4. ヒト初代B細胞におけるB細胞受容体の編集
[出典] "CRISPR-Mediated Editing of the B Cell Receptor in Primary Human B Cells" Greiner V, Puerto RB, Liu S, Herbel C, Carmona EM, Goldberg MS.iScience. 2019-02-22.
  • ワクチン療法はこれまで病原体由来の抗原が基本であり、個人によって量や機能が大きく変動する抗体は注目されてこなかった。一方で、B細胞受容体 (B cell receptor, BCR)の重鎖と軽鎖の遺伝子座の可変領域を、有効なモノクローナル抗体の一定の組み換え配列で置換することができれば、養子細胞移植による療法が実現する。
  •  Dana-Farber Cancer Instituteを中心とする米国ボストンの研究グループは今回、CRISPR/Cas9技術によりヒト初代B細胞のBCRの相同組み換え (HR)を実現した。
  • CRISPR/Cas9とsgRNAのRNPをエレクトロポレーションすることで、モデル遺伝子座のCXCR4における編集を、T7E1アッセイ、フローサイトメトリーおよびTIDE解析により、標的遺伝子座の編集を確認した。また、HRによる挿入をシーケンシング、PCRおよび制限酵素消化により確認した。
  • 最適化を経てBCRの可変領域でのHRを介した内在BCRプロモータによる外来遺伝子発現を実現した。
5. CRISPR/Cas9 KOにより、抗微生物ペプチド (antimicrobial peptides, AMPs)のin vivo機能を探った
[出典] "Synergy and remarkable specificity of antimicrobial peptides in vivo using a systematic knockout approach" Hanson MA, Dostálová A, Ceroni C, Poidevin M, Kondo S, Lemaitre B. eLife. 2019-02-26.
  • AMPsは小型、主として陽イオン性、通常両親媒性のペプチドであり植物と動物の自然免疫に貢献する宿主ゲノムにコードされた'抗生物質'である。In vitroでのこれまでの研究から、生理濃度でバクテリアと菌類を殺傷することが明らかにされてきたが、AMPsのin vivoでの機能同定はほとんど為されていない。
  • Global Health Institute, Université Paris-Saclayおよび国立遺伝学研究所の仏日研究グループは今回、ショウジョウバエin vivoでCRISPR/Cas9により14種類のAMPs (4 Attacins, 4 Cecropins, 2 Diptericins, Drosocin, Drosomycin, MetchnikowinおよびDefensin)を単独あるいは種々の組み合わせでノックアウトし、また、全てのAPMsをノックアウトし、その抗菌性を検証した。
  • ショウジョウバエのAMPsは主としてグラム陰性菌と菌類に対して抗菌性を発揮し、相加的または相乗的に作用する。AMPsはまた特定のバクテリアや菌類に対して選択的な抗菌性を示す。
6. 複数の環境条件での遺伝子相互作用同定を容易にするCRISPRiSeq法を構築
[出典] "Improved discovery of genetic interactions using CRISPRiSeq across multiple environments" Jaffe M, Dziulko A, Smith JD, St.Onge RP, Levy SF,  Sherlock G. Genome Res. 2019-02-19.
  • モデル生物の酵母における大規模な遺伝子相互作用 (genetic interaction, GI)の同定実験のほとんどが、コストと時間の問題から単一の環境での実験に限られていた。Stanford University School of Medicineをはじめとるす米国研究グループは今回、CRISPRiとシーケンシング解析を組み合わせてハイスループットなGI解析を可能とするCRISPRiSeq法を構築し、さまざまな環境にわたるGI解析を実現した(原論文 Figure 1引用下図左参照)。CRSIPRiSeqでは、プール型CRISPRiライブラリー (同図gRNA1)に、クエリーに相当するコンストラクト (同図gRNA2)を形質転換し、二重CRISPRi株を生成する。
Rapid double CRISPRi 2019-02-28 12.48.24
  • 具体的には、5種類の環境条件における~7,700組のペアワイズ相互作用にわたる~17,000株のフィットネスを評価し、最適培養条件でみられるGIsの~3倍におよぶGIsを同定した。また、それぞれの環境条件に特有なGIsの存在が、遺伝子の機能分類に活用可能なことを示した (原論文Figure 3引用上図右参照)。