマーを鼻腔内あるいは気管内投与した場合血漿中のDNAアプタマーは検出限界(0.56μg)未満であったことから、DNAアプタマーは肺線維症治療に適用可能である。