1. DNAをストレッチするとCas9オフターゲット編集が亢進する
[出典] "DNA stretching induces Cas9 off-target activity" Newton MD [..] Cuomo ME, Rueda DS. Nat Struct Mol Biol. 2019-02-25.
  • Imperial College London,  Astra Zenecaなどの英国の研究グループ*は今回、SpyCas9複合体の5'末端をCys3色素で標識し、光ピンセット (optical tweezer)で引き伸ばしたλ-DNAに対するSpyCas9の結合・切断を共焦点顕微鏡により一分子分解能でリアルタイム観察した(* Opteicl Tweezerで知られる本社オランダのLUMICKS BV社も共著者)。
  • SpyCas9複合体は、引っ張り応力が低い状態のλ-DNAには、オンターゲットに特異的に結合し、切断する。
  • DNAへの引っ張り応力を高めていくと、DNAの機械的ねじれを介して、crRNA配列に依存する形で、SpyCas9は多数のオフターゲットサイトに繰り返し結合するようになった。これらのオフターゲットサイトの中で10塩基のミスマッチを含む3サイトについて、一分子FRET (smFRET)と切断アッセイを加え、DNAバブル形成を介しSpyCas9が結合と切断を繰り返すことを明らかにした。
  • 研究グループは、転写、複製、DNA修復またはDNAスーパーコイリングといった内在細胞過程で発生する二本鎖DNAの不安定化により、オフターゲットサイトにCas9が結合・切断可能となることを示唆。
2. SaCas9 mRNAをレンチウイルス様バイオ・ナノ粒子で送達することでmRNAによる一時的かつ効率的ゲノム編集を実現
[出典] "Delivering SaCas9 mRNA by lentivirus-like bionanoparticles for transient expression and efficient genome editing" Lu B, Javidi-Parsijani P, Makani V, Mehraein-Ghomi F [..] Atala A. Nucleic Acids Res. 2019-02-13.
  • SaCas9 mRNAのMS2アプタマRNAを融合し、レンチウイルスタンパク質にMS2コートタンパク質を融合することで、SaCas9 mRNAを100コピーまでパッケージ可能なレンチウイルス様バイオ・ナノ粒子 (lentivirus-like bionanoparticle, LVLP)を開発した (原論文 Figure 1引用下図参照)。SaCas9
  • SaCas9 LVLPsはgRNAの存在下で、SaCas9の一時的発現と効率的なゲノム編集を実現した(HEK293細胞において、一細胞あたり1.2–2.5 pg p24 LVLPで85%を超えるindel率を達成)
  • また、SaCas9を発現するAAVまたはレンチウイルスによる送達に比べて、オフターゲット作用が顕著に抑制されることを確認した。
3. Base editor (BE)またはHDRを介した一塩基置換を支援するWebサービスCUNE
[出典] "Unlocking HDR-mediated nucleotide editing by identifying high-efficiency target sites using machine learning" O’Brien AR, Wilson LOW, Burgio G,  Bauer DC. Sci Rep. 2019-02-26.
  • 単一塩基の編集は遺伝疾患の解明と治療に極めて有用な技術である。近年CRISPR技術に基づいた一塩基編集法'base editing'(BE)が開発されたが、塩基置換のパターンが限られ、また、編集可能な領域がCRISPR-Casの標的サイト近傍の狭いウインドウ幅に限られている。一方で、より柔軟な塩基置換を可能とする相同組み換え修復 (HDR)は、効率が極めて低い。
  • Australian national UniversityとCSIROのオーストラリアの研究チームは今回、マウスを対象とするCas9を介したHDR実験を行いそのデータを基にした機械学習 (ランダムフォレスト法)により、修復用テンプレートとするssODNの配列組成が、HDRの効率に決定的な影響を与えることを確認した。また、ssODN全体の組成比とは別に、ssODNの3'末端領域がHDR効率に強く影響することを同定した。なお、Cas9の切断サイトと点変異誘導サイトの間の距離はHDR効率と相関しなかった。
  • 研究チームはCas9による二本鎖切断 (DSB)頻度に影響を及ぼすgRNAと、HDRの効率に影響を及ぼす3' ssODNを組み合わせたモデルを開発し、BEによる塩基置換またはHDRを介した塩基置換の最適化を支援する CUNE (Computational Universal Nucleotide Editor)を確立し、Webサイト  (https://gt-scan.csiro.au/cune)から公開した。CUBEは、関心のある遺伝子座における標的塩基候補を提示するとともに、最適なBEとHDR (ssODN)を提示する (下図参照:原論文Supplementary Figure 1に準拠した画面キャプチャ)。CUNE