[出典] "3D printed absorber for capturing chemotherapy drugs before they spread through the body" Oh HJ [..] Hetts SW, Balsara NP. ACS Central Science. 2019-01-09.
  • 抗癌剤の標的化と個別化が進んできたが、全身毒性副作用のリスクを伴うため、効用を期待できるにもかかわらず抗癌剤の投与量を抑制せざるを得ない事例が多々ある。局所動注化学療法 (動脈にカテーテルを挿入して標的腫瘍組織へ直接抗癌剤を注入する療法)において、標的組織に吸収され切らなかった抗癌剤は、標的組織から静脈を介した標的外の組織へと流れ込み、毒性を顕すことになる。標的組織から漏れ出す抗癌剤は注入量の50-80%とも言われている。
  • UCSF、UC Berkeley、Carbon社などの研究チームは今回、静脈に挿入し漏出抗癌剤を吸収する吸収体を作出し、ヒトの肝静脈のモデルとしてブタの腸骨静脈で、ドキソルビシンの吸収実験を行った。
  • 吸収体は、ポリエチレングリコールジアクリレート (PEGDA)の光架橋に基づく3Dプリンターを利用して、直径5mmで長さ30mmの円筒の中に、0.89mm径の中空構造を一辺800μmの正方格子で、固定した構造全体を、ポリスチレンスルホン酸共重合体膜 (厚さ30-60μm)で被覆した構造体である (被覆状態はX線トモグラフィーで確認)。
  • 吸収体は、血液中の最も大きな成分である白血球 (径9-20μm)が通過可能であり、一方で、ドキソルビシンを共重合膜が吸収するように設計されている。
  • ブタ静脈において、ドキソルビシン注入後30分で吸収体が注入量の~64%を吸収する結果を得た。また、血栓の発生や静脈の損傷は見られなかった。ドキソルビジンは用量に比例して癌細胞の細胞死が増加することから、より高用量を投与可能とする吸収体が結果的にドキソルビジン投与の効果を高めることを期待できる。
  • 3Dプリンターで形成可能なこの吸収体は患者の血管に適合させる個別化とともに、共重合体の最適化により抗癌剤に適合させる個別化が可能であり、また、薬剤溶出性ビーズを用いた肝動脈化学塞栓療法 (drug-eluting-bead-based transarterial chemoembolization, TACE)との併用が可能である。
  • ポリマー膜を利用した先行研究:[論文]""Development and Validation of Endovascular Chemotherapy Filter Device for Removing High-Dose Doxorubicin: Preclinical Study" Patel AS [..] Balsara NP, Hetts SW. J Med Device. 2014-08-19. [ChemoFilter紹介記事] "CehmoFilter: getting the drugs back out" Lo C. Phamaceutical Technology. 2016-08-17