1. CRISPR/Cas9 PINK1ノックアウトによりパーキンソン病モデルアカゲザルを作出
[出典] LETTER TO THE EDITOR "CRISPR/Cas9-mediated PINK1 deletion leads to neurodegeneration in rhesus monkeys" Yang W, Liu Y [..] Qin C, Li XJ. Cell Res. 2019-02-15.
  • PINK1変異は常染色体劣性早期発症パーキンソン病 (PD)の病因であるが、PINK1ノックアウト (KO)マウスとブタモデルは、PD患者の病態を再現できない。また、マウス脳におけるPink1の発現が極めて低レベルである。Jinan University, 中国科学院ならびに Emory University School of Medicineの研究グループは今回、よりヒトに近く、より大型の、アカゲザルPDモデルを作出した。
  • アカゲザル胚1細胞期にPINK1のエクソン2とエクソン4を標的とするCRISPR/Cas9-PINK1 gRNAsを送達した87胚を28頭の代理母に移植し、新生仔11頭を得、8頭が変異型PINK1を帯びていた。その中で、3頭が3年間生存した。変異アカゲザルの遺伝子解析、免疫組織化学的解析、MRI解析と行動観察などを行い遺伝型と表現型の相関を分析した。
  • CRISPR/Cas9によりPINK1に誘導された変異は多様であり、PD患者に見られる点変異と異なるエクソン2と4の間の大規模欠損が見られた。この大規模欠損はヒトでは致死であることからPD患者には見られないことを示唆した。
  • 関連crisp_bio記事:2019-02-09 中国の霊長類ヒト疾患モデル開発計画でクローニング実現
2. NHEJ過程に依存するCIRPR/Casノックイン技術であるHITI法により外来遺伝子をフェレットのROSA26遺伝子座に高効率でノックイン
[出典] "Highly Efficient Transgenesis in Ferrets Using CRISPR/Cas9-Mediated Homology-Independent Insertion at the ROSA26 Locus" You M [..] Liu X, Yan Z, Engelhardt JF. Sci Rep. 2019-02-13
  • Ningxia UniversityとUniversity of Iowaの研究グループは今回、相同組み換えに依存しないHITI法を利用し、ヒトの肺と脳の疾患モデルとしてマウスより優れているフェレットへのセーフハーバーへのコンストラクト挿入を22%の効率で実現した。
  • 二種類の蛍光タンパク質に加えて、任意の長さの外来遺伝子を二次的に挿入を可能とするインテグラーゼのBxb1とPhiC31に対応するattPを組み込んだ挿入カセットの構造について、原論文 Figure 1引用下図参照Ferret
3. X連鎖性副腎白質ジストロフィー (X-ALD)の新奇ミクログリアモデルを作出
[出典] "CRISPR/Cas9-mediated knockout of Abcd1 and Abcd2 genes in BV-2 cells: Novel microglial models for X-linked Adrenoleukodystrophy" Raas Q [..] Savary S. Biochim Biophys Acta Mol Cell Biol Lipids. 2019-02-12.
4. CRISPR/Cas9によりFahとRag2の両遺伝子ノックアウトしたブタ細胞株を作出
[出典] "Efficient Generation of an Fah/Rag2 Dual-Gene Knockout Porcine Cell Line Using CRISPR/Cas9 and Adenovirus" Gao M [..] Bao J, Hong B. DNA and Cell Biology. 2019-02-14.
  • 四川大学の研究チームが、マウスよりも大量のヒト肝細胞の作出を目指して、Fah/Rag2をノックアウトした腸骨動脈内皮細胞から、Fah/Rag2ノックアウトブタを作出
5. CRISPR/Cas9をアデノウイルスで送達し、血友病B (HB)の病因変異を長期にわたり修復
[出典] "Long-term correction of hemophilia B using adenoviral delivery of CRISPR/Cas9" Stephens CJ, Lauron EJ, Kashentseva E, Lu ZH, Yokoyama WM, Curiel DT. J Control Release. 2019-02-13.
  • 若年者におけるHBの遺伝子治療は、細胞回転が早いことからベクターの希釈を介して効果が失われることから、正常な遺伝子をゲノムに挿入する遺伝子編集が望まれる。
  • Washington University School of Medicineの研究チームは今回、若年HBモデルマウスに、Ad5-Cas9-gRNA-CRISPRベクターとAd5-mFIX修復テンプレートのベクターを送達することで、正常なFIXの発現と表現型を長期間維持可能なことを示した。
  • FIXテンプレートのオンターゲットへのエラーフリーなノックイン効率は100%であるが、一部ノックイン標的部位に変異が見られ、また、アデノウイルスベクターとCas9ヌクレアーゼに対する獲得免疫応答が見られた。
6. NHEJパスウエイをDNA-PKcs阻害剤NU7026によって抑制すると、CRISPR/Cas9で切断されたHBV cccDNAの分解が抑止される
[出典] "Suppressing the NHEJ pathway by DNA-PKcs inhibitor NU7026 prevents degradation of HBV cccDNA cleaved by CRISPR/Cas9" Kostyushev D. Sci Rep. 2019-02-12.
  • Central Research Institute of Epidemiology, Viral Hepatitis (ロシア)の研究グループは今回、CRISPR/Cas9の抗-HBV活性とcccDNA切断の結果に、NHEJとHRの亢進または阻害が与える影響を解析し、先行研究からの「CRISPR/Cas9システムとNHEJを阻害する低分子の組み合わせたがcccDNAの分解を亢進する」という報告に反する結果を得て、NU7026を介したNEHJパスウエイの抑制により他のDSB修復パスウエイが活性化し、多くの欠失が発生したcccDNAがプールされることを示唆。