[出典] NEWS "Chinese effort to clone gene-edited monkeys kicks off" Crranoski D. Nature. 2019-01-29.
  • Narure誌が、中国の研究者が中国初の英文国際学術誌'National Science Reviewに発表した"ヒト疾患マカクザルモデル"開発論文*を「中国の遺伝子編集サルのクローニングプロジェクト始まる」と、NEWSで取り上げた (crisp_bio 2019-01-25 ヒト疾患マカクザルモデルの作出と利用、加速へ)。
  • 1億米ドルを超える投資のもと設立された上海の神経科学研究所 (Institute of Neuroscience, ION)の研究グループは、睡眠・覚醒サイクルの鍵を握る遺伝子をCRISPR/Cas9によりノックアウトしたマカクサル個体を作出し、その成体からクローン5匹を作出し、遺伝的に同質な霊長類集団構築への道を開いた。また、ヒトに見られる自閉症の症状を呈するモデルサルも作出した。
  • IONのMu-ming Poo (蒲慕明)所長は、霊長類はヒト疾患モデルとして優れており、特に、高度な認知機能の研究やヒト脳疾患の研究に最適であり、遺伝的に同質な霊長類モデルは創薬に必須の動物実験の効率化と精密化を実現するとした。
  • Poo所長は、アルツハイマー病やパーキンソン病、アンジェルマン症候群、および遺伝性眼疾患の霊長類モデルを作出し、疾患の進行状況をモニタ可能にすることを目指している。また、研究所の所員の半数を中国以外からリクルートし、国際的な協力のもとに、これからの5年間で代謝不全および免疫不全霊長類モデルを作出・解析することを計画している。
  • 霊長類クローニングはまだまだ時間と経費を要する。IONの今回の研究では、325のクローン胚から成体クローン5頭を得たが、Poo所長によるとその経費は50万米ドルを要したとのことである。なお、霊長類ヒト疾患モデルは中国の2011年からの5ヵ年計画に位置付けられていたところ、科学省は2014年には390万米ドルの予算を投じていた。
  • 一方で、 バージニア州ノーフォークを本拠とする動物の倫理的扱いを求める人々の会 (People for the Ethical Treatment of Animals, PETA)はIONの実験を“a monstrous practice that causes [the monkeys] to suffer”と評した。