[出典]"Targeted Cleavage and Polyadenylation of RNA by CRISPR-Cas13" Anderson KM, Poosala P, Lindley SR, Anderson DM. bioRxiv. 2019-01-26.

背景と概要
  • 真核生物内でのmRNAとlncRNAsの転写後切断と3'末端のポリアデニル化は、~20種類のタンパク質の超複合体によって制御されている。ポリアデニル化は、RNA転写物の安定化、核輸送、および翻訳効率を調節する。ヒトRNA転写物の半分以上が、多重なポリアデニル化シグナル配列を帯びており、細胞の発生と分化の過程で選択的切断とポリアデニル化を受ける。選択的切断とポリアデニル化は遺伝子発現を調節する重要な分子機構であり、3'末端の欠陥は多様なヒト疾患の病因となる。
  • University of Rochester School of Medicine and Dentistryの研究チームは今回、不活性化したCas13 (dCas13)に単一の哺乳類ポリアデニル化因子を融合することで、哺乳類細胞におけるRNAの部位特異的切断とRNAのポリアデニル化を実現し、この手法をPostscriptr命名した。Postscriptrは、ゲノムを改変することなく遺伝子発現の調節を可能にし、ヒトRNAプロセッシングの異常に起因する疾患の療法へと展開可能である。
詳細
  • 研究チームは、Prevotella sp. P5-125由来タイプⅥ-B CRISPRのエフェクターCas13bの触媒活性を不活性化したdPspCas13bに、3種類のポリアデニル化因子 (CPSF30; WDR33; Nudix hydrolase 21, NUDT21)を融合し、それぞれの機能を評価した。
  • タンパク質の検出用にN末端に、立体障害を回避するための長いフレキシブルなペプチドリンカー[GGGGSGGGGS]を介して、3x FLAGエピトープタグを融合した。さらに、核局在化シグナル (NLS)配列の核局在化性能を比較した結果、酵母のTy1レトロトランスポゾン由来の二成分NLSを選択し、dPspCas13b融合タンパク質の安定した核移行を実現した。
  • レポーター遺伝子として、11本の反平行βストランド (#1-311)からなるβバレル構造の蛍光タンパク質superfolder GFPを元にした"sfGFP(1-10)|14aaのリンカー(L)|sfGFP11"のコンストラクトを設計し、sfGFP(1-10)|L|sfGFP11の構成が維持されていればsfGFPの蛍光が観察可能になり、sfGFP11が分離されるとsfGFPが蛍光を発しないsfGFPapa (apa=alternative cleavage and polyadenylation)と、さらにポリアデニル化したレポーターsfGFPapa-pAを作出した。
  • このレポーターを利用してアフリカミドリザル腎由来COS7細胞株において、dPspCas13b-NUDT21の融合タンパク質だけがRNA切断とポリアデニル化活性を示すことを同定した。さらに、このPostscriptrが、HEK293細胞株において、ステロール調節配列結合タンパク質1 (SREBP1)のmRNAを、内在するイントロン性ポリアデニル化シグナル配列 (PAS)で切断しポリアデニル化することを見出した。