[出典] "Multi-omic measurements of heterogeneity in HeLa cells across laboratories" Liu Y, Mi Y, Mueller T, Kreibich S [..] Aebersold R. Nat Biotechnol. 2019-02-18.
[crisp_bio注] bioRxiv 2018-04-30に準拠した記事を「2018-06-04 HeLaの亡霊:流通している培養細胞株におけるコンタミネーションと変異」の第2項にて投稿)

背景
  • 抗体や培養細胞など生体材料の標準化は長年の課題である (文末の'関連crisp_bio記事'参照)。代表的なヒト培養細胞であるHeLa細胞はこれまでに10万件を超える論文で直接利用されるか参照されてきたが、HeLa細胞はゲノムが不安定であり、継代あるいは研究室間の交換を経てゲノム変異を蓄積することが知られている。
  • 現在、HeLa細胞株の中で、'オリジナル'のHeLa CCL2、HeLa S3 (CCL2.2) 、および、HeLa Kyotoが広く使われている。HeLa CCL2(*)とHeLa Kyoto (**)のゲノムは2013年に解読され、両者の間で配列、コピー数および染色体が異なることが明らかにされ、また、HeLa KyotoにおけるmRNA発現が研究室間で異なることも報告されてきたが、ゲノムの不均一性がプロテオームや細胞表現型に与える影響や、継代培養にともなう不均一化については、ほとんど、明らかにされてこなかった。
成果
  • スイス、ドイツ、イタリア、米国、中国の国際共同研究グループは今回、13研究室からの14種類のHeLa細胞株を共通の条件で培養し、コピー数、mRNAs、タンパク質およびタンパク質代謝回転を分析し、HeLa細胞株間に著しい不均一性が存在することを見出した。特に、CCL2とKyoto株の間の差異が最も顕著であった。 細胞株間の多様性に加えて、特定の細胞株について50回継代培養において徐々に形質が多様化することも見出した。
  • 遺伝的多様化は複雑であり、トランスクリプトーム、プロテオーム、およびタンパク質代謝回転プロファイルに、非線形的な影響を与える。
  • 63種類のタンパク質に基づくHeLa細胞株のプロテオタイプと、サルモネラ菌に対する応答が相関する。
  • ヒト培養細胞を利用した実験結果の生物学的解釈をするにあたって、細胞自身に内在する多様性がもたらす影響を評価する必要がある。
関連crisp_bio記事など
  • 2018-08-13 癌細胞株の遺伝変異も薬剤耐性も、研究室内・間で、不均一化する
  • 2018-06-04 HeLaの亡霊:流通している培養細胞株におけるコンタミネーションと変異の問題
  • 2017-04-29 抗体は、最も広く使われている試薬の一つであるが、最も頭痛の種になる試薬の一つでもある
  • (*) "The haplotype-resolved genome and epigenome of the aneuploid HeLa cancer cell line" Adey A [..] Shendure J. Nature. 2013-08-07.
  • (**) ”The genomic and transcriptomic landscape of a HeLa cell line” Landry J [..] Steinmetz LM. G3 (Bethesda). 2013-03-11;NEWS "Most popular human cell in science gets sequenced - The HeLa cell genome is riddled with errors, raising questions about its continued use" Callaway E. Nature. 2013-03-15.
  • Nature Biotechnology からのツイート (2019-02-19)