[出典] "Enhanced mammalian genome editing by new Cas12a orthologs with optimized crRNA scaffolds" Teng F,  Li J, Cui T [..] Zhou Q, Li W. Genome Biol. 2019-02-05.

背景 (Cas12aの特徴)
  1. Cas9のガイドがcrRNAとtracrRNAの2重であるのに対して、ガイドはcrRNA単一
  2. Cas9が3'末端GリッチなPAMを認識するのに対して、5'末端TリッチなPAMを認識
  3. 二本鎖DNA (dsDNA)切断 (DSB)後に、Cas9がPAMサイト近位に平滑末端を残すのに対して、PAMサイトから遠位に付着末端を残す
  4. Cas9のDSBはRuvCとHNHエンドヌクレアーゼ・ドメインに依存するが、RuvCとNucドメインに依存する
概要
  • 中国科学院動物研究所の研究チームは、これまでに哺乳類細胞のゲノム編集に利用された3種類のCas12aオーソログに対して、Cas12aの新たなオーソログ6種類についてヒトとマウスの細胞におけるゲノム編集活性を評価し、より単純なPAMを認識しひいてはより広いゲノム領域を標的可能なCas12aを発見した。また、crRNAスキャフォールドを改変することで、Cas12aゲノム編集効率を向上させることが可能なことを示した。
詳細-Cas12aが認識するPAMs
  • 研究チームは、PSI-BLAST検索により、これまでにゲノム編集に利用されたことのない非冗長なCRISPR-Cas12a遺伝子座21種類と、論文投稿中にFeng ZhangグループがbioRxivに投稿*した4種類のCas12a (BoCas12a; BsCas12a; PbCas12a; TsCas12a)を同定し、また、ループ領域 (UAUU; UGUU; UUUU; UAGU; UGUGU)を除いて配列が保存されている成熟crRNAスキャフォールド5種類を同定した (原論文Fig.1から引用した下図 a 参照)。スクリーンショット 2019-02-06 13.24.31
  • 研究チームは、12種類のCas12a遺伝子を合成しE. coliで発現・精製し、in vivo転写したcrRNAスキャフォールド (Fig.1-aの1, 2または5)および基質となるdsDNAと共培養し、in vitroでDNA切断アッセイし、5'-TTTNまたは5'-TTN PAMを帯びたdsDNAを切断することを見出した。認識するPAMをさらに詳細に検証し、ArCas12a、BsCas12aおよびPrCas12aが5'-TTN PAMを、HkCas12aが5'-YYN (Y:TまたはC) PAMを認識することを見出した。
  • 続いて、合成Cas12aの両端にNLSを融合しヒト細胞とマウス細胞におけるDSB活性を測定した。ヒト293FT細胞またはマウスES細胞において、6種類のCas12aヌクレアーゼ (ArCas12a; BsCas12a; HkCas12a; LpCas12a; PrCas12a; PxCas12a)が、5′-TTTNまたは5′-TTNのPAMを認識してDSB活性を示し、切断部位にindelsを残すことを同定した。
  • 最も単純なPAM (5'-YMM)を認識するHkCas12aについては、AAVS1, CD34, および RNF2遺伝子座において、5'-YTNおよび5'-TYYN PAMsの標的部位にindelsを誘導することも同定し、Cas12aの新奇オーソログがゲノム編集領域を拡大することを実証した。
詳細-Cas12aヌクレアーゼ活性のcrRNA依存性
  • 研究チームはまた、in vitroでのCas12aのヌクレアーゼ活性に、crRNAスキャフォールドにおけるヌクレオチド (nt)置換が影響することに気づき、マウスES細胞のMeCP2遺伝子を標的として、3種類の天然crRNAスキャフォールド (Fig. 1-aの-1/-2/-5)と2種類の合成crRNAスキャフォールド (-6と-7)がCas12aヌクレアーゼ活性に与える影響を改めて分析した。
  • その結果、ほとんどの場合、Cas12aヌクレアーゼと同系のcrRNAスキャフォールドが最も高い切断効率を示すことを見出したが、LbCas12a/crRNA-6とPrCas12a/crRNA-7のように合成crRNAも効率よくindelsを誘導することも見出した。
  • そこで、4-ntのループ領域の飽和突然変異に相当する256 crRNAスキャフォールドを評価した。はじめに、マウスNrl遺伝子座を標的とするPrCas12aとBsCas12aの切断活性をcrRNAスキャフォールド1とその変異体との間で比較し、ループ領域がUAUGの4n96スキャフォールドが、切断効率を向上させることを見出した (原論文引用下図参照)。スクリーンショット 2019-02-06 13.24.52
  • 4n96は、GFPレポータや他のマウスとヒトの内在遺伝子座に対しても切断効率向上をもたらし、また、ArCas12a、HkCas12aおよびPxCas12aの切断活性も向上させることを見出した。この現象は、Cas12a-RNA-DNAの複合体構造から明らかにされていた、crRNAスキャフォールドのループ領域とCas12aの残基との間に存在する相互作用と、整合する。
Cas12関連論文とcrisp_bio記事
  • (*) "A Survey of Genome Editing Activity for 16 Cpf1 orthologs" Zetsche B, Strecker J, Abudayyeh OO, Gootenberg JS, Scott DA, Zhang F. bioRxiv. 2017-05-04.
  • 2019-01-23 Cas9とCas12aに次ぐヒトゲノム編集プラットフォームCas12b広がる (crisp_bio注: Feng Zhang研究グループの報告)
  • 2019-02-12 CRISPR-Cas12aの拡張、東西で続く