1. CRISPRa強化:CMVエンハンサーを標的遺伝子プロモーター領域へdCas9-VP64/sgRNAで誘導する手法を開発
[出典] "Gene activation by a CRISPR-assistant trans enhancer" Xu X, Dai W, Wang D, Wu J, Wang J. bioRxiv. 2019-01-11.
  • CRISPR技術による遺伝子発現活性化法は第1世代のdCas9-VP64から、dCas9やsgRNAへの活性化因子の融合を模索しつつ第2世代のVPR/SAM/SunTagへと発展してきた。東南大学の研究チームは今回、sgRNAに、種々の哺乳類細胞において最も効率が良いエンハンサーとされるヒトサイトメガロウイルス (CMV)を結合させることによるCRISPRaシステムの性能向上を目指した。
  • このシステムは、二本鎖CMVエンハンサーを制限酵素で処理して生成した粘着末端に相補的な短い配列をsgRNAの3'末端に付加しておくことで、dCas9/sgRNAがCMVエンハンサーを標的遺伝子の内在プロモーター領域へ誘導可能とする (著者らはこの改変CMVとsgRNAをそれぞれsCMVとcsgRNAと称した)。このシステムにおいて、sCMVは天然のcis-エンハンサーと同様に標的遺伝子の転写を活性化するtrans-エンハンサーとみなすことができる。
  • dCas9-VP64/sgRNA-CMVは、6種類の細胞 (293T, HepG2, PANC-1, HeLa, A549, ならびにHT29)において、多重な遺伝子についてdCas9-VP64/-VPRに優る転写活性化効果を示した。
  • また、ヒト肝癌由来細胞株HepG2とヒト膵臓腺癌由来PANC-1細胞株において、転写因子HNF4αとE47の発現をそれぞれ活性化することで、分化を誘導した。
  • ただし、HNF4α, TCF3, ASCL1, Ngn2, TNFAIP3, およびCSF3 に対する効果は顕著であったが、多能性関連遺伝子 (Oct4, Sox2, Nanog)とアポトーシス関連遺伝子Casp9に対する効果は僅かであった。
2. CRISPRi/aとanti-CRISPRを組み合わせてHEK293T細胞、hiPSCおよび酵母細胞に合成遺伝子回路を構築
[出典] "Anti-CRISPR-mediated control of gene editing and synthetic circuits in eukaryotic cells" Nakamura M [..] Qi LS. Nat Commun. 2019-01-14.
  • L. S. QiらStanford UniversityとUCSFの研究グループの成果
  • RISPRi/aに対するanti-CRISPRの抑制作用を検証し、anti-CRISPRの中でAcrIIA4が有効と判定 (原論文Fig. 1から引用した下図左参照);anti-CRISPRを予め導入することで、CRISPR-Casによる遺伝子編集に対する抵抗性を獲得した細胞、"write-protected"細胞、を樹立
Acrs CRISPR 1 Acrs CRISPR 2
  • さらに、単純ではあるがプログラム可能な遺伝子回路三種類、CRISPRaによるGFP ON、ArcによるGFP OFF、および、iFFL (incoherent feed forward loop)を構築(原論文Fig. 6から引用した上
    図右 a 参照)を構築;iFFL回路は、CRISPRaでGFPとAcrの発現を誘導し、そのAcrの発現を介してCRISPRaの活性を抑制することでGFPの一過性発現を実現する"pulse generator回路"、ただし、細胞集団における反応動態は不均一
3. 非モデル微生物の薬剤耐性・感受性遺伝子やマイクロバイオームの解析を可能とするモバイルCRISPRi
[出典] "Enabling genetic analysis of diverse bacteria with Mobile-CRISPRi" Nat Microbiol. 2019-01-07
  • 参考:Mobile-CRISPRi overview概要図 (原論文Fig. 1) ;bioRxiv. 2018-05-05投稿版をCRISPRメモ_2018/05/06の4項に記載:CRISPRメモ_2018/05/06 4. 多様なバクテリアの遺伝解析を可能にする'Mobile-CRISPRi'を開発
4. [ミニレビュー] 植物科学と育種における改変エンドヌクレアーゼによるゲノム編集 (Genome Editing using engineered endonuclease, GEEN)の過去・現在・未来
[出典] MINI REVIEW "DNA-free Genome Editing past, present and future" Metje-Sprink J,  Menz J,  Modrzejewski D, Sprink T. Front Plant Sci. 2019-01-14.
  • CRISPR-Cas技術を主な対象として、形質転換に組み換えDNAを使用することなく、したがって、外来遺伝子が残らないゲノム編集技術とその植物科学と育種への応用例、および各国の規制を概観
5. 第2回ヒトゲノム編集国際サミット・プロシーディングス
[出典] "Second International Summit on Human Genome Editing: Continuing the Global Discussion: Proceedings of a Workshop in Brief (2019)" National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine; Policy and Global Affairs; Steve Olson, Rapporteur
  • 2018年11月27-29日に香港で開催され、190カ国8万人がライブWebcaatを視聴した表題サミットのプロシーディングス:次世代へ継承されるゲノム編集 (いわゆるCRISPRbabies)の発表;ヒトゲノム編集科学の進歩;ヒトゲノム編集の応用;哲学と信仰の視線;規制;生殖細胞系列ゲノム編集の臨床展開への道;研究倫理・多様な観点・行動規範;パプリック・エンゲージメント;組織委員会の声明;Marcia McNutt (米国科学アカデミー会長)とVictor J. Dzau (米国医学アカデミー会長)の共同声明