[出典] "An online resource for GPCR structure determination and analysis" Munk C, Mutt E [..] Gloriam DE. Nat Methods. 2019-01-21.
  • Gタンパク質共役受容体 (GPCRs)は800メンバーを超える細胞表面受容体の最大のファミリーを形成し、米国FDAの承認薬の34%がGPCRsを標的とし、臨床試験も多数進行している。GPCRsの構造機能相関解析とそれによるラショナルドラッグデザインは、高精度な構造情報が十分でなかったことから、長年にわたり滞っていたが、近年、タンパク質工学と結晶化技術に進歩とともに、GPCRsの高精度構造解析も進み始めた (原論文 Fig. 1に俯瞰図あり)。
  • GPCRの主要なクラスA, B1, CおよびFにわてる53種類のGPCRsと4種類のオーソログについて271構造が明らかにされ、クラスAとクラスB1ついてはGタンパク質との複合体を含む活性状態の構造が、クラスAについてはさらにβアレスチンとの複合体の構造が報告されている。これらのX線結晶構造とクライオ電顕構造の情報と、NMR、電子-電子二重共鳴 (DEER)ならびに電子スピン共鳴 (EPR)からの情報の融合にも基づいて、GPCRsのダイナミックなコンフォメーション変化や、Gタンパク質およびβアレスチンとの結合表面について、理解が深まっている。
  • 一方で、GPCRsの87%の構造が決定されておらず、クラスB2とTの構造は全く報告さていない。さらに、GPCRsの52%には、ホモロジーモデリングに利用可能なテンプレートとなる構造さえ得られていない。また、機能解析に重要な活性状態と中間状態の構造はそれぞれ18種類と12種類に止まっている。この一因は、GPCR構造決定が、タンパク質工学と世界的にみても数ヶ所の研究室しかマスターしていなタンパク質修飾などの技術とを必要とする難易度の高い実験なことにある。
  • GPCRの機能情報を拡充し、GPCR創薬を促進するために、GPCRの新奇構造決定へのハードルを下げる必要がある。特に、GPCRsと、シグナル伝達経路のバイアスアゴニスト、アロステリック修飾因子、または、シグナル伝達エフェクター (Gタンパク質、アレスチン、およびキナーゼ)などとの複合体構造の解析が有用である。
  • U Copenhagen, Paul Scherrer Institute, GPCR Consortium, USC,および上海科技大学の研究グループは今回、 GPCRの結晶構造解析およびクライオ電顕による構造再構成に利用された手法の情報を広汎に収集し、構造研究に適切な実験条件を探索することが可能なGPCRdb (http://www.gpcrdb.org)を改訂し、実験手法・条件の解説をNature Methods誌に投稿した。
  • GPCRdbから検索可能なデータは2019年1月22日時点で次のとおり:GPCRs 15,086種類;非臭覚受容体 417種類;生物種 3,547種類;実験構造 310種類;リガンド 144,892種類;リガンド相互作用 15,452種類;変異 34,440種類