1. メタゲノムから微生物ゲノム~15万種類を再構成
[出典] 論文 "Extensive Unexplored Human Microbiome Diversity Revealed by Over 150,000 Genomes from Metagenomes Spanning Age, Geography, and Lifestyle" Pasolli E, Asnicar F, Manara S, Zolfo M [..] Segata N. Cell. 2019-01-24. Online 2019-01-17;In Brief "Expanding diversity of the human microbiome" Du Toit A. Nat Rev Microbiol. 2019-02-01.
  • University of Trentoをはじめとするイタリア、スペイン、米国、ニュージーランドおよび英国の共同研究グループは、公になっているデータベースの配列データと、多様な人類集団、複数の身体部位(口腔, 皮膚, 膣, 便)、幅広い年齢とライフスタイルをカバーする新たなサンプルからのデータから、大規模なメタゲノム・アッセンブリの手法 (原論文Figure 6引用下図左参照)に基づいて、154,723種類のバクテリアとアーケアのゲノムを再構成した。
Figure 6 Graphical Abstract
  • 再構成したゲノムから種レベルのゲノム集合 (species-level genome bins, SGBs)4,930種類を同定し、その77% (3,796 SGBs)が既知の分離株の配列または公になっているメタゲノムアッセンブリーには見られないゲノム (unknown SGBs, uSGBs)であった (原論文 Graphical Abstract引用上図右参照;詳細解析は原論文Figure 1など参照)。
  • 既存のデータベースの西欧と腸への偏りを反映して、uSGBsの多くが、ライフスタイルがnon-Westernizedとnon-gut身体部位由来であった。
  • SGBsによって、腸内と口腔のマイクロバイオームのメタゲノム・リードのmappabilityがそれぞれ、67.76%から87.51%、65.14%から82.34%、へと向上した。
  • また、メタゲノム配列の一部は、今回拡張したバクテリアとアーケアのゲノムにマッピング不可能であり、ウイルス、ブラストシスチス、菌類であることが示唆された。
2. 腸内菌叢からの分離培養により1,520種類のレファランスゲノムを決定
[出典]"1,520 reference genomes from cultivated human gut bacteria enable functional microbiome analyses" Zou  Y, Xue W, Luo G, Deng  Z, Qin  P [..] Li  J, Jia  H, Xiao L. Nat Biotechnol. 2019-02-04.
  • BGI-Shenzhenを中心とする研究グループは今回、中国において健常なボランティア155人の便から11種類の嫌気性培養条件により6,487種類の分離株を得た。続いて、16S rRNA解析にもとづいて、ヒト腸内細菌における主要な門 (phyla)と属 (genera)をカバーするように選択した非冗長な1,759分離株の全ゲノムシーケンシングを試み、高品質な1,520種類のドラフトゲノムを得て、Culturable Genome Reference (CGR)を構築するに至った。
  • CGRは338種類のspeciesレベルのクラスタに分類され、腸内菌叢に豊富なFirmicutes (796ゲノム)、Bacteroidetes (447ゲノム)やActinobacteria (235ゲノム)、Proteobacteria (36ゲノム)およびFusobacteria (6バクテリア)を含み、264ゲノムは、NCBIに登録されているレファランス・ゲノムには含まれていないゲノムであった。16S rRNAに基づいて350種類のspeciesを同定し、その中には、42種類のgenus候補 (candidatus)を含む149種類の新たなspecies candidatusが存在した。
  • このCGRによってメタゲノム・リードのmappabilityが50%から>70%へと向上した。また、CGRのデータに基づいた338種のバクテリアゲノムの機能アノテーションおよび38種類の腸マイクロバイオームの主要な種のパンゲノム (pan-genome)解析も試みた。
  • CGR関連Webサイト:China National GeneBank
3. ヒト腸内菌叢から分離した737培養株のゲノム解析
"A human gut bacterial genome and culture collection for improved metagenomic analyses" Forster SC, Kumar N [..] Lawley TD. Nat Biotechnol. 2019-02-04.
  • Wellcome Sanger Instituteをはじめとする英国、オーストラリアならびにカナダの研究グループは、20人の健常者 (英国8名;北米12名)の便からの分離培養を試み、先行研究の成果とあわせて737種類の分離株の"Human Gastrointestinal Bacteria Genome Collection (HBC)"を構築した。HBCは、Firmicutes 31ファミリーに属する273 speciesで構成され、105種類の新speciesが含まれ、胃腸マイクロバイオーム由来のバクテリアゲノムを37%拡張するに至った。
  • 菌株は、DSMZCCUG-Culture CollectionBCCM/LMGおよびJapan Collection of Microorganismsに寄託された。