1. [NEWS & VIEWS] Cas9は標的をジャンプ、ホップに加えてスライドしながら探索する
[出典] "Cas9 slide‐and‐seek for phage defense and genome engineering" Santiago‐Frangos A, Wiegand T, Wiedenheft B. EMBO J. 2019-02-07.
  • GlobyteらはsmFRET技術によってCas9がPAM間をDNA鎖に沿ってスライディングし (*)、また、PAMが離れているほど隣のPAMへスライディングで到達する確率が指数関数的に減少することを見出した。また、PAM密度が高い領域ほどCas9-gRNA複合体のDNAへの滞留時間が~0.6 sから~2.5 sへと伸びることも見出した (Figure 1 Cas search mechanisms ad PAM distribution参照)。
  • (*) CRISPRメモ_2018/12/26 - 2[第8項] CRISPR/Cas9はDNA鎖上の一次元拡散でPAMを探索する
2. 病原体特異的抗原を発現するようにCRISPR/Cas9で改変したB細胞による感染防止
[出典] "B cells engineered to express pathogen-specific antibodies using CRISPR/Cas9 protect against infection" Moffett HF, Harms CK, Fitzpatrick KS, Tooley MR, Boonyaratankornkit J, Taylor JT. bioRxiv. 2019-02-06.
  • 接種後、RSウイルス、HIVおよびEBVなどの感染からヒトを一生保護する効果的ワクチンは未だ実現していない。FHCRCとUniversity of Washingtonの研究グループは今回、ヒトまたはマウスの初代B細胞においてCRISPR技術により、内在性抗体を、RSV、HIV、インフルエンザウイルスあるいはEBVに対する抗体へと置換する手法を開発した。
  • 人工抗体は、内在調節エレメントの制御下で、初代B細胞の59%にまで発現した。また、RSVに対する人工抗体を発現するマウスB細胞を免疫不全モデルマウスに1回導入するだけで、RSV感染を強力に防止した。
  • 本手法は、ワクチンによっては有効な抗体を誘導できない病原体や、抗体の応答を維持できない病原体に対する感染予防手法として有望である。
  • [参考] B細胞編集関連crisp_bio記事: 2019-01-17 CRISPR-Cas9で、B細胞の抗原特異性をリプログラム - 抗HIVキメラ抗体作出
3. フックス角膜内皮変性症と相関するTCF4トリプレット・リピート (CTG18.1)のCRISPR/Cas9によるエンリッチメントとロングリード・シーケンシング解析
[出典] "CRISPR/Cas9-targeted enrichment and long-read sequencing of the Fuchs endothelial corneal dystrophy–associated TCF4 triplet repeat" Hafford-Tear NJ, Tsai YC, Sadan AN, Sanchez-Pintado B, Zarouchlioti C, Maher GJ, Liskova P, Tuft SJ, Hardcastle AJ, Clark TA, Davidson AE. Genet Med. 2019-02-08
  • UCL Institute of Ophthalmology、Pacific Biosciences、University of Oxfordなどの研究グループの成果
  • 解析対象配列の増幅に替えてCRISPR/Cas9システムによるエンリッチメントを経て、PacBioの一分子リアルタイム (SMRT)ロングリード・シーケンシングによる当該疾病 (Fuchs endothelial corneal dystrophy, FECD)に相関するCTG18.1を解析 (下図のワークフローは、原論文Figure 1-aから引用)Schematic of CRISPR-guided single-molecule2019-02-13 22.45.56
4. [レビュー] 標的品種改良の植物ゲノム工学
[出典] REVIEW "Plant Genome Engineering for Targeted Improvement of Crop Traits" 
Sedeek KME, Mahas A, Mahfouz M. Front Plant Sci. 2019-02-12.
  • 主としてCRISPR/Casによる作物の収量、生物・非生物ストレス耐性および栄養価の向上実験研究をレビュー (下図左右は、レビューTable1とFigure 4から引用した実施例と応用分野)
Table 1 2019-02-13 Figure 4 2019-02-13
  • 関連概論:SPOTLIGHT "A CRISPR Way for Fast-Forward Crop Domestication" Khan MZ, Zaidi SS, Amin I, Mansoor S. Trends Plant Sci. 2019-02-06.
5. トマト果実の形成と成熟における転写因子を、CRISPR/Cas9による変異誘発実験で再評価
[出典] "Re-evaluation of transcription factor function in tomato fruit development and ripening with CRISPR/Cas9-mutagenesis" Wang R, Tavano ECDR, Lammers M, Martinelli AP, Angenent GC, de Maagd RA. Sci Rep. 2019-02-08.
  • これまで自然突然変異体やRNAiによる遺伝子ノックダウン系統で解析されてきた果実形成・成熟にかかわる転写因子の機能を、CRISPR/Cas9ノックアウト実験により再評価した。具体的には、AP2aNAC-NOR、および、FUL1そしてまたはFUL2をノックアウトし、 AP2aについては従来同定された機能を同定し、従来法でのnor変異がNAC-NORのドミナントネガティブ・アレルに相当することを明らかにし、FUL1FUL2それぞれのノックアウトから両者の機能を明確にしFUL2が果実形成初期に果たす作用同定を実現した。
6. [プロトコル] CRISPR-Cas9による病原真菌カンジダ・アルビカンスの機能ゲノミクス
[出典] PROTOCOL  "Design, execution, and analysis of CRISPR–Cas9-based deletions and genetic interaction networks in the fungal pathogen Candida albicans" Halder V, Porter CBM , Chavez  A, Shapiro RS. Nat Protoc. 2019-02-08.
  • カンジダ菌は、不安定なプラスミド、特異的なコドン使用頻度、非効率な相同組み換えなどのため効率的な遺伝子操作が困難であったところ、CRISPR-Cas9技術によって機能ゲノミクスの道が開けた。著者らは今回、CRISPR-Cas9に基づく遺伝子ドライブを利用して、カンジダ・アルビカンスの単一遺伝子欠損および二十遺伝子欠損株を作出・解析するプロトコルを詳述。
プロトコル関連論文
"A CRISPR–Cas9-based gene drive platform for genetic interaction analysis in Candida albicans" Shapiro RS, Chavez A  [..] Church GM, Collins JJ. Nat Microbial. 2018-Jan. Online 2017-10-23.