[出典] "Engineering of CRISPR-Cas12b for human genome editing" Stecker J [..] Zhang F.
Nat Commun. 2019-01-22.

概要

  • ヒト細胞のゲノム編集に利用されているCRISPR-Casシステムは、クラス2システムのCas9-sgRNAとCas12a (旧Cpf1)-crRNAに限られていたところ、Feng ZhangらのBroad/MITとE. V. KooninらのNCBIの研究グループは第3のクラス2システムCas12b (旧C2c1)-sgRNAに注目し、ヒト細胞株ゲノム編集と初代T細胞ゲノムのex vivo編集を実証した。
背景
  • Cas12bファミリーのエフェクタのサイズはCas9やCas12aよりも小さくウイルスベクターによるヒト細胞へのデリバリーの観点から魅力的であるが、Cas12bの中で最もよく解析されていたAlicyclobacillus acidoterrestris由来のエフェクター (AacCas12b)のDSB至適温度は48 °Cと高温でありヒト細胞ゲノム編集には利用不可能であった。
探索
  • 研究グループは、既知のCas12bタンパク質の配列でBLAST検索し、タイプV–B遺伝子座で27種類のCas12bファミリータンパク質を同定し、既知のタンパク質と好熱菌由来の候補を除き、ヒトコドン最適化した上でE. coliおよびin vitroでのタンパク質およびCas12b-sgRNAの活性測定を経て、37 °Cで比較的高い活性を示した2種類から、さらに293T細胞での活性評価を経てBhCas12b (1,108アミノ酸)に絞り込んだが、編集効率は極めて不十分であった。
BhCas12bの合理的改変
  • 低編集効率は、BhCas12bが、dsDNA切断 (DSB)よりも、dsDNAのうちsgRNAの非標的鎖 (NTS)にニックを入れることを優先することに由来していた。そこで、フレキシブルなNTSはCas12bのヌクレアーゼドメインRuvCの活性部位に接近可能であるが標的鎖 (TS)は接近困難と想定し、RuvCにおけるdsDNA結合ポケットを構成する12アミノ酸の置換を試み、176種類の点変異体のindel活性測定から K846RとS893Rが活性を亢進することを同定した。
  • 加えて、低温に適応している酵素ではグリシン残基が表面に露出していることから、66種類の表面残基をグリシンに置換しその中で、E837Gが活性を倍増することを見出した。その結果、K846R/S893R/E837Gの変異を加えたBhCas12b v4のゲノム編集活性を詳細に評価し、SpyCas9よりも特異性が高くゲノム編集を実現することを実証した (原論文Fig.4 引用下図 b 参照)。2019-01-23 15.26.38
Cas12bの広がり
  • BhCas12bに続いて、BhCas12bとの配列一致度が41%のBacillus sp. V3–13由来Cas12B (BvCas12b)もヒト細胞におけるゲノム編集が可能なことを確認した。2018年11月にはAlicyclobacillus acidiphilus由来Cas12bによるマウスとヒトゲノムの編集*が報告されており、Cas12bファミリーから新たな活性エフェクターを発見できる可能性がある (* CRISPRメモ_2018/12/02-2 5. 新奇CRISPR-Cas12bによるヒトおよびマウスゲノム編集)