[出典] "One-step generation of modular CAR-T cells with AAV–Cpf1" Dai X, Park JJ, Du Y, Kim HR, Wang G, Errami Y, Chen S. Nat Methods. 2019-02-25.

背景
  • キメラ抗原受容体 (CAR)を発現するように遺伝子改変したT細胞 (CAR-T細胞)による療法はすでに、ノバルティス社のCTL019 (キリアム/Kymriah: tisagenlecleucel) とカイトファーマ社(ギリアド・サイエンシズ社)のYescarta (axicabtagene ciloleucel)  がFDAに承認されている(*1)。
  • CARを誘導する遺伝子のT細胞へのターゲッティングには主として、ゲノムにランダムに挿入されるレンチウイルスまたはγ-レトロウイルスのベクターが利用されているが、それには発癌性や転写サイレンシングなどのリスクを伴うことが指摘されている。
  • 近年、ウイルスベクター送達に替えてCRISPR-Cas9ゲノム編集技術によるCAR-T作出が試みられている (*2)。Cas9によりCAR-T細胞における多重遺伝子編集も可能ではあるが、Cas9タンパク質、複数サイトを標的とするin vitro合成した多重のgRNAs、および、一連の相同組み換え修復 (HDR)用テンプレートをエレクトロポレーションする必要がある、
Cpf1によるCAR遺伝子ターゲッティング
  • CRISPR-Casエフェクターの中でCpf1 (Cas12a)はCas9に無い特長を備えている。TracrRNA (ひいてはsgRNA)を必要とせずcrRNA単独で機能し、ヒト細胞における標的特異性がより高く、二本鎖DNA切断部位ヌクレアーゼによる粘着末端を残しNHEJ修復の頻度が抑制し相対的にHDRの頻度を高める傾向を示す。
  • Yale Universityの研究チームは今回、Cpf1に基づいて、ヒト初代T細胞における多重遺伝子座を精密にターゲッティング可能とするプラットフォームを開発した。
  • このプラットフォームは、Lachnospiraceaeバクテリア由来のCpf1 (LbCpf1)のmRNAのエレクトロポレーションとcrRNAとHDRテンプレートのAAV6による送達で構成されており、論文中ではAAV-Cpf1と表記されている。研究チームは AAV-Cpf1に基いて、ヒト初代T細胞において、HDRを介したCARのノックイン (knock-in)と、免疫チェックポイント遺伝子のノックアウト (knockout)、KIKO、を実現し、得られた細胞をKIKO CAR-T細胞と称した。
AAV–Cpf1 KIKOシステム
  • AAV–Cpf1 KIKOシステムはモジュール型の柔軟なシステムであり、2種類のCARsの同一T細胞へのノックインを、Cas9に基づくターゲッティングよりも高い効率で実現する。
  • CD22特異的AAV-Cpf1 KIKO CAR T細胞は、サイトカイン産生と癌細胞の細胞死への誘導において、Cas9 CAR-T細胞と同等の活性を示す一方でT細胞疲弊のマーカの発現はCas9 CAR-T細胞より低レベルであった。
  • 多重なノックインとノックアウトを可能にするKIKOシステムは、レポータの作出や遺伝子回路の組み込みも可能し、また、T細胞以外の免疫細胞にも展開可能である。
参考記事
  • (*1) CRISPRメモ_2018/01/27 [第1項] レビュー:キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-Ts)療法と免疫チェックポイント阻害療法の併用による癌療法
  • (*2) CRISPRメモ_2018/03/09 [第3項] LTRにTRACを標的とするsgRNAを組み込むCRISPR/Cas9システムによる'universal'CAR-T細胞作製