1. [ニュース] 早い、上手い、安い:CRISPR診断機器への期待
[出典] NEWS "Faster, better, cheaper: the rise of CRISPR in disease detection" Maxmen. A. Nature. 2019-02-19.
  • 病原性ウイルスの検出・判定システムは、これまで専門技術者、精巧な装置、それに電力を必要とし、ラッサ熱が発生するような最も必要とされる地域に完備されることは稀であったが、この課題をCRISPR-Casシステムを活用した高感度な診断技術が解決しようとしている。
  • F. Zhanらが開発したCas13に基づくSHERLOCKは、ナイジェリアにおいて、従来のPCRに基づく判定システムが要していた経費と時間をいずれも半減し、電力不足にも対応可能なことを実証している。J. Doudnaらは、アフリカにおける子宮頸癌と肛門癌の抑止を目指して、Cas12aに基づくHPV判定装置の実用化をMammoth Biosciencesで進めており、また、同スタートアップ企業は検出装置のDETECTRへのCas14とCasXの組み込みも進めている。
  • ナイジェリアのRedeemer’s Universityでラッサ熱診断システムを開発している Jessica Uwanibeは、CRISPR技術による診断システムが、最も必要としている地域で導入可能価格におさまるライセンシングを期待している。
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2. CRISPR/Cas9を、NF-κBが活性化した癌細胞において選択的発現させることで、細胞死へ誘導する癌遺伝子治療
[出典] "Cancer gene therapy by NF-κB-activated cancer cell-specific expression of CRISPR/Cas9 targeting to telomere" Wei Dai, Jian Wu, Danyang Wang, Jinke Wang. bioRxiv. 2019-02-18.
  • NF-κBの活性を調節可能とする合成microRNAシステムを開発していた ("Control the intracellular NF-κB activity by a sensor consisting of miRNA and decoy" Int J Biochem Cell Biol, 2018) 東南大学の研究チームは、今回、NF-κBが結合するDNA断片 (Decoy)と最小限プロモーター (Minimal Promotor)を融合したDMPとレポータのZsGreen遺伝子からなるNageベクターを設計した。
  • このNageベクターに、テロメアを標的とするsgRNA (TsgRNA)とCas9遺伝子を加えたコンストラクト"U6P-TsgRNA-DMP-Cas9遺伝子"を導入し、癌細胞株を選択的に細胞死を誘導可能なことを実証した。続いて、腫瘍を異種移植したマウスモデルにて、このコンストラクトをパッケージしたAAVを尾静脈注射することで、その増殖を抑止可能なことを示し、この手法をNF-κB-activated gene expressionにちなんでNage遺伝子治療と命名した。
3. CRISPR-Cas9ゲノム編集によるカルモジュリン1 (Calm1)の3' UTRアイソフォームの選択的欠損を介して、その機能解析を実現
[出典] "Precise removal of Calm1 long 3′ UTR isoform by CRISPR-Cas9 genome editing impairs dorsal root ganglion development in mice" Gruner HN, Bae B, Lynch M, Oliver D, So K, Mastick GS, Yan W,  Miura P. bioRxiv. 2019-02-18.
  • 3'UTRアイソフォームのin vivoでの機能はこれまでほとんど明らかにされていない。Calm1のmRNAには、ポリアデニル化の過程で長短二種類の3'UTRアイソフォーム(Calm1-LとCalm1-S)が生じる。
  • 研究グループはマウスにおいて、Calm1-S が広範な組織で発現するのに対してCalm1-Lの発現がほぼ神経組織に限られることを見出し、Calm1-L特異的に欠損させた系統群を作出し、その中で、Calm1Δ3′ UTR (polyAサイトから遠位で163 bp欠損)が、後根神経節 (dorsal root ganglion, DRG)欠損を誘導することを見出した。Calm1Δ3′ UTR UTRの外植片培養では、軸索束形成が亢進した。
4. [プロトコル] CRISPR技術による網膜のin vivoゲノム編集を実現するAAVベクター
[出典] PROTOCOL "Use of AAV Vectors for CRISPR-Mediated In Vivo Genome Editing in the Retina" Yu W, Wu Z. In: Castle M. (eds) Adeno-Associated Virus Vectors. Methods in Molecular Biology 2019-02-20.

5. CRISPR/Cas9ゲノム編集により、SUMOファミリの中で、OsOTS1がイネの 耐塩性を担っていることを特定
[出典] "Targeted mutagenesis of the SUMO protease, Overly Tolerant to Salt1 in rice through CRISPR/Cas9-mediated genome editing reveals a major role of this SUMO protease in salt tolerance" Sadanandom A, Srivastava AK, Zhang C.bioRxiv. 2019-02-20.
  • RNAi実験では困難であった絞り込み実現
6. [レビュー] CRISPR/Cas9によるイネ穀粒の品質改良
[出典] "Applications of the CRISPR/Cas9 System for Rice Grain Quality Improvement: Perspectives and Opportunities" Fiaz S [..] Ali F. Int J Mol Sci. 2019-02-19.
  • CRISPR/Cas9技術のこれまでのイネ穀粒品質改良への応用例を概観し、これからのCRISPR/Cas9技術による穀粒品質向上に資する分子機構の解明を展望する (下図は、レビューFigure 3から引用した当該分野の俯瞰図) 2019-02-23 15.42.45
7. イネにおけるCRISPR/Cas9誘導indelsのハイスループット同定法
[出典] "Development of methods for effective identification of CRISPR/Cas9-induced indels in rice" Biswas S, Li R, Yuan Z, Zhang D, Zhao X, Shi J. Plant Cell Rep. 2019-02-19.
  • Indelsを± 1 bpの感度まで検出可能とする2手法を開発:一対のプライマで標的を増幅するPCRからゲル電気泳動による判定と、標識したプライマを含む3種類のプライマを利用して標的を増幅するアンプリコン・ラベリングからキャピラリー電気変動による判定
8. CRISPR-Cas9塩基編集 (BE)で、ポティウイルス耐性をもたらすeIF4E多型を模倣する
[出典] "Mimicking natural polymorphism in eIF4E by CRISPR-Cas9 base editing is associated with resistance to potyviruses" Bastet A, Zafirov D, Giovinazzo N, Guyon-Debast A, Nogué F, Robaglia C, Gallois J. Plant Biotechnol J. 2019-02-19
  • 植物RNAウイルスのポティウイルスに耐性をもたらすことが知られている翻訳開始因子eIF4Eの天然変異を、それが存在しない宿主植物に有用形質を損なうことなく導入することに成功
  • ポティウイルスの一種である葉脈黄化ウイルス (Clover yellow vein virus, ClYVV)に対するシロイヌナズナの感受性因子であるeIF4E遺伝子に、部位特異的変異導入キットを利用してPisum sativum(エンドウ) eIF4E遺伝子の耐性アレル (W69L, T80D S81D, S84A, G114RおよびN176K)をそれぞれ導入し、いずれも、シロイヌナズナの成長を阻害することなくClYVVの蓄積を防止することを確認;次いで、CRISR-nCas9シチジン・デアミナーザの塩基編集 (BE)を介して、N176K変異をシロイヌナズナeIF4Eに導入し、ポティウイルスに対する感受性因子を耐性因子に変換可能なことを実証。